狙われる
町付近で、いつも通りにフレナと入れ替わったシャインとユグルスの二人は、ギチャの町に辿りついた。
「なんだかんだで、この町に戻るのも慣れたもんですね。感慨深いです」
「……本当なら、そんなに町に滞在したくないんだがな」
シャインの言葉にユグルスが首を傾げながら聞く。
「どうしてですか?」
「わからんか? 長く滞在すればするほど、アタシ達の入れ替わりがしにくくなるし、不審がる者も現れるだろう。こちらとしては、なるべく呪いのことを探られたくないんでな」
「な、なるほど……? でもなんでそんなに……その……バレたくないんですか? 呪いのことを知ってもらえば協力者だってできる……かと……」
話している内に、シャインの表情が険しくなるのを感じたのだろう、ユグルスの声が小さくなっていく。
【……シャイン。落ち着い、て?】
【フレナの言う通りだよ? それに、ユグルスの疑問はもっともだと、お兄さんは思うな!】
「……ちっ。一度しか言わんぞ? アタシ達の呪いは特殊すぎて、体のいい実験体になるだろう。それに加えて、珍しい種族の有翼人とダークエルフだ。人売りなんかには格好の餌だろうよ。……ようするに、狙われやすいと言うことだ。わかったな?」
威圧しながら言う彼女に、ユグルスはコクコクと頷く。それを確認するや否や、さっさと歩き出した。毎度の如く、ユグルスも慌てて後を追うのだった。
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ギルドにつくと、二人は遺跡であった出来事を報告した。強力な魔獣、謎の装置などなど。
なお、ユグルスが謎の文字を読めることは伏せた。先程のシャインの言葉の通り、何者に狙われるかわからないからだ。
報告を受けた受付嬢が、神妙な顔で言う。
「……報告は受け取りました。しかし、対物理に対魔術耐性のある魔獣達……ですか……。これは……討伐隊を編成しなければならないかもしれませんね……。あ、報告ありがとうございました。こちら、報酬になります」
提示金額よりは少ないがそこそこの報酬を手にする。
「……オレ達の報告だけで、こんなにですか!?」
驚くユグルスに、受付嬢が優しく言う。
「はい。脅威の確認も、遺跡調査の任務の一つですから。大切なことなんですよ? 一般人が立ち入りでもしたら、危険ですから」
その言葉に、ユグルスは納得したらしく大人しくなる。
「……クスマ遺跡の調査は、これで完了でいいか?」
そう聞くシャインに、受付嬢が答える。
「はい!今後は、Aランク以上の冒険者の方々限定での募集になると思います。本当にお疲れ様でした!」
「……そうか。なら……新生フェイラス帝国に関わる依頼はないか?」