第一の目的地に向けて
宿屋に戻ると、シャインが手際良く荷物をまとめ始める。それを見ていたユグルスは、慌てた様子でシャインに声をかけた。
「あ、あの! ラシエドさんのさっきの話ですが……融合はシャインさん達、疑似肉体はオレと関係があるかもしれないですよね!?」
「ああ。だから遺跡に急ぐ。着いてくるなら支度しろ」
冷たく言うシャインに、ユグルスも慌てながら支度をし始めると、内側からラファがシャインに向けて静止の声を上げる。
【シャイン! 気持ちはわかるけれども、落ち着きたまえ!】
【うるさい】
ラファの言葉を一蹴するとシャインは銃の稼動を確認し、ユグルスの方を向く。彼女の方も準備出来たようだ。
「行くぞ」
「は、はい!」
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早々とシュテの村を出たシャインはフレナと入れ替わり、ユグルスと二人で第一の目的地であるカジィーセ遺跡を目指し歩き出した。
「……ユグルス。は、歩きだけど、大丈夫?」
そう問いかけるフレナにユグルスは笑顔で答える。
「はい! オレ、体力だけはあるみたいなんで!!」
「……そう。なら、良かった」
【だけれど、夜が深くなって来たら私と交代するんだよ? 闇夜程恐ろしいものはないからね!】
【……わかってる。よ】
ラファの言葉にそう答えると、フレナは周囲を見渡す。のどかな田園風景が広がるなかで、空は日が落ちて来はじめていた。
(……これは。あんまり、先に進めない、かもね)
そう考えていた時、横からひょっことユグルスが顔を出し、フレナに聞く。
「あの! ところでなんですけど……新生フェイラス帝国と繋がりがあるかもしれないのに、古代の遺跡に行ってていいんでしょうか? もちろん遺跡専門と言うのは理解しているんですが!」
「……それ。は」
【アタシ達の呪いもユグルスの件も、全ては遺跡から始まっている。なら、調べるべきはまず遺跡だろう? と言え】
シャインの言葉を珍しくそのまま伝えると、ユグルスは納得したらしく深く縦に頷きながら言う。
「なるほど……確かにそうですね! オレ、どうやら焦っていたみたいです……すみませんでした!」
「……うん。大丈夫、だよ? それより、ここから、は、魔獣が出てくるかも、しれない、ね?」
フレナの言葉に、ユグルスがはっとした顔をする。
「そ、そうですね! 気合い入れ直します!」
そう言って、ユグルスが手にしていたモーニングスターを握り直すのを確認すると、フレナも警戒心を上げる。すると、内側にいるラファの声が響いてきた。
【しかし、魔獣か。野生の魔獣達というのは、フェイラスの魔獣達とどう違うのかな? 私の母国には魔獣研究の分野があった気がするし、目を通した気もするけれども……うーん】
【思い出せないなら言うな】
シャインの鋭いツッコミに、ラファが押し黙った気配を察したフレナは、とりあえず誤魔化すようにユグルスに話しかけることにした。
「……ところで。シュテの村は、どうだった?」
「え、えぇと……のどかで、穏やかで! とても素敵な村でした!」
「……そう。なら、良かった、ね?」
「はい!」
そんなやり取りをしながら歩いていると、あっという間に夜になり始めた。
(……そろそろ。ラファと交代、かな?)
フレナがそんな事を考えた瞬間、前方から気配を感じた。
「……! ユグルス、戦闘体勢! なんか、来る!」