念願と悲願
【おい、わかるのか?】
【……下手に。動かし、たら、危なく、ない?】
心配そうな二人を余所に、ラファはどんどん動かしていく。
「なぁに、この大魔術師に任せなさい! バッティに出来て、私に出来ない事などないのさ!」
そうしていると、下からエグザの大声が響いてきた。
「何ずるづもりが分がんねぇげど、早ぐじねぇど連合・冒険者討伐軍が来ぢまうぞ!?」
【やはり、来ていたのか!】
【……来てるってことは。魔獣達、を、なんとかする方法が、見つかった、のかな?】
「それを気にしている場合じゃないよ、二人とも! さぁ、そろそろ念願だ! 意識はしっかり、身体はリラックスだ! 正直に言おう、失敗したら私達は死ぬだろう。だけれども、このままだと目的も何も果たせない! 覚悟はいいね!?」
【ちっ、仕方ないか】
【……う。うん!】
そして、ラファが装置をいよいよ起動させると、彼らの身体が眩い光に包まれた。
「うぎゃあ! 何事だっぺ!?」
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一方。大部屋に監禁されているノオンは、一人途方に暮れたままだった。
(どうしよう……どうやったら父上を止められるんだろう?)
そうしていたら、扉が開いた。ゼレンとラフルだ。
「あの……その人は……?」
「気にしなくていいさ。それより、ノオン。今度こそ、母さんを生き返らせようね? ラフル、後は頼んだよ」
「はい。ゼレン様」
ラフルに後を託すと、ゼレンは部屋から出ていってしまった。残されたノオンはラフルの服装に気づく。
(あ、あれ? この人の格好、ラファさんに似てる? もしかしたら、ラファさん達の事を知っているかもしれない!)
「あの!」
「何かしら? 王女になれなかった禁忌の生贄様? あ、先に言っておきますわ。貴女のお連れ達とはもう二度と会うことはないでしょう。ふふふ」
「! それってどういう意味ですか!?」
ラフルのどこか異様な妖艶さにも負けず、ノオンが聞くと、
「さぁ? それより、貴女は御自分の事を気にされた方が良くってよ? これから貴女は二度目の死を迎えるのだから!!」
「……それ……は」
「さて、では参りましょうか? 全てはゼレン様の悲願のために!」