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ユグルス

「あ、あの。貴女は?」


 突然の乱入に、困惑するユグルスにシャインは素っ気なく言う。


「フレナの知人だ。用ならアタシが聞く。付いてこい」


 シャインはぶっきらぼうにそう言うと、怪しむユグルスを連れて、借りている部屋に入れる。

 部屋は簡素なベッドにサイドテーブルがあり、個室のトイレとシャワールームが付いていた。


 サイドテーブルの椅子にユグルスを座らせると、シャインはベッドに腰掛け、


「それで? フレナを探していたのはどういう理由だ?」


 詰め寄るシャインに、ユグルスは警戒を解くことなく、


「貴女がフレナさんとお知り合いなのは信じましょう。でも、理由は、フレナさんに直接話したいのです‼︎

 あの方はどこですか⁉︎」


 一歩も引かないユグルスにシャインは、


【厄介この上ないな】


【……ごめん】


 謝るフレナに、ラファが言う。


【過ぎてしまったことは仕方ないさ! それより、コレはフレナでないとおさまらないとみた! 後で私が記憶を消すから、ここで交代してしまえばいいんじゃないかと思うんだけれど?】


 ラファの提案に、シャインは少し考えると、


「……おい。これから見ることで騒ぐな。いいな?」


「え、ええと?」


 シャインの言葉に困惑するユグルスを前に、彼女の身体が光り、ユグルスが瞬きする間もなく、フレナと替わった。


「え? ふ、フレナさん⁉︎ 一体どこから⁉︎ あの人は⁉︎」


 驚きを隠せないユグルスにシーっと指で合図すると、


「……。ボク達は呪いにかかっているんだ。だから、その……、悪いけど……」


 断わりを入れようとするフレナに、ユグルスは、


「フレナさんも()()()()()()()()()()()()()()!」


 一言そう言うユグルスに、今度はフレナが困惑する。


「? キミも呪いを?」


「はい。オレ……いえ、ワタシは……」


 そう言って、ユグルスは上着を脱ぐ。すると、サラシを巻かれた上半身を晒し、


「まず第一にワタシは記憶喪失です。名前も出自も何も覚えておりません。わかるのは女であること、そして、第二に何かなさなければならない事があることだけ。第三に、ワタシのこの身体はどうやら普通の肉体ではないと言うことです」


 ユグルスの話に、ラファが反応する。


【ほう。記憶喪失に肉体が普通でないと? 興味深いな!】


【おい! 深入りしないんじゃなかったのか?】


 シャインの言葉を無視し、フレナは聞く。


「……肉体が普通じゃない、って?」


「はい。例えば……このナイフで手に傷をつけますね。すると……」


 ユグルスが左手をナイフで切ると、彼女の身体からは出血がせずに、痣のような痕がついたかと思ったらすぐに塞がってしまった。


「! これ、は?」


【ほうほう。その身体は、どうやら自然に出来たものじゃないだろう! 人工的なモノだね!】


「ワタシは、この呪いとも言うべき記憶の喪失と肉体の正体を知りたいのです‼︎ だからどうか、ワタシと共に旅をして頂けませんか? 貴方は、いえ、貴方々は強い! ワタシでは行けないところもきっと行ける! お願いします‼︎」


 深々と頭を下げるユグルスに、フレナは困惑しながら、シャイン達に声をかける。


【……どう、しよう?】


【私は興味深いな! 人工的に造られた肉体! 不可思議だし何より奇妙だ! それに、我々にかけられた呪いと関係性がないとも言えないだろう?】


【……あまり深入りしたくないんだがな。ラファの言う事も一理あるか。手がかりはほしい】


 二人の意見を聞いたフレナは、未だ上半身を晒したユグルスに、


「……まず。上着を着て? で、連れてくのはいい……って結論になった。から、ボク達の事も話すね?」


 彼女に服を着せると、自分達の呪いについて話をし始めた。


 ****


「なるほど。それで、シャインさんの身体が光った後にフレナさんが現れたのですね。納得しました!」


 明るい声で言うユグルスに、フレナは恐る恐る言う。


「……それから。怖がられるの嫌、だけど。一緒に行動、するから。フード外すね?」


 そう言ってフードを外し、尖った耳を見せる。


「……ボクは。ダークエルフなんだ。だから……その、怖いかも知れないけど……慣れてほしい。な?」


 ユグルスは、フレナが想像したような畏怖の目を向ける所か、嬉しそうに言う。


「ワタシはダークエルフについて詳しくありませんし、フレナさんはフレナさんですよ! 全然怖くなんかありません‼︎」


 そう言ってフレナの右手を握り、握手をする彼女に、フレナはやや嬉しそうにでも困惑気味に、握手をかえす。


「そう言えば、三人という事はもう御一方いらっしゃるんですよね? その方にもご挨拶したいのですが!」


 ユグルスの発言で、唐突にフレナとラファが交代する。


【……ちょ! まだ、話してた!】


 反論するフレナとビックリしているユグルスを知り目に、ラファが胸を張って言う。


「私は大魔術師、ラファ・シファー・ステンディダンバルネルさ! 魔術の事ならなんでも聞いてくれたまえ!」


 そう自己紹介を終えると、ラファは早々にシャインと入れ替わった。


「……ラファ。唐突過ぎる」


 目まぐるしく替わる彼らに、ユグルスは少し笑うと、


「それじゃ、シャインさん、ラファさん、フレナさん、これからよろしくお願いします!」


 そう言って笑顔を見せた。

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