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クエスト


ギルドに入ると、昨日のこともあり注目を集めてしまった。俺はその視線から逃げるようにクエストの掲示板に向かった。掲示板にはたくさんの依頼が貼られていた。荷物の運搬や薬草の採取、グリフォンの討伐など様々だった。


「どうしよう…リア、なんかやりたいのある?」


「そうですね…私は討伐系でも自信がありますが、鼻が利くので採集でも役に立てます」


リアは狼人族だったな。獣人はその動物の特徴も少しは受け継いでいるのだろう。どうしようか。採集でもいいが討伐がしてみたい。リアの実力も考えてC級相当のクエストを受けることとしよう。でも待てよ?リアって何級なんだろう。


「そういえばリアって何級なの?」


「私は奴隷になる前はD級でした。ですが奴隷になったので冒険者登録は削除されてしまいました。奴隷は物なのでご主人様が冒険者であれば、私に冒険者登録は必要ありません」


そうか、奴隷に厳しい世界だな。その分俺が優しくしてやろう。それよりD級だったのか。俺にはそれが一体どのくらい強いのかわからないが、身軽というスキルもあることだしあまり心配はしないでいいだろう。


とりあえずオークの討伐を受けようと思う。C級相当だし、俺が守ってやれば何とかやれるだろう。オーク三体の討伐の紙を持ってカウンターへ行くと、昨日の受付嬢さんが対応してくれた。


「おはようございます。オークの討伐ですね?了解しました。ここ最近オークとオーガが頻繁に現れているそうなんです。上位種が出たかもしれないって話です。なのでくれぐれもお気をつけください」


「あれ?それって俺が昨日倒したやつかも…」


「え!あれってこの近くの森で倒したもの何ですか!?」


「はい。縄張り争いのようなものをしてました」


「わかりました。ギルド側で確認しておきます。大量発生の原因がリョウさんが討伐した魔物だった場合、謝礼などが発生する可能性もあります。その時はお声掛けします」


「分かりました」


俺はリアと共にギルドを出た。オークの宝剣を持つわけには行かないため、手ごろな剣を買うために武器屋へ向かった。リアの案内で武器屋へ向かったのだが、なんだかリアの様子がおかしい。あれ?ここさっきも通ったような…


「ねえ、リア?」


「はひっ!!な、なんでしょう?み、道に迷ってなんかないですからね!」


「お、落ち着けよ」


「お、落ち着いてます!な、なんですか」


いや明らかに落ち着いてないだろ。さっきから目線が泳ぎまくってるぞ、手もあたふたさせて。


「道に迷ったんだな?正直に答えなさい」


「うう…はい。ごめんなさい。覚えてると思ったんですが」


まあ、リアに頼りすぎた俺も悪かったか。どうせ繋ぎの剣だし適当なとこに入ればいいか。お!細い道の奥に看板が見えるな。あそこにしよう。


「リア、あそこにしよう」


俺はリアと細い道を進む。店の前に着くと、年季は入っているがしっかりとした作りだった。だが、全く人気が感じられない…ほんとにやってるのか?


「すいませーん、誰かいますかー!」


返事がない。


「すいませーん!誰か!いませんか!!すいませ…」


「聞こえとるわいボケがぁぁ!!!」


「す、すいません!」


奥から背が低くて髭の生えた寸胴型の体系をしたおっちゃん(?)が出てきた。あれ?俺より年上だよな…?


