再調査とあの男
前回よりも時間をかけ、クスマ遺跡に辿り着いた。幸いにも、道中で魔獣や野盗に襲われることはなかった。
「今回は順調でしたね!」
そう言うユグルスに、内側にいるシャインが一言言う。
【経験は積めなかったがな。ユグルスの戦闘力を上げたかったんだが】
その言葉をユグルスに伝えることはやめ、フレナは早速入口に入って行く。
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「あの時の広間に出ましたね!」
遺跡に入って数十分。像が置かれた広間までやってきた。
【気をつけろ。なにがあるかわからん】
警戒するフレナとユグルスの前に、聞き覚えのある声が響いてきた。
「あ〜! どうなってるっぺ!?」
像の真後ろ辺りにいるのだろう、その人物に二人はゆっくりと近づいていく。
「……あの〜?」
ユグルスが静かに声をかけると、男は思い切り飛び上がると、
「あひゃあ! 誰がど思えば、いづぞやの坊ちゃんでねぇが! そいで、あのおっがねぇ姉ちゃんはおらんど!?」
【存外、記憶力の良い奴だな。めんどうだ】
愚痴るシャインの声を聞きつつ、遠慮がちにフレナがエクザに声をかける。
「あの。何を、してた、の?」
すると、エクザはオーバーな動きで目線をフレナに合わせると、
「んん? おめぇ、ぞのマナの気配……禁忌のダークエルフっぺ!? オラはじめであっだっど!?」
オーバーに驚くと、エクザは仰け反りながら、
「あの姉ちゃんど違う意味でおっがねぇっぺ! おらの魂美味くねぇっぺ!!」
そう叫ぶと、フレナから思い切り距離をとる。その様子を見たユグルスは、
「あ、あの! フレナさんは決して怖い方ではありませんよ? 落ち着いてください!!」
慌ててフォローするユグルスの肩に、フレナは手を置くと、
「……ありがとう。でも、これ、が。普通の反応、だから」
そう言うと、オーバーすぎる程にカタカタと震えるエクザを見やり、
「ボク。は、魂、とか。いらないから」
それだけ言うと、先程までエクザのいた場所に行く。すると、そこには妙な文字が刻まれた水晶にパーツがついた謎の装置があった。
警戒しながら、フレナとユグルスがその装置を見る。
【ふむ。マナがある程度充満? いや、充鎮されているね! これは中々に怪しいな!】
【そっちの方はラファが言うからにはそうなんだろう。問題は、その装置とやらがかなり厳重に取り付けられている点だな】
二人の意見をフレナが聞いていると、ユグルスが首を傾げながら、
「『我、有りて ナンバー205』? ってなんでしょうね?」
その言葉に、
【おやおや? 確かによく見てみると、あの謎の文字と同じだね!】
【……なんだと?】
二人が反応する。それを受けてフレナが言う。
「……ユグルス。キミ、が、読めるこの文字、と。新生フェイラス帝国、繋がり、ありそう、だね?」