異世界転生ざまぁ
「幼馴染みざまぁってあったじゃん?」
「あったな」
「いけすかないクソみたいな性格の幼馴染みを見返して、けっちょんけっちょんのぎったんぎったんにするやつな」
「けっこう好きなジャンルだな」
「やっぱ報復っていいよな」
「虐げられた恨みを解き放つカタルシス。復讐するは我にありだ」
「そう、復讐するは我にありだ。いいこと言ったぞ」
「そうか。まぁ賛辞を受け取っておこう」
「復讐だ。そう、復讐」
「なんかあったのか」
「俺の好きなジャンルは異世界転生モノだ」
「そうか。こっちは悪役令嬢モノが好きだな」
「だけどな、異世界転生ならなんでもいいわけじゃないんだ」
「まぁガンダムマニアだって、ガンダムならなんだって好きってことは少ないしな」
「好きだからこそこだわりがあるんだ」
「他人からしたらなんの興味もないやつだな。わかるぞ」
「主人公が強いのはいい」
「力こそパワーだな」
「美少女ハーレムなのもいい」
「まぁ不都合あるかっていわれたらないしな」
「だが話がつまらないのはダメだ」
「そりゃそうだろって気もするが続きをどーぞ」
「幼馴染みざまぁで言ったがカタルシスがない」
「重要な要素だな」
「最初から最強の主人公が、予定調和な話の解決なんて何が面白い」
「じゃあ水戸黄門はなんで長寿番組なんだって話はあるが。まぁ続けて」
「話の厚みがない、薄っぺらなんだ」
「聞き飽きたような指摘だけどハイ」
「整合性のない話なんて、酔っぱらいが俺も昔はワルだったとか、嘘武勇伝語ってるのと一緒だろ」
「なるほどな。たしかにそんなん聞きたくもない」
「異世界転生モノが好きっていうだけで、あ、コイツそういうのが好きなんだ、バカなんだ、頭の悪い武勇伝聞いて、スゲースゲーいってるヤンキーレベルの頭の程度なんだ、って目で見られるのはもうたくさんだ」
「まぁこの作品ブクマに入れたとして、それをリアル知人に知られたら、どんな目で見られちゃうのかなって作品はあるね、実際」
「SAOとか主人公が強いってだけで読んでない層がいっしょくたに批判してるけど、キリトはメンタル的に等身大なところが魅力なんだよ」
「けどって要素が1つあるだけで、設定に厚みが増すね」
「そういう弱さがない完璧な主人公なんて魅力がない」
「まぁ弱さがないから魅力がないは嘘だけどね。だったらコブラはなんで魅力的なんだってことになるし」
「あー、人間っぽさがないんだ。コブラは小粋な軽口がいいんだ」
「あぁいうダンディズムがいいんだよね」
「そう、ダンディズムだ。しっくりきた。人間的な魅力。ダンディズム。そういうのがないんだ」
「超強いけど、キャラクター性が憎めない。うんうん、大事大事」
「つまり、俺が好きなのは、魅力的なキャラが活躍する異世界転生だ。やれやれが頭の悪いゲスを瞬殺する話じゃない」
「一緒にするなと、そういうことなのかな」
「そうだ。やれやれなんかクソ食らえだ」
「クソ食らえー」
「だから」
「だから?」
「つまらない異世界転生にクソを食らわせてやる。幼馴染みざまぁの異世界転生版」
「いわば異世界転生ざまぁ、か」
「うはは!ざまぁ見ろ!やれやれ主人公め!」
「本来の主人公より強力なスキルを取得して、全評価で主人公を上回ってやったな」
「てめぇなんざ人より強くなきゃただ空気悪くするだけのウザい男じゃボケが!」
「おぉ、主人公ブチギレてる。すごいブチギレてるよー」
「人間余裕がなきゃダメだぜ」
「その余裕を奪ったのお前だけどなー」
「はい、主人公の仲間になるはずだったロリ奴隷を確保ー」
「確保ー」
「うはは!どうだ!悔しいか主人公!お前は俺の活躍を指をくわえて見てればいいんだよ!」
「はいお嬢ちゃん。きれいなおべべ着させたげて、おいしいゴハン食べさせたげるからねー。寝てるだけの簡単なお仕事よー」
「やれやれ言ってろペラペラ主人公!」
「やれやれ言うだけの簡単なお仕事よー」
「うはは!魔王の尖兵、粉微塵!」
「さよなら中ボス」
