サンプル
その頃。三人は、サンプルとしてラフルから様々な実験を受けていた。
「ぐぅぅぅぅっ! かはっ……はぁはぁ……」
「うんうん、なるほどですわ。無理な分離は魂、肉体、ともに激痛を伴うと。ふふふ、お楽しみはまた後でですわ。簡単に死なせたら……ねぇ? ふふふ」
三人をわざと休ませるために、一旦実験を中止すると、ラフルは地下牢から去っていった。それを見届けると、ラファの状態のままだった三人は内側で話をする。
【……さて、どうするかい?】
【……こんなの。耐えられない、よ!】
【この状況、気に食わん!】
珍しく意見が一致した三人は、何か手はないかと思案する。
【確認だが、どう足掻いても交代は無理なんだな?】
【残念ながらね……。おそらくこの枷に、魔術が施されているのだろうね! これをなんとかしない限りはねぇ……】
【……それ。か、ラフル達が言っていた、みたいに、ボク、死んでもいい、よ?】
【【!!】】
フレナの言葉に、ラファとシャインが息を飲む。そうなのだ。この三人のうち、二人を犠牲にすれば……あるいはここから抜け出せるかもしれない。だが、それは。
【断る。任務も優先だが……アタシは殺し屋ではない。無闇に殺しはせん】
【私もお断りだね! この五年、ともに過ごした君たちを……なんて無理さ!】
そんな二人の言葉に、フレナは一瞬黙った後、
【……ごめん。でも、ボク。もう、こんなの、耐えられないんだ。それに、ユグルスのことも、気になる、し】
早くここから出たいと訴える彼に、本音を言えばラファもシャインも同感だった。だが、考えれば考えるほど、良い手が浮かばない。
【どうするかねぇ……。私達のことはおそらく監視しているだろうしね! どうしたものか……】
そう話していた時だった。地下牢に振動が走る。
「何事かな!?」
この地下牢は、そこまで深いところにあるわけではないらしい。振動が止まらず、むしろ大きくなってきた。
【本当に何事だ? まさか冒険者ギルドが? いや、ユスティティア連合国か? どちらにせよ、チャンスなのではないか?】
シャインの意見で、どこか緩む場所がないか、または、緩める手段がないかラファが探す。が、何も見つからない。
【……どうする。の? 早くしないと、また、アイツが戻って、来ちゃう!】
焦るフレナと無言で策を練るシャイン。そんな中、離れた位置から何かの音がし始めてくる。音はどんどんデカくなり、そして、どこかが崩れる音がした。
「何事だい!?」
困惑するラファ達の前に現れたのは。
「んん? 誰が捕まっでるっぺ! でぇじょうぶが!?」
マウンテン・エル・エグザだった。