面白い
「……ユグ、ルス。くっ……うああああ!!」
重い身体を、大剣を地面に突き刺し支えにすることでなんとか身体を起こすと、フレナはシャインと入れ替わった。
「やってくれたな? 次はアタシが相手だ。ゲヌビ!」
そう言って拳銃を構えるシャインを見て、ゲヌビは目を丸くすると、
「おお! 姿が変わったっちゃ! お前、お前ら……本当に面白いっちゃ! どうなってるっちゃ?」
「きゃあ!?」
両手で掴んでいたユグルスを乱暴に投げ捨てると、ゲヌビは今度は風を全身に纏いながら向かってきた。
「舐めるな!」
シャインはゲヌビと距離を取りつつ、二丁の拳銃から交互に弾丸を放つ。全て命中する。が。
「ほう? 珍しい武器っちゃ。なかなか痛いっちゃ! でも……効かないっちゃ!!」
「……!!」
弾丸をものともせずに、こちらへ向かってくるゲヌビに、シャインは珍しく冷や汗をかくと、
(つっ! 今のアタシではこれが限界なのか!?)
【シャイン! 私と替わりたまえ! 魔術でゲヌビとやらから逃げよう!】
【……ああ】
今回ばかりはラファの意見を素直に聞き、入れ替わる。
「およ? また入れ替わったっちゃ! お前ら……なぁ? 俺っちの下僕にならないっちゃ?」
「悪いが断らせてもらおうか! フォア・フランメ!!」
容赦なく魔術を使用するラファを見て、ゲヌビは避ける様子もなくそのまま攻撃を食らうと、全くのダメージも受けずにその場に居たままに、
「お前、よく見たら羽根あるっちゃ。ラフル様と似てるっちゃ!」
そう言われ、ラファの顔つきが変わる。
「ラフル様……ねぇ。やはりそう言うこと……か!?」
一瞬の隙に、ゲヌビがラファの横に立っていた。慌てて杖を構える彼の腕を掴むと、
「くっ! なんて力なんだ!?」
ラファを地面に組み伏せ、ゲヌビはニヤリと不敵な笑みをみせる。
「なぁなぁ? もう一度。俺っちの下僕にならないっちゃ? お前らのこと、調べてやるっちゃ?」
「誰……が……ぐはぁぁぁあ!?」
抵抗しようとしたラファの両腕を締めつけ、ニヤニヤ笑いながらラファを持ち上げる。
「まぁいいっちゃ。持って帰ってから考えるっちゃ?」
ゲヌビが身体に風を纏い出した瞬間だった。
「ラファさん達を離せぇぇえ!!」
投げ捨てられた衝撃から、いつの間にか立ち上がっていたユグルスが、モーニングスターでゲヌビに殴りかかる。が、やはりあまりダメージにならなかったのか、ゲヌビが首だけを後ろに向ける。
「ひぃ!!」
その気持ち悪さと威圧感に、思わずユグルスは尻もちをついてしまう。
「うぅ……ユグルス! 逃げなさい!!」
「……で、でも! そしたらラファさん達が!」
そんなやりとりをする二人を後目に、ゲヌビはラファを持ち上げたままユグルスに近寄り、そして、
「んん? お前、その気配にその髪と目。ノオン様じゃないっちゃ? やっと見つけたっちゃ! ゼレン様が待ってるっちゃ!」
そのゲヌビの言葉を合図に、ユグルスの脳裏に一気に記憶が流れ込んでくる。
「あ……ああ! あああああ!!」
そして、ユグルスは気を失いその場に倒れてしまった。
「ゆ、ユグルス! しっかりするんだ! ユグルス!」
【ラファ! もう一度アタシと替われ!】
【無理だ! この男、妙な術を放っている! 替わりたくても……ぐっ!?】
【……ラファ!】
ゲヌビが更に力を込めたことで激痛がラファを襲い、フレナの呼びかけに答えることなく気を失ってしまった。
「およ? こっちも気を失ったっちゃ? ああ、こうなると替われないんっちゃ? いっか、まとめて連れてくっちゃ!」
ゲヌビは片手でラファを持ち、もう片方の手でユグルスに近づき持ち上げると、風を全身に纏い宙に浮き、その場を後にした。