被害
ギルドに着くと、中は負傷者と憔悴しきった冒険者達でいっぱいだった。
「シャインさん、これは……」
異様な光景に思わず怖気付くユグルスに、
「……行くぞ」
そう言って受付まで行く。すると、青い顔をした受付嬢が応対する。
「……すみません。今、かなり立て込んでいまして……」
「……『三対の爪』か?」
シャインの言葉に、受付嬢が震える声で言う。
「あなた方も、彼らに遭遇したのですね? お怪我などありませんか?」
「……仲間が軽く負傷したが問題ない。それで? この状況、説明頼めるか?」
シャインの言葉に、受付嬢は我慢していたらしい。涙を目にためながら、
「はい。実は、ここ数日の間に、遺跡調査やダンジョン探索をされていた冒険者の方々を筆頭に、『三対の爪』を名乗る者達による襲撃が相次ぎまして……。ご覧のように、ギルドはこんな状態なのです」
受付嬢の言葉に、ユグルスが顔を青くする。
「ここにいる方々全てが……」
「状況はわかった。……とりあえず、アタシ達の報告も上げる。いいな?」
受付嬢は頷くと、二人を個室に案内した。
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「状況報告ありがとうございました。あなた方の話と他の方々からの報告もあわせて、上に対策と注意喚起を行いたいと思います。……それにしても、ハクラビ・エヌ・ズベン、ゲヌビ・エヌ・ズベン、カマリ・エス・ズベン、あわせて『三対の爪』ですか。かなり危険な存在のようですね……。名前がわかっただけでも良かったですが……。ああ、それはこちらの話でしたね……。失礼しました。お怪我をされたお仲間のこともあります。病院への紹介状は必要ですか?」
「……いや、こちらで対処可能だ。宿を借りれるか?」
シャインの言葉に受付嬢が首を傾げながら、
「宿……ですか? 確か空き部屋がありましたが……。お仲間の治療はよろしいのですか?」
「……ああ。部屋でやる。幸いにも軽傷のようなのでな。」
【……本当。は、結構痛い、んだけどね】
フレナのボヤキを聞きながら、受付嬢から鍵を受け取り二人は部屋に入っていった。