もう一度クスマ遺跡へ
【しかし、魔術的見解からすると、『三対の爪』なる彼らがフルネームを隠さないのは奇妙だね!】
フレナの治療が落ち着き、シャインとユグルスがテーブルを囲んだところでラファが切り出した。
【……自分達が。ゼレンの手先、であることも隠してなかった、しね】
「シャインさん?」
「……ああ」
ユグルスに声をかけられ、シャインがラファとフレナの意見を伝えると、彼女もこくこくと頷きながら、
「そうですね……。魔術はわかりませんが、たしかに奇妙ですよね。自分達から正体を明かすなんて……。なにが目的なのでしょうか?」
「……わからん。だが警戒するに越したことはない。……本当にゼレンの手先かどうかも怪しいしな」
そう言うと拳銃を取り出し、手入れをし出すシャインに、
「シャインさんは、彼らがゼレン……さん?
と無関係だと思われているのですか?」
そう聞くユグルスに、シャインは首を横に振ると、
「……あくまで可能性の話だ。正直な話、アタシにもわからん。あの知性を感じさせない言動といい、身体能力といい、不明点が多すぎて、絞りきれん。だから、警戒しながら、もう一度クスマ遺跡に向かう」
シャインの言葉にユグルスが目を丸くする。
「言っただろう? アタシ達は遺跡専門だと。一度襲撃された程度で諦めたりなどせん」
そう言うと、簡単な手入れを終えたシャインが立ち上がる。
「……行くぞ」
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「それにしても、ギルドから追加依頼まで入るなんて。本当に『三対の爪』は脅威なのですね」
ギルドで遺跡にもう一度行くと言った時のことを、ユグルスが思い出しながら言う。
受付嬢は驚きながらも、『三対の爪』の危険性から追加として遺跡調査に加え、彼らが何をしていたのかも調べて欲しいと依頼されたのだ。
「……まぁ正しい判断だろう。ところでいつも通りだ。フレナと交代する」
町を出たところで、フレナと交代した。いつも通りのはずの彼の装備にユグルスが驚く。
「アレ? フレナさん、大剣だけでなく弓矢も装備されているのですか!?」
動揺する彼女に対し、
「……うん。さっき、武器屋によった、時に、シャインに頼んで弓矢も、追加したんだ。あの時は、遺跡の倉庫からだった、から。今度は、正式装備として。ね?」
あっさり言うフレナに、ユグルスは、
「……いつの間に!?」
そう驚く彼女に、フレナは頬をかくと、
「……装備試着の時に、ね? それより。早く行こう、か」