A級昇格
「リョウさん、オークの集落を壊滅させたって本当なんですか!?」
「はい、一応焼き払ってきました」
オークの鼻とオークジェネラルの鼻をカウンターに出した。受付嬢さんはそれを奥にもっていき、少しすると硬貨の乗ったお盆を持って慌てて帰ってきた。
「オークジェネラルの鼻ですね、確認しました。ええとですね、キングの討伐に加えてオークの集落の壊滅。エンペラー出現の可能性も加味しましてギルドから報酬を出すことにしました。クエストの報酬も含めて金貨70枚になります」
え!こんなにもらっていいの!?前もこのくらいもらったけど、ギルドには一体どれだけ金があるんだ。
「あ、それならこの素材の買取もお願いできますか?」
俺はオークの革と牙と宝玉を出した。
「はい、革が11枚に牙が7個、宝玉が一つ…宝玉が出るなんてラッキーですね」
「宝玉ってなんですか?」
「宝玉はどの種類のオークからでもドロップするもので、鍛冶師が武器にスキルを付けるときに必要になる物です。魔物の種類によって付くスキルが変わります。百匹倒せば一つドロップすると言われてますが、実際にはもっと低いみたいですよ」
スキルを付けるために用いるってことは売るのをやめてグランさんのとこに持っていってみるか。
「なるほど、じゃあそれは持っときます。他を売却してください」
「分かりました、えーっと…全部で金貨1枚に銀貨46枚になります」
金をアイテムボックスにしまった。
「リョウさん、ギルドマスターからお話がありますので二階の方へお願いします」
「あ、はい。分かりました」
ギルドの二階には行ったことがなかった。それにギルドマスターから直接呼ばれるなんて俺なんか悪いことしたかな…どうしよう不安になってきた。リアの顔を見ると、やはり驚いた顔をしている。
受付嬢さんの後について階段を上に上がる。途中、一回にいる冒険者から色んな声が聞こえてくる。
「おい、あいつここ入って数日なのにもう二階に行くのかよ」
「俺一度も行ったことないのに!」
「あいつのことに関してはもうなにも驚かなくなってきたな…」
二階ってギルドにおいてそんな特別な意味を持つのだろうか。
二階に上がると、数人の冒険者がいた。みんな防具や武器、雰囲気からして強者であることが分かった。おそらく一定の実力が無いと二階へは上がってこれないのだろう。一階の半分以下の広さで、奥へと続く扉があった。
受付嬢に続いてその扉を通ると、長い廊下があり左右にいくつも扉があった。
「こちらです」
一番奥の部屋に案内されそこに入ると、部屋の奥の長机に白髪で白い髭の生えた男性がと目が合った。座ってるだけでも威圧感があり、眼圧だけで殺されてしまいそうな気がした。
どうしよう、すごいこっち見てくる。一度目を逸らし、もう一目線を戻すと……やっぱりこっち見てる!
「マスター、目つきが悪いです。いつものメガネはどうしたんですか?」
「おっとそうじゃった、なんで見えないのかと思ってたら眼鏡をかけ忘れておったわい。お、よく見える」
ギルドマスターはテーブルに置いてあった眼鏡をかけた。するとさっきのするどい目つきが優しいものに一変した。
「わしはメル・ゴーガン。このギルドでギルドマスターをしておる。さきほどは睨んでしまって申し訳なかった。眼鏡が無いとほとんど何も見えなくてな」
「いえ、大丈夫です。申し遅れました、リョウです」
「知っておるよ。登録時からB級冒険者で、キングの討伐でこの街を救ったと。実力に関しては折り紙付きと聞いておる。まあ早速本題なんじゃが、お主をA級に上げたい」
「A級ですか」
「A級に上がるのには実力もさることながら、貢献度も必要となる。それらの基準を満たした者の中から、わし等が普段の素行から判断し声をかけるんじゃ」
「お会いするのも初めてなのに俺の素行なんてどうやって判断するんですか?」
「ほっほっほ。お主の礼儀正しさは受付嬢の中でも有名じゃよ。受付嬢の強い推薦により、A級に上げることになったんじゃ」
受付嬢さんに目を向けると、少し恥ずかしそうに目線を落とした。
「そこで一つ問題があってな。B級まではそのまま上がれるんじゃが、A級からは昇格試験がある。そしてそれを行えるのは王都だけなんじゃ。つまり、お主には王都に行ってもらいたい」
「王都ですか、ここから近いんですか?」
メルさんが言うには、王都はこの街から北に五日程進んだ距離にあるらしい。主な交通手段は馬車で、朝と昼に王都へ向けて出発しているらしい。道はかなり整備してあるため、比較的安全らしいが商人は冒険者を雇って通るらしい。
「王都に行ってもらう理由はもうひとつあってな。この度エンペラー出現を危惧して、近々討伐隊が組まれる予定なんだが、A級以上の冒険者全員に声がかかっておる。もしもお主が昇格試験に受かったら、そのまま討伐隊に組み込まれる予定だ。まあ、受かったらの話だが」
A級に上がるための試験はどれ程難しいのだろうか。ギルドマスターが判断すると言ってたから、相当難易度の高いものであることは想像がつく。だが、もともと王都には行ってみたかったし受けてみない理由はないだろう。
「分かりました。王都に向かいます」
「よし、こちらで連絡を入れておこう。……死ぬなよ?」
「え?今なんて?」
「いーや、何でもないわい」
今ものすごく怖いことを聞いた気がする。気のせいだと信じたい…そうだ、気のせいだ。
ギルドマスターの部屋を出て、ギルドをロビーに出た。一階では、いつもよりも視線を集めていた。もう流石に慣れてきた気がする。今から王都へ行かないといけないが…もう暗いし明日にしよう。