始まり
古くから存在した技術『魔術』に、対抗して新たな技術『科学』が台頭し始めた世界ユスティティア。
両者は主権を競い合い、世界は国々同士で争いを繰り返していた。
そんな世界に、一人の男がいた。
その名もルベラルバス・グレンベックズ。燃えるような赤い髪と瞳を持つ戦闘種族レッド。その唯一の生き残りである。
抜群の戦闘能力を持って産まれたこの男を、人々はあまりの強さから畏怖を込めてこう呼んだ。
"灼熱のルーベ"と。
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「うぉぉぉぉぉぉ!!」
「殺せぇぇぇぇ!!」
広がる平原、晴天の空に不釣り合いな武器と武器がぶつかり合う音。そして、転がる死体。
そんな中を、大きな双剣を構え、白い甲冑に赤いマントの男が縦横無尽に駆け回る。
「おいおい! ありゃ、"灼熱のルーベ"じゃねぇか!!」
そう呼ばれた"灼熱のルーベ"ことルベラルバス・グレンベックズは、どんどん敵をなぎ倒していく。
「あははは! おらおら! 死にさらせぇぇ!!」
その姿はまるで獣の如く。
「おい! "灼熱のルーベ"だ! 一旦引けぇ!」
敵軍の大将がそう叫ぶが、時すでに遅し。ルベラルバスが目前に迫ってきていた。
「お前が大将か? 悪いが、これも依頼なんでな? その首、貰い受けるぜ!!」
「ひぃぃ!!」
ルベラルバスの気迫に押され、大将は武器を構えながらも、足は震え、完全に逃げ腰だった。
その様子に、ルベラルバスは舌打ちをする。
「なんだその様はよ? それでもお前、大将か!!」
そう言って大将の前にあっという間に近づくと、その首を簡単に斬り落とした。それを見て、敵軍は戦意を喪失したらしく、降伏した。
ルベラルバスは、彼らに興味を無くしたらしい。双剣に付いた返り血を敵の大将の衣服で拭き取ると、その場をさっさと去っていく。……彼を引き止める者は誰もいなかった。
これは、孤高にして猛々しく生きる男が、英雄になるまでの物語。