海くんと陽さん
「おとうさん、これかいたんだ!おさかなだよ!みてみて!」
「…かい、お父さん忙しいんだ。明日にしてくれないか?」
「…うん、ごめんなさい、、」
(俺のせいで、海は1人になってしまっている。。誰か、俺と一緒に海を育ててくれる人は居ないのか…かいを…少しでも自由にさせてあげたいのだが…)
「おとうさん、いまかいたんだ!これがホホジロザメでぇ…」
「かい、ごめんな。お父さん今お仕事してるんだ。明日でいいか?ごめんな、1人にしちゃって…」
「あ、ごめんねおとうさん!だいじょうぶだよ、これ、うみちゃんたちにみせてくるね!」
「あぁ。(そうか…もう、俺1人じゃないんだな。美穂ちゃんもうみちゃんもいる。)」
お父さんおしごとがんばって!といいながら、「かい」と呼ばれた男の子は部屋を出ていきました。
「うみちゃーーーーん!」
「なぁに、かいくん?」
「みてみて!これ、ぼくがかいたんだ!こっちがジンベイザメ!それでこれがエイでね、」
「すごーい!うみもかきたい!かいくん、いっしょにかこー!」
「うん!じゃあ、美穂さんママさんからかみもらってくるね!」
「うみもいくー!」
「みほさんママさーん、おえかきのかみください!」
「あら、かいくんおえかきするの?」
「うみもだよ!」
「そう!じゃあ、これどうぞ!」
美穂さんママさんと呼ばれたのはかいくんと、うみちゃんのお母さん。
とても明るくて面白い、素敵な人です。
お父さんの陽さんも優しくて…すごく素敵な桐谷家なんですが…
他の家族とは少し違うところがありました。
それは、かいくんとうみちゃんは血が繋がっていないということ。
陽さんと美穂さんは、先日再婚したばかりなんです。
なので、陽さんとかいくん、美穂さんとうみちゃんは親子ですが、、、
陽さんとうみちゃん、美穂さんとかいくんは義理の親子ということになります。
かいくんとうみちゃんは同い年で幼稚園の年少さん。
再婚を機に引越し、先日から新しい幼稚園に通っています。
「うみちゃんじょうずだね!これ、なぁに?」
「これはねー、んーと、わかんない!」
「えー、なにかいたかきめてないのー?おもしろーい!」
2人でお絵描きをしながらくすくすと笑っています。
今日は土曜日なのですが、土曜日には守らなくては行けないルールがありました。
それは、
陽さんの邪魔をしないこと。
陽さんは土曜日、自分の部屋で仕事をしています。
これを絶対に邪魔しない。と、言うのが桐谷家のルールなのでした。
「…再婚してよかったな。」
陽さんは仕事をしながら無意識に呟いていました。
「俺と、かい2人の時は俺にも余裕がなくて…かいにめいわくをたくさんかけたし、寂しい思いも沢山させちゃったしな…素敵な家族が出来て良かった…」
かいくんのお母さんは、かいくんを産んで、すぐに亡くなってしまいました。
その為、今まで陽さんは1人でかいくんを育てて来たのです。
ですが、そんなに忙しくても仕事を辞める訳にはいかない。
と、陽さんはかいくんをそだてながら家で仕事をしていました。
平日は夜、土曜日は1日中仕事をしていた陽さんでしたが土曜日の仕事の際、かいくんにはいつも、邪魔をするなと言っていました。
かいくんは土曜日、1人でお絵描きをしたりして過ごし、なるべく陽さんの邪魔にならないように。
と、生活してきました。
陽さんはそんなかいくんを見ながら
どうにかかいを1人にさせない方法はないか
と、考えていました。
「かい、いつも、寂しい思いさせてごめんな。」
「だいじょうぶだよ。ぼくさびしくないもん。おとうさんははやくおしごとしてきて!」
「…あぁ…」
ときには、強く当たってしまうこともありました。
「おとうさん、これ!さいこうけっさく!」
「かい、お父さん眠いんだ。寝かせてくれないかな?仕事で疲れてるんだよ。」
「きょうはにちようびだよ?こうえんいけないの?」
「きょうはだめだ。またらいしゅうな。」
「だって、おとうさん、まえもいけなかったよ?」
「…じゃあ水曜日にいくよ。いいか、かい。今からお父さんは寝るから、静かにしててくれ。キッチンに入っちゃダメだぞ?いいな?よし、おやすみ。」
「…おやすみ、おとうさん…」
ですがかいくんは、なにをいわれてもお父さんの前で泣かないよう、迷惑をかけないよう、頑張っていました。
「…おとうさんいそがしいから、あそべないんだって。クラゲくん、いっしょにあそぼ。…ぼく…おとうさんともあそびたいのに!なんであそんでくれないのかな、」
でも、そんな生活ももう終わり。
うみちゃんや美穂さんがいて、お父さんもいる、素敵な4人での生活が始まるんです。
「…仕事でしっかり稼いで、出かけられらようにしないとな!」
「陽さん、お昼ですよ、食べませんか?」
「美穂ちゃん…貰うよ。いましたに行くから先に食べててくれるかい?」
「待つわよ!ほら、早く」
「あぁ。」
これから何が起こるのでしょうか。
でも、何が起こっても、この家族ならきっと乗り越えられるはず。