バックドラフト
タイトル『バックドラフト』
『消防士の男は、火が燃える部屋のドアを開けたことで爆発を起こした。だが火傷一つ負わず、一人で全ての火を消火した。一体、どういうことか?』
「さっきの問題の質問で消防士って言葉が出てきたから、関連した問題を出してみた。さ、質問受けつけるぜ」
みのりはしばらく考えた後、質問を始めた。
「火が燃える部屋って言い方がどうにも怪しいのよね。この火っていうのは火事の火?」
「いいえ」
「やっぱりね」
みのりは満足げにうなずく。
「じゃあ、爆発っていうのはその火とは関係無い?」
「うーん……無いわけじゃないけどな」
「その火が爆発を引き起こしたの?」
「その聞き方ならいいえだな」
「なるほどね……」
みのりは両手を机の上で組む。
「爆発っていうのは、何かの比喩?」
「いいえ」
「じゃあ、その爆発っていうのは普通に、燃焼の急速なやつのこと?」
「はい」
「ふーん、そこはそうなんだ」
みのりは机の上の手を組み替える。
「消防士の男が火傷してないってことは、部屋で燃えてた火も爆発も、両方すごく小さかったんでしょ?」
「はい」
「その部屋で燃えてた火は、ガスコンロ?」
「いいえ」
「ストーブ?」
「いいえ」
「ろうそく?」
「はい」
「なるほどね。わかったわ」
みのりはにやりと笑うと、言った。
「部屋で燃えていた火は誕生日ケーキのろうそくで、爆発はクラッカーだった」
「正解!」
阿藤は正解の解説を読み上げる。
『消防士の男の友人は、誕生日のサプライズのために、部屋にケーキを用意し、ローソクに火をつけ、クラッカーを構えて待機していた。そして、男が部屋のドアを開けて入ってくる瞬間を見計らい、クラッカーを鳴らした。男は驚いたが、とても感激し、誕生日パーティーが始まると、主役としてケーキのローソクを全て一人で吹き消した』
「なるほどね。バックドラフトと同じように、ちゃんと、男がドアを開けたことが爆発の引き金になってるわね」
「そう。切り取り方しだいで、色んな風に表現できるんだよ。じゃ、この調子で第三問目もいっていみようか」
阿藤は次の問題を読み上げ始めた。