「ご主人様、あれはドワーフという種族です。器用のステータスが高く、細かい作業が得意と聞きます。それと気難しい性格で知られています」


そう考えていると、リアが小声で教えてくれた。あれがドワーフか…それにしても小さい。150cmもないくらい。それに気難しい性格ってことは気を付けないとな。


「それと耳もいいぞ。気難しい性格で悪かったな」


「あ、いや、すいません」


おっとこれは気まずい。リアはすぐに謝ったが、まあ大丈夫だろう、剣を買うだけだ。


「とりあえず剣を一つ買いたくて」


「ふん、とりあえずの剣なんてうちには置いてねえぞ」


「えっと、それはもうしわけないです。では最高の剣を一つ…」


「剣に最高なんてねえ。いくら極めても鍛冶の真髄なんて見えてこないもんだ」


うーん、困った。本当に難しい性格のようだ。何言っても言い返されそうだ。


「じゃあ、剣を一つ欲しいのですが」


「…ふん、予算はどのくらいあるんだ」


「そうですね、できれば金貨数枚程度が…」


そのドワーフは言い終わる前に奥から剣を五本持ってきた。全て似てるが少し違うような気がした。


「この中から一つ選べ。どれも一つ金貨1枚だ」


「ご主人様、剣は普通銀貨50枚前後です。ここでは少し割高かと…」


それを聞いたドワーフは鼻で笑った。そして俺に目を戻し、早く選べと急かしてきた。だが俺はもう選ぶ剣は決まっていた。見た目は大体同じなのだが、魔眼を使い鑑定すると一つだけ明らかに性能が違っていたのだ。


鋼の剣(ランク2) 〇 〇


鋼の剣(ランク2) 〇 


鉄の剣(ランク1) 〇


兵士の剣(ランク2) 〇


純銀の剣(ランク3) 〇 〇


五つの剣のなかで最も埃をかぶっており汚く見える剣が、純銀の剣というランクの高い剣のようだ。俺は迷うことなくすぐにこれを選んだ。


「これでお願いします」


「…小僧……なんでそれを選んだ?」


「これが一番性能がいいからですかね。それに〇が二つ付いてるし」


「〇?なんだそれ…まさか…おい!!この剣にはその〇は何個ついてる?」


「それは一つです。こっちは二つ。そっちは一つも付いてないです」


「もしかするとお前はスキルの付けられる数を見ることが出来るのかもしれない」


「スキルですか?」


「ああ。武器にはスキルを付けることが出来るんだが、同じ種類の武器でも付けられる数は異なるんだ。腕のいい鍛冶師が作る武器にはスキルが多く付けられると言われているが、はっきりとはしてないから俺は信じてない。ただ、会心の出来だと思う時はスキルが付けられる時が多いな…」


これまたすごい能力だ。俺しか見ることができないとなると、これもできるだけ他言しない方がいいだろう。でもこの〇が見えることのメリットってなんだ?


「この〇が見えてることでなにがいいんですか?」


「ばかやろうお前、武器ってのはスキル許容数を超えたスキルを付けようとすると壊れちまうんだ。だからこれが分かればいい武器を壊すことが無くなるってことだ。その利益は計り知れない」


それなら納得だ。高い金をかけて作った武器も調子に乗ってスキルをつけすぎると壊れてしまう。つまり一瞬でパアだ。いや、待てよ?でもそれって武器屋側には不利益じゃないか?


「でもそれって、武器屋でスキルの付けられない武器ばかりが売れ残ったりしますよね」


「お前みたいなやつばかりだとそうなるが、幸運なことにこんなことが出来るのはお前しかいないだろう」


まあ、それもそうか。俺しか見えていないなら問題はない。


「そうだ、自己紹介がまだだったな。俺の名前はグラン。またなんかあったらいつでも来い。修理でも何でもしてやるよ」


「俺はリョウといいます。ありがとうございます」


俺は差し出されたグランの手をしっかりと握った。


「グラン…?」


リアがそう呟いた。知り合いかと聞いたら、聞いたことはあるが思い出せないそうだ。俺は金貨一枚を払い、純銀の剣を受け取る。この剣本来は金貨10枚ほどの代物らしい。


「男に二言はねえ、とっとと持ってけや」


だがグランさんは快く金貨一枚で売ってくれた。顔に少し後悔が浮かんでいたが、見なかったことにした。


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