それぞれの理由
【あれは、私がまだショヨクにいた頃の話さ。彼女、バッティは当時の私の副官でね? 二人で、ショヨク最大の魔術書庫の管理をしていたんだ。……けれど、ある日、彼女はその書庫から禁書を盗んでどこかへ逃げてしまってね? 上から、その禁書を取り戻すように命じられて、私はショヨクから出されてしまったのだよ。以来、彼女を探していたんだが……まさか、こんな再会になるとはねぇ】
簡単に話すと、ラファは一息吐き、静かに聞いていた二人に向かってこう言った。
【と言うわけで、私は実は禁書探しで君たちと出会ったと言うことだったのだけれど……この機会だ。どうしてあの場所に居たのか……今まで避けてきたこの話題に触れてみようじゃないか!】
【どんな機会だ。大体、そんな暇があるなら、この状況をなんとかしようと考えろ!】
そう切り捨てるシャインに、フレナが珍しく反論する。
【……だけど。シャイン、ボク達、確かに触れずに来た、よね? それが……こうなった原因、だったり、しない?】
【!!】
確かにそうなのだ。今までこの話題を避けてきたことで、情報共有がされていなかった結果が、この状況だと、そう思えて仕方なかった。
なぜなら、各々がなぜあの場所に居たのかさえ話していたら、もっと早くに気づけたかもしれないのだ。自分達の理由と呪いとフェイラスが繋がっていたのだと。
【……】
シャインが黙ったのをきっかけに、今度はフレナが話しはじめた。
【……ボク。は、単純。寝床とご飯を買うお金が欲しくて、用心棒みたいな、こと、してた。で、冒険者になって、初めて遺跡調査の依頼を受けて、あの場所に行った、よ?】
【思った以上にシンプルな理由だったね! で? シャインはどうなんだい?】
ラファに話を振られ、シャインは面倒くさそうな声で渋々話し出す。
【……アタシは、軍人だ。直属はマーテルだが、出向でユスティティア王国騎士団に居た。そして、新生フェイラスに不穏な動きがあると……。その報告で、隠密に調査を行った結果が、このザマだ】
三人の本来の旅の理由が判明したところで、三人は同時にため息を吐き出す。そして、
【理由はわかったね。他に隠し持っている情報はないかな? とくにシャインとかね!】
【……それは……】
シャインが話だそうとした時だった。誰かの気配を感じ、いったん話すのをやめる。
「……誰かな?」
緊張した面持ちで問いかけると、現れたのは……ゲヌビだった。