シュテの村にて
遺跡までの中間の村、シュテに着いた。周囲を警戒しながら、シャインとユグルスは馬車を降りる。
「ふぅ。だいぶ慣れてきましたが、やっぱり馬車に長時間乗ると体がキツいですね……」
「……慣れろとしか言えん。……ここにはギルドがないから、宿屋を探す」
「は、はい!」
ぶっきらぼうにそう言うシャインの横につく。が、少し顔色の悪いユグルスを見て、内側にいるフレナとラファが反応する。
【……なんか。おかしい、ね?】
【あの様子から察するに、また何か思い出したのかもしれないね! シャイン、宿屋についたら私と交代したまえ!】
【……うるさい。わかっている】
苛立ちげに二人に言うと、シャインはユグルスを一瞥し、宿屋を探し始めた。
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そこまで広くない村だからか、すぐに宿屋が見つかった。
受付を通り、部屋を確保すると二人は簡素な室内に入る。
左側に質素な二段ベッドが置かれ、サイドに小さなテーブルと椅子のある空間を見渡すと、シャインは部屋の鍵を閉め、ラファと入れ替わる。
入れ替わったラファはすぐさま杖を構え、魔術を使う。一段落すると、ラファはベッドに腰掛け、ユグルスに椅子に座るよう促す。
「さてと! ユグルス、馬車の中で何を思い出したのかな? 結界も張ったし、安心して話してくれたまえ!」
穏やかな笑みを浮かべながら言うラファに、ユグルスもホッとしたのか話はじめる。
「実はですね……」
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一通り話を聞いたラファは、なるべく優しい声でユグルスに声をかける。
「なるほどね……。それはなんとも、確かに不可思議な話だね! まさか、フェイラス王国と繋がるとは……うーん、ますます謎が深まったと言うか……まぁでも、キミの過去に一歩近づいたんだ! 明るく行こう!」
「……はい」
返事はしたものの、やはり浮かない表情のユグルスに、内側にいるフレナが心配そうな声で言う。
【……全然。元気、ない、ね? 大丈夫、かな?】
その声を受けて、ラファは少し考えた素振りをすると、
「ユグルス。キミの過去がどんなことであれ、私達はキミの味方だ。全てが解決するその時まで、共に頑張ろう!」
そう励ます彼に、内側にいるシャインが抗議する。
【おい。勝手に決めるな。……ユグルスが仇なす者であれば……アタシは容赦しない】
【……シャイン。そん、な、極端な、こと、言わないで、よ。ボク、は……ユグルスと。戦いたく、ない、よ……】
反対するフレナに、シャインはふんと鼻を鳴らすと、静かになる。そんな正反対の二人に、思わず苦笑いを浮かべる。
その様子に気づいたのか、ユグルスがラファに向けて視線をやる。
「ラファさん? 内側にいるお二人と何かあったのですか?」
「いやいや。なんでもないさ! それより、せっかく来たんだ! 村をみて回って来たらどうだい?」
ラファの提案に、ユグルスは困惑しながらも、
「そうですね……ちょっと回って来ます!」
そう言うと、武器のモーニングスターを構え、部屋を出て行った。
それを見送ったラファは、シャインと入れ替わった。
【さて。ユグルスの話……どう思うかい?】
【……ボクは。フェイラス帝国、と、王国と、今、の、新生フェイラス帝国と、繋がっている、気はする、かな?】
【……どう繋がっているかはわからんが、敵であれば倒すのみだ】
そう吐き捨てると、シャインは二人を黙らせ、銃のメンテナンスにとりかかった。