危険な奴
二人が戦闘体勢に入って数秒。目の前に現れたのは、一人の男だった。勢いよく風をまといながら現れたのは、
「……! キミは。『三対の爪』、ゲヌビ・エヌ・ズベン!」
フレナにそう呼ばれたゲヌビは、首を90度に左に垂直に曲げると、
「およ? 俺っちを知ってるっちゃ? 俺っちの邪魔するっちゃ?」
相変わらず口調は気味悪く、だが、眼光は獲物を狙う魔獣のそれであり。
威圧と不気味さが同居したその気配に、フレナとユグルスは武器を構えた。
「おお? 敵っちゃ? 敵っちゃ!」
首の角度はそのままに、口角だけを上げニヤリと笑うと、首を戻したと同時にフレナ目掛けて突風の如く、飛んできた。
「……くぅ!!」
フレナは慌てて後方に飛び、ゲヌビから距離を取る。と、ゲヌビの両手の爪が伸び、一つ一つが鎌のような大きな姿に変わった。
【身体強化の類いか! フレナ、ユグルスとともに気をつけたまえ!!】
「俺っちの爪はデカいっちゃ? お前から、切り刻むっちゃ!!」
ゲヌビが右腕を上げると、その周囲に風が発生し、腕を中心にどんどん大きくなっていく。
「いくっちゃ? 行くっちゃ? 逝くっちゃぁぁああ!!」
その叫びとともに、大きな風の塊がフレナに向かって放たれる。
「フレナさん!!」
「……つっ!」
フレナは風を大剣で受け止めると、後ろに押されながらもなんとか踏ん張り、風が弱まったところで切り払う。それを見たゲヌビは、首を左右に振りながら、
「ちゃ? 俺っちの風に耐えたっちゃ? お前、面白いっちゃ?」
そう言うと今度は両腕を上げ、風を纏い出す。
「……もっと! 威力が、上がる、の!?」
「そうだっちゃ! 今度こそ、逝くっちゃ!!」
二つの大きな風を纏ったゲヌビが、さきほどよりも更に速いスピードでフレナに迫り、彼を思い切り宙へ吹き飛ばした。
「……くぅぅぅう! がはっ!?」
宙から地面へフレナの身体は叩きつけられ、吐血する。
「フレナさん! シャインさんか、ラファさんに交代を!!」
衝撃で動けないフレナの元へ駆け寄りながら叫ぶユグルスの言葉に、ゲヌビが反応する。
「交代っちゃ? おい、チビっちゃ。面白そうなその話、教えるっちゃ!!」
「!!」
巨大な両手がユグルスに迫り、彼女の身体をあっという間に捕らえる。そして、力を少し込め、締め付けた。
「うぅ!?」
「さぁ、話すっちゃ!」