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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

喜怒哀楽 ~~女神さまと少年~~

作者: 西 勇士

神は何処までも無慈悲で強欲である。

 むかし、とある国の空に、とても美しい女神さまがおりました。

 ある日、女神さまは気紛れで地上におり、そこで、人間の青年に心を奪われてしまいました。

女神さまは、その青年がどうしても欲しく、青年に言います。


「青年よ、青年よ、わたしは、そなたが欲しい、わたしの物になってくれ」


 しかし、青年は首を横に振りこう言います。


「女神さま、女神さま、わたしはあなたさまの事を、好きにはなれません、女神さまは笑わないではありませんか」


 そう言われ、青年は女神さまの前から去って行きました。

 女神さまは、笑うことを手に入れる事を決心しました。

 そんな女神さまの前に、とても貧しくても強く生きたいと願いそして、とても清々しい笑顔を持つ、少年と出会いました。

 女神さまは言います。


「少年よ、少年よ、そなたの感情、笑顔が欲しい、わたしにくれないか、その代わりに、そなたに、たくましいく、病に掛らない体にしてやろう」

「女神さま、女神さま、それは、本当ですか、本当ならぼくの感情、笑顔を差し上げます」


 こうして、女神さまは笑顔の感情を覚え、それは、とても可愛らしい笑顔を手に入れました。

 再び女神さまは、青年に会いこう言います。


「青年よ、青年よ、どうだ、わたしの笑顔は? これで、わたしの物になってくれるな」


 しかし、青年は怒った顔で言います。


「女神さま、女神さま、聞いてください、わたしの家が、山族襲われ、家を焼かれてしましました、女神さまも怒って下さい」


 しかし、女神さまは怒る事ができませんでした。

 青年は失望して、また、女神さまの前から去って行きました。

 女神さまは、再び少年に会いました、少年は国の兵士になっておりました。

女神さまはこう言います。


「少年よ、少年よ、そなたの感情、怒りをわたしにくれないか、その代わりに、そなたに、どんな強敵に遭遇しても戦える力をやろう」

「女神さま、女神さま、それは、本当ですか、本当ならばぼくの感情、怒りを差し上げましょう」


 こうして、女神さまは笑顔に続き、怒りの感情を手に入れ、それは、この様の物とは思えない、形相を手に入れました。

 三度、女神さまは、青年と会い、こう言いました。


「青年よ、青年よ、そなたの怒りがわかったぞ、わたしもこの様に怒りがこみ上げて来た、これで、そなたはわたしの物になってくれるか?」


 しかし、青年は、悲しい顔で言います。


「女神さま、女神さま、わたしの大切な妹が流行り病で死んでしまいました、わたしは悲しいです、女神さまも、一緒に悲しんで下さいませんか」


 しかし、女神さまは、悲しむ事ができませんでした。

 青年は、三度、女神さまの前から姿を消しました。

 女神さまは三度、少年に会いました、少年は国の将軍になっておりました。

 女神さまはこう言います。


「少年よ、少年よ、そなたの感情、悲しみをくれないか、その代わりに、そなたには、誰にも負けない知恵をやろう」

「女神さま、女神さま、それは本当ですが、本当ならばぼくの感情、悲しみを差し上げましょう」


 こうして、女神さまは笑顔、怒りに続いて悲しみを覚え、それは、清楚に泣く、美しい顔でした。

 また、女神さまは、青年に会い、こう言いました。


「青年よ、青年よ、そなたの悲しみがわかったぞ、わたしには妹は居ないが、とても、悲しいぞ、これで、そなたはわたしの物になってくれるか?」


 しかし、青年は楽しそうな顔で言います。


「女神さま、女神さま、聞いて下さい、今日は兄の結婚式です、わたしはとても楽しいです、女神さまも、一緒に楽しんでください」


 しかし、女神さまは楽しくありませんでした。

 青年はまた、女神さまの前から姿を消します。

 女神さまは再び少年に会いました。少年は国の王になっておりました。

 女神さまはこう言います。


「少年よ、少年よ、そなたの感情、楽しいをくれないか、その代わりに、そなたには、不老不死の力をやろう」

「女神さま、女神さま、それは本当ですか、本当ならばぼくの感情、楽しいを差し上げましょう」


 こうして、女神さまは笑顔、怒り、悲しみに続き楽しさを覚え、それは、天使が舞い踊るかのように楽しい気持ちに成りました。

 そして、女神さまは遂に青年を手に入れました。

 女神さまは手に入れた、青年と結婚し、子供を儲け、充実した日々を過ごしていました、しかし、その幸せは長くは続かなかったのです。

 ある日、女神さまが住んでいた、村が襲われました。

青年とその子供は殺されました、殺したのは国の軍勢です。

 女神さまは、今まで浸っていた喜びが消え、怒りがこみ上げ、悲しみに崩れ、楽しかった日々がもう来ないと悟りました。

 女神さまは、王に復讐すべく、城に乗り込みました。

 そして、女神さまは王であるかつての少年と再会しました。

 女神さまは、少年に言います。


「少年よ、少年よ、どうして、この様なひどい事をするのか、どうして、人を殺すのか」

「女神さま、女神さま、ぼくにはわかりません」

「少年よ、少年よ、そなたには、この非道をどう思う」

「女神さま、女神さま、ぼくにはわかりません」


 その時、女神さまは気付きました、少年は最初に会った少年とは違っていた。

 そして、女神は言う。


「少年よ、少年よ、わたしがお前からもらった、ものを返そう、その代わりわたしが与えた物をわたしに返してもらう」

「女神さま、女神さま、それは余りにも残酷でございませんか」

「少年よ、少年よ、それはどういう意味だ?」

「女神さま、女神さま、ぼくがこの椅子に座るまでに多くの人間をこの手で殺して来ました、兵士だけではありません、女や子供などの、罪もない人間もです、ぼくが、その様な事が出来るようなったのは、女神さまからもらった力と、ぼくが女神さまに差し上げた感情がなかったから出来た事、それを、今さら戻されても、困ります。ですので、ぼくは返すことはしません」

「少年よ、少年よ、そなたは、まるで人形のようだ、喜びを知らず、怒りも知らず、悲しみを知らず、楽しさを知らず、それで、生きている人間であろうものか、わたしが再び人に戻そうぞ」


 女神さまは、隠していたナイフを抜き、少年が居る玉座に編み寄ります。

 少年は手を上げ、弓兵に弓を引かせます。


「少年よ、少年よ、そんな物でわたしが殺せるものか」


 女神さまは、ナイフで少年を際し刺しました、それと同時に、少年は手を振り下げました。

矢は、女神さまと少年を突きさしました。

 矢は女神さまの心臓を射ぬき、女神さまは死にました。

 少年は、冷たくなった女神さの亡骸を、青年と子供が眠る墓に埋葬しました。

 少年は女神さまの墓の前で呟きました。


「女神さま、女神さま、あなたは幸せですか、ぼくの感情と交換で手に入れた家庭は? ぼくには辛かったです、感情がないのは……」


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