奴隷商
あの受付嬢さんにはちょっと不愛想に見えたかもしれない。あとクエストも受けたかったなあ。まあ、今日はもう夕方だし街を見て回ることにしよう。
それにしても本当に様々な人種がいるなあ……いやそんなことよりももっと重大な事がある。俺はこの世界を知らなすぎる。できればあまり目立ちたくないし、いろんなことを聞いて不審がられるのも嫌だ。
どうしたものかと思っていると、奴隷商と書かれた店を見つけた。実は昔からメイドを雇うことに憧れており、かなり興味が出てきた。奴隷もメイドと同じようなものだと思うし、とりあえず見るだけでもいいか。
俺は奴隷商に入ることにした。中は思ったよりも綺麗で、正装をした男性が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
男性に案内されて、個室へ入った。ソファが机を挟んでおかれており対談ができるようになっていた。少しすると髭の生やした細身の男が入ってきた。
「初めまして、私この店の店主のマークと申します。以後お見知りおきを。今日はどんな奴隷をお探しでしょうか」
それに関しては考えてなかったな。とりあえずこの世界に詳しくて…ってそれはみんなそうか。可愛い子がいいよな、それに一緒に戦えて料理もできるような子がいいなあ。よし、素直に全部言おう。
「可愛くて戦闘もできて家事が完璧な奴隷がいいです!」
「なるほど…。では当店一押しの奴隷を何人かお連れしましょう」
マークは正装の男に連れてくるよう指示を出した。そして俺の方に向き直った。
「奴隷に関しての説明をしましょうか?」
「お願いします」
「かしこまりました。まず奴隷は主人に絶対服従です。ですが奴隷の衣食住に関しては保証する義務があります。虐待や悪裂な環境で強制的に働かせることも禁止されています。奴隷にもそれなりの人権が認められているということです。」
なるほど…まあ確かにDV野郎に買われたら奴隷側もたまったもんじゃないからな。
「加えて女性の奴隷に関しては、性奴隷になることを了承していない者もおります。もしそのような目的で買われるのであれば、お気を付けください。ですが今から来る者達は皆了承済みですのでご安心を」
別に?そういうことをしようだなんて思ってないけど?ひとまず安心だ。
少しすると、先ほどの男性が女性を三人連れて部屋に入ってきた。全員体の線が出るような服を着ており、美しくスタイルも抜群だった。
「こちらが当店自慢の奴隷でございます。左から狐人族で槍士のリーシャ、人族で剣士のキーラ、狼人族で獣戦士のリアでございます。どれもこれだけの美貌で、戦闘にも家事にも役立ちます。いかがいたしましょう」
三人とも可愛かったが、俺の目はリアにくぎ付けだった。くりっとした優しい目に小さな鼻、控えめだが存在感のある胸の膨らみに綺麗なくびれ。俺は目を放すことが出来なかった。狼人族らしいが、たれ耳で少し犬っぽい雰囲気があり、肩らへんまで伸びた髪は全体的に茶色がかっていた。
「もうすでに購入する奴隷は決まってるようですな…リア以外は下がりなさい」
他二人は退出し、リアだけが残った。そして俺の横に移動してきた。可愛い。いかん、手続きに集中せねば。
「肝心の契約金でございますが…この美貌に加えて処女でございますゆえ…」
え、こんなに可愛いのに処女なの?どうしよう、リアがいくらであっても買うことが決定してしまった。
「金貨40枚でどうでしょう」
安い!いや、まだこの国の金銭感覚を掴めていないから正確には分からないが持っている金額から考えるとどうしても安いと思わざるを得ない。すぐに金貨をアイテムボックスから取り出しテーブルに出す。
「これでいいですか?」
「ほう、大金を軽々と出しますな。さては有名な家のお坊ちゃんか有名な冒険者…いや、詮索はよくないですな。確認いたします、少々お待ちを」
リアも驚いていたようだった。かっこいい所を見せれたことがちょっとうれしい。いや、顔に出てしまうくらいうれしい。
「確認が終わりました。今から奴隷契約魔法をかけます。手をお出しください」
そう言われ、素直に手を出す。するとリアも同様にマークに手を差し出す。マークは二人の手を取り、何かを唱えた。もう終わったらしい。本当にこれで終わりか?何が変わったんだろう。
「ではリアは着替えてきなさい」
「はい」
その後リアは平民が着るような服に着替え、二人で奴隷商を出た。リアにどう接していいか分からなかったが、向こうから話しかけてくれた。
「よろしくお願いしますご主人様。今からどこへ行かれるんですか?」
ご主人様呼びか…いい。すごくいい!それよりどこに行こうか。この世界について詳しく知ることが優先だな。
「この街を案内してくれないか?この街に来てから浅いんだ。あと常識だと思うことでもなんでも教えてくれ。あれこれ質問するかもしれないがよろしく頼む」
「はい、お任せください」
そう言ってリアは微笑む。本当に可愛い。実際に話してみるとおしとやかな雰囲気がある。身長は俺よりも拳二つ分くらい低いくらいだろうか。
「ご主人様?…そんなに見られると……恥ずかしいです///」
リアは少しもじもじしながら赤くした顔を下に向ける。俺の心はショートした。一度に許容できる可愛さの量をはるかにオーバーしたのだ。俺は崩れ落ちる膝をなんとか立て直し、よろよろになりながら大通りを歩きだした。