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マウンテン・エル・エクザ

「ま、マウンテン・エル・エクザ……さん?」


「知らん名だ。で? なんの用だ?」


 困惑を隠せないユグルスと、威嚇するかのように睨みつけるシャインにエクザは、


「おめぇら、えくすくわりばーって知ってっぺ!?」


 そう言って胸を張る彼に、


「え、えくすくわりばー? ってなんですか?」


「そんなものは知らん。失せろ」


 二人の反応に、エクザはオーバーすぎるほどの動きで仰け反ると、


「えくすくわりばー知らないっぺ!?」


「ああ。知らん」


 即答するシャインに、エクザはまたしてもオーバーすぎる動きでドヤ顔をすると、


「えくすくわりばーっでのはな、伝説のくわだぁ。なんでも切れ味が抜群な上、錆ねぇし、耕せば土が生きがえるんだぁ! オラは冒険者兼農家なんだっぺ! とにがぐそれが欲しいんだぁ!」


 キラキラした顔で語るエクザに、シャインは冷たく、


「そうか。だが、知らん」


 そう言うと立ち去ろうとする。だが、エクザが道を塞ぎ、


「だがらぁ。姉ちゃん達なんか知らねぇっぺ?」


 しつこいエクザにとうとう我慢の限界が来たシャインは、


「うるさい男だな! とにかく知らんもんは知らん!」


 拳銃を取り出し、銃口をエクザに向ける。


「しゃ、シャインさん! 落ち着いてください!」


 今にも弾丸を放ちそうなシャインを、ユグルスが慌てて止めに入る。


【シャイン。ユグルス、の、言う通り。落ち着いて】


 内側からフレナがフォローに入る。二人の頑張りで、シャインは銃口を向けるのをやめた。


「……ふん」


「おっがねぇ姉ちゃんだっぺ……殺気だげでオラぁ死ぬがど思っだっぺよ……」


 エクザが緊張から解放されたように言う。その様子を見たシャインは、


「……で? もう行っていいよな?」


 圧をかけながら言うとエクザは、


「知らねぇならしょうがないっぺ。オラのカンがはずれだのが納得いがねぇだども……。足止めしで悪がっだけろ! 姉ちゃんだぢ、なにするが知らねぇだども気ぃづげでな!」


 最後に爽やかな笑顔を見せると、早々に立ち去って行った。


【なん、だったの?】


【あははは! これだから下界は楽しいね! あははは!】


 フレナはともかく、爆笑してうるさいラファにまたしても苛立ちながら、シャインは、


「……時間を無駄にした。今日はもう休む。明日、朝イチに出発だ。いいな?」


「は、はい!」


 こうして二人は、道具屋を後にした。

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