コギト・エルゴ・スム
タイトル『コギト・エルゴ・スム』
『その生徒は素行が悪いわけではなかったが、ある日教室で授業と関係ない質問ばかり繰り返し、それが問題になった。一体、どういうことか?』
みのりは問題を聞いた瞬間、にやりと笑った。
「その質問は先生に対してしてる?」
「いいえ」
「質問をしたのは授業中?」
「いいえ」
「問題になったっていうのは、ネガティブに取り上げられたって意味?」
「いいえ」
「その生徒は石須みのり?」
「……はい」
阿藤もにやりと笑う。
「じゃあ、答えるわね」
みのりはここで一呼吸間を置くと、
「石須みのりは休み時間に教室で水平思考クイズをしており、それがクイズの最後の問題になった」
一字一句に力を込めるようにして、その最後の解答を述べた。
「正解!」
阿藤はうんうんとうなずきながら、拍手をする。
「いや、まいった。まさか、こんなに全部鮮やかに解かれるとはな。俺の完敗だ」
「私を楽しませた時点であんたの勝ちよ」
みのりはぼそりと独りごちた。
「今回はここでお開きだが、また水平思考クイズのストックが貯まったら、お前に挑戦するよ。首を洗って待っておくんだな」
阿藤は「ははは」と笑うと、みのりにゆっくり背中を向け、自分の席へと戻っていく。それと入れ替わるようにして、現代文の教師が教室へと入ってきた。
――そしてまた、いつも通りの退屈な時間が始まる。
考えてみれば、〝授業〟や〝テスト〟というのもクイズのようなものである。だが、阿藤が出してくる問題よりつまらなく感じるのはなぜだろう。
みのりは阿藤が以前言っていた言葉を思い出した。
『本当に重要なのは、問題を解く能力じゃなく、問題を見出す能力だ』
彼女はいつも誰かに用意された問題を解いている自分を、ほんの少しもどかしく思った。
チャイムが鳴った。




