お守り
「……大丈夫?」
入れ替わってすぐに、フレナがユグルスに声をかける。
「は、はい! それにしても、ラファさんの魔術は凄かったですね!」
体勢立て直したユグルスが返事をする。
「……そう。なら、よかった」
【……しかし、あれほどの魔獣がいるとはな……ラファはしばらく魔術が使えないだろう? 次も来たら、対処できんぞ?】
【いやぁ、面目無いね!】
「……ユグルス。ラファ、は、しばらく、魔術、が、使えない。から……次も、来たら、どうしよう、か?」
「そ、そうなんですか……ど、どうしましょう……正直、あんなに強い魔獣がいるなんて……」
【……まぁ、あのベリアルスネークは、Aランクの冒険者数人がかりで倒すべき魔獣だからな……先程は、内側からの攻撃に弱かったから、なんとかなったが……次に現れるのがどんなタイプの魔獣か……わからん】
シャインの言葉をユグルスに伝えると、彼女は目を丸くしながら、少し震えた声で言う。
「そ、それでは、オレなんかじゃ太刀打ち出来ないと言うことですよね!?」
「……それ。は……」
言葉に詰まるフレナの様子で察したのだろう。ユグルスの顔が青ざめる。
「……そう、ですよね……この先、進むのは……オレじゃ足でまといですね……」
しゅんとする彼女に、どう声をかけるべきか悩むフレナに、内側から声がする。
【……事実は事実だ。これ以上進むのは危険過ぎる。引き返せ】
【シャインはバッサリ言うねぇ。だけれど、私が魔術を使えない以上、魔獣への対処が出来ないわけだからね……】
二人の言葉を受けて、フレナがゆっくりと口を開く。
「……これ以上は。危ない、から。悔しい、けど、やっぱり、引き返した、方が、良いと思う」
なるべく優しく言うが、ユグルスの顔色は優れない。
「……行こう。か?」
「……はい」
二人は、なるべく静かに遺跡から出ることにした。
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外に出た瞬間、遺跡の中から数多の魔獣達の鳴き声が響いてきた。
「!!」
「……凄い鳴き声……あの遺跡に、どれだけの魔獣が……?」
ユグルスの手が恐怖でだろう、震えていた。それを見たフレナは、
「……ただの。遺跡じゃ、ない、のかも、ね? 撤退して、正解、だった、かな」
そう言うと、ユグルスに手招きをし、そっと何かを差し出した。
「? これは一体?」
困惑する彼女に、フレナが頬をかきながら言う。
「……コレ。エルフの里、に、伝わる、お守り。ダークエルフ、の、ボク、でも、作れる、ヤツ。……ユグルスの、分」
【そこは素直に、ユグルスのために作ったんだ! と言うべきではないかな? お兄さんは悲しいよ?】
【……ラファ、うるさいぞ?】
少しキョトンとした後、ユグルスは嬉しそうに微笑みながら、
「ありがとうございます! 大切にしますね!」
フレナからのお守りを大事そうにしまう。それを見ていたフレナは、
「……。まぁ、その……行こうか?」
照れくささを隠すように言うと、二人は歩き出した。