極運
両方とも大きな剣を持ち、何度も切りあっていた。俺は目の前の光景に圧倒されてしまい、そこから動くことが出来なかった。二匹を夢中になって見ていると、空中に文字のようなものが浮かんできた。
オークキング LV77
スキル 剣技 咆哮 頑強
オーガキング LV78
スキル 剣技 豪腕 咆哮
「キ、キング…」
死闘を繰り広げる二匹は相当の強さを持つ魔物のようだった。だが幸いにも俺には気づいておらず、お互いに相手しか見えてない様子だった。迫力がすごい。縄張り争いでもしているのだろうか。オークキングが振り下ろした剣をオーガキングが剣で受け止め、蹴りを繰り出す。オークキングはそれを躱し今度は剣を横なぎに切る。その一挙手一投足で生じる風圧に耐えるだけで精いっぱいだった。
このままだとまずい、巻き込まれる可能性がある。ん?なんだこれ!これは…ゴブリンとオークか?。周りには無数の死体が落ちていた。よし、この死体に紛れてやり過ごそう。俺はゆっくりと横になった。
「グオオオオ!!」
「ガアアアア!!」
二匹はもう限界のようだった。気力だけで立っているような感じがする。するとオーガキングが剣を投げた。オークキングはそれを躱しきれずまともに食らう。決着が着いたようだった。両者絶命はしていなかったがオークキングはもう立つことすらできなかった。
これからとどめを刺すはずだ、今のうちに逃げ出そう。俺はゆっくり立ち上がり身を屈めながら歩き出す。絶対にばれてはいけない。ばれたら死ぬ。そう念じながらゆっくり歩く。
「おっと!」
だが不運にもゴブリンの死体で死角になっていた地面の窪みに足を取られて転んでしまった。オーガキングはこちらに気付き、全力で走ってくる。
「あ、、死んだ…」
亮はあきらめかけたが、手元に何かがあるのに気付いた。それを咄嗟に手に取り、走り寄るオーガキングにそれを投げつけた。俺が投げた物はゴブリンの剣だった。それが見事に首元に刺さり、オーガキングは絶命した。
「た…倒したのか…?や、やったー!うわっ、何だこれ」
>レベルが上がりました
すると目の前にログのようなものが山のように流れた。しばらくしてログが流れ終わり、俺は俺自身を魔眼で見た。
リョウ・ヤマグチ 男 18歳
渡界人LV39
スキル 極運
異世界人というジョブらしきもののレベルが上がっていた。あいつを倒せたのも運のおかげなんだろう。オーガキングの方を見ると、体が粒子のようになって消えていった。この世界ではそうなるものなのだろう。詳しくは知らないが。オーガキングがいた場所にはやつが持っていた大きな剣と大きな角、そして二枚のカードが落ちていた。一枚にはオーガキングが書かれており、もう一枚には豪腕と書かれていた。
「モンスターカードとスキルカードって書いてる。何だこれ」
何か分からなかったが、とりあえず全部アイテムボックスに入れようと思う。あれ、どうやって使うんだ?とりあえず角を持ってアイテムボックスと念じてみる。すると角が消えた。
「え!消えちゃった!アイテムボックスから出ろ!おう!?」
そう念じるといつの間にか角が手にあった。なるほど。思ったより簡単に使えるんだな。
オークキングの方を見ると、まだ息があるようだった。俺はゴブリンの剣を拾い、そいつに思いっきり投げる。すると今度も見事に首に刺さり絶命させた。そしてまたログが流れた。
リョウ・ヤマグチ 男 18歳
渡界人LV51
スキル 極運
またレベルが上がったようだ。オークキングの体もさっきと同じで粒子となって消えた。そこに残ったのはオークの持っていた剣とオークの革?のようなものが畳まれた状態で落ちていた。それを拾ってアイテムボックスにに入れる。
「お!またカードがある」
そこには頑強と書かれたカードが落ちていた。今度は一枚か…モンスターカードは無しか。まあいいか。それより周りの死体はどうなるんだろう。そう思っていると一斉に粒子となって消えた。戦闘が終わったからかもしれない。だが剣やカードに関しては一枚も残らなかった。一度に色んな事が起きて精神的に疲れた。とりあえず近くの町に行こう。
でもどっちに行けばいいかわからない…まあこの枝を投げて向いた方角に進むか。俺は木の枝を適当に放り投げる。お!あっちか。何とかなるだろう、とにかく進もう。
俺はその方向にドンドン進む。幸いにも魔物に遭うことは無かった。しばらく進むと森を抜けた。平原が広がっており、遠くの方に壁に囲まれた街のようなものが見えた。あそこに入ろう。
疲れてる足をなんとか動かし、門の前までついた。どうやら検問をしているようだ。出身とか聞かれたらどうしよう…適当にごまかそう。
検問に並び、自分の番が来た。
「お前、身分証は?」
「地方から出てきたばっかで持ってないです」
「怪しいな…ん?どうした」
門番の後ろから別の門番が走ってきた。耳打ちで何かを話している。少しするとさっき喋っていた門番が驚きながら俺を見てきた。なんだよ、見るなよ。そう思っていたが、待ってろと言われ待機室のようなところへ入っていった。そして何かを手にもって帰ってきた。
「お前は記念すべき100万人目の訪問者らしい。ってことでこの金一封をやる。金貨10枚が入ってる。それにもう通っていいぞ」
そんなことがあるのか、流石極運だ。周りから羨望の籠った声が飛んでくる。
「うそだろ!あと5分早く来ればよかった!」
「くっそー!運悪すぎだろう」
「金貨10枚っていったら俺の給料の五倍だぞ」
むず痒いような嬉しいような気持ちだった。だがすぐに奪われる危険性が頭をよぎった。俺はそれをすぐアイテムボックスにしまい、足早に街の中へと入った。