ベリアルスネーク
入れ替わったラファは、杖を構え、ベリアルスネークと対峙する。
「さてさて……やるとしようか!」
【……被害。出さない、ように、ね?】
【ラファ、くれぐれも……わかっているな?】
危惧する二人に気を取られていると、近くにユグルスが駆け寄って来た。
「ラファさん! ど、どうするのですか!?」
緊張を隠せないユグルスに、ラファは、
「なぁに、ここはお兄さんに任せたまえ! さぁ、いくぞ? ストーズ!」
ベリアルスネークの身体が硬直する。が、それも一瞬で、解けてしまった。
「な!?」
「おやおや? これは少し驚いたな! 魔術解除が出来るとはね……やはり……」
【普通の魔獣ではないな。強化されている可能性が高いだろう】
シャインの分析に、ラファは内心で頷きながら、怒ったのだろう、ベリアルスネークがくねくねと動きながら、溶解液を二人に向けて放つ。
それをラファは飛び上がることで、ユグルスは後方に慌てて下がることで回避する。どうやら、ベリアルスネークの溶解液は連続で放てないらしい。
「ラファさん!」
ユグルスがラファに向かって叫ぶ。それを受けて、ラファが杖を構え直しながら、
「さてと、なら! フィル・ストーズ!」
そう言って、上位魔術を放つ。と、再びベリアルスネークの身体が硬直する。
「おお! 今度こそ動きが! オレはどうしたらいいですか!?」
ベリアルスネークに注意しながら、ユグルスが言うと、ラファが指示を出す。
「ユグルス! キミは今のうちにマナをのせて武器で思い切り殴りたまえ!!」
「は、はい! わかりました!」
そう言うと、ユグルスは硬直しているベリアルスネークを、モーニングスターで勢い任せに殴り出す。
「えい! えい!」
だが、あまり効いていないのか、バウンドし、跳ね返される。
【! 物理も効かないか? 厄介この上ないな!】
シャインの言葉を受けて、ラファが動く。
「私の魔術を舐めないでもらおうか! レル・レーンズ!」
そう唱えると、ラファの杖から集束された稲妻が放たれる。それをまともに食らったベリアルスネークは、声にならない悲鳴を上げる。
「凄いです、ラファさん! これなら!」
そう言った時だった。ベリアルスネークの硬直が解けてしまった。再び大口を開けて、迫ってくる。
「ほう? なかなかしぶといじゃないか。これは、ますます本気にならないといけなそうだね!」
口調こそ余裕ぶっているが、ラファは冷や汗を流していた。
(参ったね……。私の魔術をこうも容易く解除するとは……)
少し弱気になるラファ目掛けて、ベリアルスネークの口が迫る。
「危ないです!!」
そうユグルスが叫んだ瞬間だった。ラファの身体からオーラが発せられ、ベリアルスネークの口の中目掛けて、魔術が発せられた。
「内側から焼かれるといい! ハイ・フランメ!」
杖に宿った小さな火球が口の中に見事に入ると、ベリアルスネークの身体が内側から不自然にうねり、爆発した。
「うわぁ!?」
爆発の威力は、ベリアルスネークの体内で収まったものの、衝撃波が飛んできてしまった。
【おい! 遺跡は壊れていないだろうな!?】
【……ラファ。依頼のこと、少し、は、気にして?】
【ははは! まあ大丈夫だろう!】
二人から注意を受けたラファは、気にすることなく、ユグルスの近くに降りたった。久しぶりにずっと飛びっぱなしだった上、マナを大量に消費したためか、かなり疲れてしまったのだ。
衝撃波で少し体勢を崩していたユグルスと目が合う。慌てて起き上がる彼女を制し、ラファはフレナと再び入れ替わったのだった。