美女と化け物
「あ、アンタ、頭おかしいんじゃないのか!?」
困惑を隠せない女性に対し、ルベラルバスは表情を変えずに言う。
「俺はお前を気に入った! だから結婚してぇ! 問題あるか?」
「問題大ありだ! あ、アタシは『科学』の素晴らしさを証明しなければならないんだ! アンタみたいな化け物相手になんてしていられるか!」
ハッキリと拒絶する彼女をしりめに、勝手に彼女の首元を見て言う。
「ほう。ラミュニ・シュテーラ二等兵ねぇ……名前も悪くねぇ……ますます気に入ったぜ!」
「勝手に見るな!」
そう言って彼を跳ね除けるラミュニを見て、無邪気な笑みを見せる。
そんな姿に、ラミュニはここが戦場であることを一瞬忘れ思わずこぼす。
「……アンタって……一体何者?」
そう問われ、ルベラルバスは真剣な……でもどこか孤独を宿した目で答える。
「俺は……ただの化け物さ」
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三ヶ月後。
ルベラルバスとラミュニは共に行動していた。
と言うのも、ルベラルバスはラミュニにべた褒れで彼女を逃がさず、ラミュニはラミュニで、彼と戦場に出れば高確率で生き延びれてかつ、『科学』の力を証明しやすいと考え直したからだ。
「で、アンタは今日はどうするんだ?」
「いい加減名前で呼んで欲しいもんなんだがな……まぁその内だな! 今日は……あー……なんか、フェイラス帝国? だったか? 内のグーガスラヒ領に行く」
その答えに、ラミュニは思わず声を荒らげる。
「はぁ!?」
「なに驚いてんだ? 俺は傭兵が専門だが……たまには用心棒もやるんだよ」
「いやいやいや、そうじゃない! グーガスラヒって言ったら、今、フェイラス帝国とバッチバチの所じゃないか! そんな所に行くなんて馬鹿なのか!?」
そう言われたルベラルバスは、豪快に笑うと
「気にすんな! お前は絶対死なせねぇからよ!!」
「そう言う問題じゃ……いや、もういい。アタシが馬鹿だった」
不毛だと思ったのだろう。ラミュニは諦め、大人しくルベラルバスに着いて行くことにした。