「主人公ともども大したことなかったな」
「主人公で本来無双できたなら、それより上のスペックなら、なおさら余裕」
「やれやれ、この程度の雑魚では本気にもなれませんね」
「わー、それっぽーい。ムカつくー」
「最初のロリ奴隷に、美少女エルフ狩人に、デカメロン姫に、くっころ騎士に、セクシー魔女に」
「美少女ハーレムだよー」
「ははは!中身のないテンプレラインナップ!主人公ともどもスッカスカ!」
「いや、話してみたら結構面白かったよ。『ままごと』ならぬ『やんごと』とか」
「やんごと?」
「お姫様がいるからこそできるごっこ遊びだ。お姫様になんかいわれたら『ありがたき幸せー』って平伏する」
「それの何が面白いんだ」
「9回裏のロリ奴隷ちゃんの逆転満塁平伏で下克上したところとか、思わず歓声をあげたね」
「下克上されてちゃダメだろ」
「やんごとなき身分に甘えていてはならないって教訓だよ、きっと」
「魔王撃破RTA」
「はーじまーるよー」
「伝説の聖剣とか!究極の魔法とか!そういうの何もなしの通常攻撃をくらえー!」
「なめプ入りましたー。でもギャルンギャルン削れてるー」
「はい撃破ー」
「おめー。記録10秒23」
「10秒は切れなかったかー」
「なめプした分が痛かったねー」
「NKT………」
「長く苦しい戦いだった」
「まぁ終わってみれば」
「終わってみれば?」
「いけすかない主人公を出し抜いて。主人公のハーレム要員を奪い尽くして。主人公の見せ場を全部潰して」
「ぜーんぶ代わりにやっちゃったんだよね」
「そう、全部代わりに。やっぱりクソみたいなやれやれ主人公なんていらないんだ」
「つまり、嘘武勇伝みたいな全く苦戦しない、つまらない活躍をやっちゃったと」
「え?」
「異世界ざまぁというか、ただ成り代わっただけなんじゃ」
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「何がクソを食らえだよ。っていうか、どっちかっていったら、でしゃばってきたお前の方がクソだよ」
「ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!」
「やっぱりやれやれ主人公なんていらない?じゃあお前もいらねぇよ」
「ブツチチブブブチチチチブリリィリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!」
「ショックのあまり脱糞したか」
「………」
「しかし自ら漏らすことで、異世界にホントにクソを食らわすとはね」
「………」
「深淵を覗く時、深淵もまたあなたを覗いていると、かの宮本武蔵も言ってたらしいしなぁ」
「………」
「もはやこれは、つまらない作品とそれをマウントして叩く奴なんて、どっちもクソだっていう風刺だったのかもしれない」
「………」
「おあとがよろしいようで」
「「「「「よろしくねーよ」」」」」
「………」
「ロリ奴隷、美少女エルフ狩人、デカメロン姫、くっころ騎士、セクシー魔女?」
「「「「「そうだよ」」」」」
「………」
「どうした、なんかあったの?」
「「「「「私達の誰を選ぶの?」」」」」
「………」
「あれ、お前達?あそこのウンコ漏らしが好きだったんじゃないのか?」
「「「「「あのウンコ漏らし、話が通じないし、私達の事なんかいきなり薄っぺらいとか言ってくるし、むしろ嫌いだった」」」」」
「………」
「まぁ仮に好きだったとしても、いきなりウンコ漏らすような奴じゃ、100年の恋だって冷めるか」
「「「「「そんなウンコ漏らしより、アイツに酷いこと言われたときにすぐフォローしてくれた君の方が好き」」」」」
「………」
「あぁ、せっかく一人称を使わず叙述トリックで性別をはぐらかしてたのに」
「「「「「さぁ答えを聞かせて」」」」」
「………」
「………あ」
「「「「「あ?」」」」」
「………」
「ありがたき幸せ?」
「「「「「やんごとはもういい」」」」」