暴走
「父上のお名前です! 母上が愛した! 今の父上は……昔とお姿も全てが違います!そんな父上に……母上は本当にお会いしたいと思うと思いますか!?」
ノオンの必死な言葉に、ゼレンの表情がどんどん崩れていく。
「う? うああああ!?」
ゼレンが頭を掻きむしり出した瞬間、彼の身体を黒い触手達が包み込み、『翼』の頭頂部に連れて行く。
「まさか! 暴走しているっぽいね!?」
ラファの言う通りのようで、『翼』からはどんどん黒い触手が溢れ、蠢く。
「このままでは、生命の理が破壊されるなんてレベルではないね! シャイン、フレナ! 私が反魔術を行うから、君達はまた時間を稼いでくれたまえ!」
ラファの言葉に、シャインとフレナが反応する。
「何をするのかわからんが……どう時間を稼げばいい!?」
「……ボク。けっこう、限界なんだけ、ど!?」
「とにかく、回避しながら攻撃を! シャイン、フレナ! 私が渡したアレを使いたまえ!!」
ラファに言われ、二人は渡された物を取り出す。それは、ショヨクの文字で書かれた一メートル程の布だった。
「それで擬似的だけれど、『奇跡使い』と同じように武器に魔術を投影出来るはずだよ! それで触手を攻撃するんだ!!」
「本当にできるんだろうな?」
「……信じるよ」
シャインは布を破って二分割にし、フレナはそのまま布を武器に巻き付けると、攻撃体勢に入る。そして、
「行くぞ!」
「……うん!」
二人は『翼』に向かって、走り出した。
「さて……私も頑張らせて頂こう! 反魔術……発動!!」
ラファはそう言うと、杖を回転させて周囲に魔術の術式を展開させる。
(さぁ、コレで……闇属性の魔術を相殺出来るはずだ!!)
展開させたまま、父の状況を飲み込めないのか、固まったままのノオンのそばに行き、
「ノオン! 君にも協力してもらうよ?」
「え……あ、はい……?」