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S級冒険者


街に帰ってくると、いつもより人通りが少ないような気がした。


「おかしいな…ん?」


ギルドのある通りに出ると、ギルド前に人だかりができているのが分かった。近くまで行くと、人だかりの目線は全てギルド内に向けられていた。

クエスト達成の報告をしないといけないから通りたいんだけど、人が邪魔だな。


「すいません、ちょっと通してもらえますかー、おっと」


あのおばさん今押したよな、転ぶとこだったぞ。ギルド内を見回すと…特におかしな点はなさそうだ。

俺は不思議に思いながらカウンターへ向かう。いや、なんかやけに静かだな、それにみんな同じ方向を向いてる?


ドンッ!


周りに目線を配りながらカウンターへ向かっていたため前を見ておらず、ものすごく硬いなにかとぶつかった。


「いってー、こんなとこに壁作ったの誰だよ」


顔を上げると、目の前には赤い鉄の塊があった。いや、よく見ると…鎧?ってことは…。


「うわ!」


ゆっくりと顔を上げると赤色に黒の線が入ったフルフェイスアーマーが立っていた。

鎧が動いてる…魔物か?鎧は俺の方を向いた。


「お、すまない。邪魔だったかな」


「鎧が喋った!」


「はっはっは、私はちゃんと人間だよ」


笑いながらフルフェイスアーマーは兜を外した。するとそこには攻撃的な赤色の鎧とは真逆の子犬のような柔らかく優しい笑顔があった。渋く落ち着きのある声をしており、茶色の短髪に少し色黒の肌で体も大きい。


「お、おい!お前ガイアさんになんて失礼な!」


後ろから一人の冒険者が焦った声で話しかけてきた。


「ガイアさん?誰だそれ」


「「「ええええええ!!!」」」


え、そんな驚く?この人そんなに有名なの?鎧や風格からしてかなり強そうだとは思うけど。


「ご主人様、この方は十傑衆の一人であるガイア様です」


リアが小声でフォローしてくれた。ナイスだリア。


「十傑衆って?」


「この世界に十人しかいないS級冒険者を十傑衆と呼びます。S級に上がるためには相当厳しい基準をクリアしないといけないらしく、まだ十人しかS級に上がれてないそうです。そしてその十人は皆が規格外の強さを持つと言われており、超高難易度クエストのために世界中を飛び回っています。なので目にするだけでも貴重です」



ガイア・ドモール 守護騎士LV94

 スキル  城壁 不屈


 城壁

  防御力が大きく上昇し、敵の攻撃を集めやすくなる


 不屈

  体力が少なくなると能力が上昇する



守護騎士という職業はよくわからないが、レベルやランクからして俺の何十倍もの力を持っているのだろう。家名を持っているということはもともと貴族なのか?

まあこの世界でもっとも有名な十人の一人が王都でもないこの商業都市ユルドに来てるんだ、そりゃ果実屋のおっちゃんも商売投げ出して見に来たくなる。


「そっかー。俺のことを知らんやつがいるとは俺もまだまだだな」


「そんなわけないですよ!ガイアさんを知らない奴なんてこの世にいません!」

「こいつが世間知らずなだけです!」

「ガイアさんでよかったよ…他の十傑衆の方だったらこの街がどうなっていたか……考えるだけでも恐ろしい!」


そんなすごい人に俺は失礼を働いてしまったということか。それってかなりまずいのでは?


「もうしわけありません」


「いやいいんだよ、S級5位から上がれない俺の力不足がいけない。あ、そうだ受付嬢さん、さっきの続きだけど、おそらく皇帝が現れた」


「皇帝ですか!?」


ギルド内にざわめきが広がった。皇帝というものは相当やばいものらしい。こういう分からないものがでてきたときはリアに聞けばいい。


「皇帝ってなに?」


「魔物の最上位種のことです。コボルトエンペラーやオークエンペラーなどが当てはまります。種類によっては単体でもS級冒険者と同等の力を持つものがいるのに加え、巨大な群れを作って大きな街さえも襲います」


「それはかなりやばい状況じゃないか、ガイアさんが来るということはこの街が襲われる可能性があるということでしょ?」


「お、おい、怖いこと言うなよ…」


俺の話を聞いていた冒険者がおびえながらそう言った。


「いや、可能性は低くない。最近各地でオークとオーガの将軍級(ジェネラルクラス)の集落が発見されている。そしてこの近くの森では王級(キングクラス)の集落が発見されたとの報告がある。集落ができること自体が珍しいのにここまで広範囲に集落があるとなれば、エンペラーがいる可能性が高い。エンペラーの下で育ったジェネラルやキングがこの集落を作っているのだろう。同時に二種類のエンペラーがいる可能性もあり、そうなってしまうと初めてのことで被害が予想できない。今俺を含めて三人のSランク冒険者が対処に当たっている状況だが、万が一のために街全体に意喚起をしてほしい」


「わかりました。街の防備を固めるとともに街の住人にいつでも避難できるよう呼びかけます」


「ありがとう。この街に来るまでにオーガの集落を潰したんだけど、肝心のキングがいなかったんだ。そいつの行方も気になるし、オークの集落も潰さないといけない。街の人に加えて冒険者にもクエストで森に行く際は十分に気を付けてくれと伝えてほしい」


「あ、それなんですけど、リョウさんが二匹のキングをその森で討伐しておりまして、ガイアさんの報告で確認も取れました」


「な!それはほんとか!!」


ガイアさんは俺の肩を掴み、揺らしながら聞いてきた。ガイアさんそんなんされたら喋れないってばああああ。


「おっとすまない、これじゃ喋れないか。でも君がしたことは何万人も命を救ったんだ!自信を持っていいぞ」


「いやでもどっちも瀕死の状態でしたし…」


「関係ない!君がいなかったら生き延びてたかもしれないんだ。よくやったぞ!俺はオークの集落を潰しに行く。君も気を付けろよ」


「あ、オークの集落なんですが、たまたま見つけて中のオークは全部倒しました…ってもう肩を揺らすのはやめて下さいぃぃぃ」


ガイアさんは俺の話も聞かず飛びつき、肩を前後に揺らしてきた。だからそれだと話が出来ないってぇぇぇぇ。


「おっとすまん。君は本当にすごいな、一体どれ程強いんだ?何級の冒険者なんだ?俺のギルドに来ないか?砂塵の刃っていうんだが」


「ちょっといっぺんに言わないでくださいよ」


「おおすまん。まあなんだお前とはまた会う気がする…俺は報告をしに王都に戻る。王都に来たときは推薦してやるよ。じゃあな」


そう言ってガイアさんは赤い兜をかぶり、立てかけてあった大盾と大きな斧を担いでギルドを出た。ものすごく勢いのある人だったな。S級だっていうから威厳があるのかと思ってたけど思ったよりも気さくだったし、なにより終始圧倒されてばっかだったな。推薦ってなんだろう…王都に行けば分かるかもしれないか。


「ご主人様…十傑衆とあんなに親密にしゃべるなんて…すごいです」


まあ、親密っていうか乱暴にされただけっていうか…。嵐のようだったとはあの人のことを言うんだろうな。


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