くじ引き
歩きながらリアに教わったことをまとめる。まずここはこの国で二番目に大きな都市ユルド。人口はおよそ2万人で、商業が栄え人の出入りがかなり多い。ジョブについてだが、教会にて変えられるらしく、その人の人種や才能、経験などをもとに就けるジョブはそれぞれ違う。
「私の獣戦士は獣人のみが就くことが出来るのですが、結構戦闘で役に立つんですよ」
リアはそう得意げに話してくれた。ちなみにリアのステータスはこうだ。
リア 女 17歳
獣戦士LV21
スキル 身軽
レベル21だとどのくらい強いのだろう。まあ、役に立つってくらいだからそこそこくらいか。まあリアは可愛いから何でもいい。スキルというものは持っている人自体そこまで多くは無いらしい。リアも一個しか持っていないようだし、俺のスキルはあまり人に言わない方がいいかもしれない。硬貨については下から鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨と分かれており、1リンが鉄貨一枚。そして鉄貨10枚で銅貨1枚、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚になる。また、アイテムボックスを持っている冒険者はかなり少ないらしい。つまりあまり人がいるところで使わない方がいいと。やっちゃったな…。まあいいか。
それと奴隷を連れている冒険者は結構多いらしい。報酬とかの配分で揉めることがないんだとか。まあ確かにそうだよな、一応所有物として認識されてるわけだし。それよりなんだあの人だかりは。
「あれはなんだ?」
「あれはくじ引き屋ですね。景品は豪華ですけど当たらな過ぎてほんとは当たりが入ってないんじゃないかって言われてますが」
そこそこ大きなステージのような所に看板とくじ引きの回す機械が置かれていた。一回1000リン、つまり銀貨1枚。出てくる玉の色によって何等かが決まるらしい。下から、白の5等、青の4等、黄色の3等、赤の2等、金の1等に虹色の特等がある。
「特等は…火魔法Ⅰの魔導書?なんだそれ」
「使用することで魔法が使えるようになります。滅多に出回らないので目にするだけでもかなり運がいいですね」
昔から魔法の類に憧れがあった。ぜひとも使ってみたい。でもこういうのってそもそもあのくじの中に入ってなかったりするからな。入ってなかったら運以前の問題だけど、やるだけやってみるか。
「リア、あれやってみようか」
「はい」
俺らはくじ引きの列に並ぶ。先頭の方を見ると、くじを引いた人がくじの結果に悲しんだり喜んだりしていた。
「また5等かよ…」
「やった!3等だ!」
「4等出ただけでもまだましか」
3等で相当運がいいのか。俺でも2等が限界かな。そう思っていると俺の番が来て、男の人が対応してくれた。
「お一人様一度に10回までできます。何回やられますか?」
「じゃあ、10回でお願いします」
銀貨10枚を渡す。なんだか緊張してくる。期待で胸を膨らませながら機械の取っ手を掴み、時計回りに回す。ガラガラと音を立てて機械は回り、一つの球を吐き出した。
「ん?これ何色?」
その球は様々な色が混じりあった色をしており、何色か理解するのに時間がかかった。
「ご主人様!!それ虹色です!!特等ですよ特等!」
「え?これがそうなの?」
創造していた、規則正しく色が並んだ虹色では無かったがこれが虹色…ってことは魔導書?
周りを見ると、先ほどまで喧騒に包まれていた人々が揃えて口を開けて驚いている。店員も同様である。
「と、特等!特等です!!おめでとうございます!」
そう言って店の奥から分厚い本を持ってきて俺に渡した。これが魔導書か…意外と軽いな。するとリアが小声で話しかけてきた。
「ご主人様、もしかしたら盗ろうとする輩が現れるとも分かりませんので、アイテムボックスにしまうか、人前でアイテムボックスにを使うのが嫌であれば今使ってしまうのが良いかと思います」
「なるほどな。どうやって使うんだ?これ。おお!」
適当に本を開くとそこから光が溢れ、力のようなものが全身に入ってくるのが分かった。本は手元に残ったが、何の力も感じられない。これで終わりなのだろうか。リアの方を見ると小さくうなずいた。どうやら使い方は合ってそうだ。そういえばあと9回分ある。
「残りを回していいですか」
「……あ、はい!いいですよ」
心ここにあらずという感じだった。まあ気にせず一気に回そう。俺は9回分を回した。結果は金、青、黄、黄、青、赤、青、白、白だった。周りから聞こえてくるはずの雑音が一切聞こえなくなった。え、誰か世界から音消した?。少しすると羨望と憎しみの籠った声が聞こえてきた。
「お……おい、うそだろ?おかしい」
「夢を見てるみたいだ」
「うらやましいなんてもんじゃない…」
「な、なんてことだ…ほとんど全ての商品を当てるなんて…」
店員はあきらめた顔をして景品を持ってきた。薬草が二個、魔法の聖水三個、丈夫なブーツ二個、疾風のレイピア一個、魔力の指輪一個獲得できた。
「リア、丈夫なブーツと疾風のレイピアはお前にやるよ」
「え!いいのですか?いえ。そんなことはできません。最低限のもので…」
「リア、俺が装備しろと言ったんだ。だからもらってよ」
「はい、ありがとうございます!大事にします!」
こんなに喜んでくれるならリアにならなんでもあげちゃいそうだ。
そろそろここを離れるか。周りから見られてるし、景品を早くアイテムボックスにしまいたいし。俺とリアはこの場を離れ、宿を探すことにした。