第九十六話 家庭菜園 ⑥
家の中では現在精霊王と世界樹の精霊が今の事態について話し合っていた。
世界樹の精霊は語る。
「私はあなた達から別れた後、最後を迎えるための準備をしようと世界樹へ戻ったわ。
実際に枯れると言ってもまだしばらく先の話で、時間はまだ何年かあるはずだったの。
でも、突然世界樹が鳴動して枯れ始めたわ。
そして世界樹のあった空間が壊れ始めて私は暗闇に放り出されたの。
でも私に何か糸のような物が繋がっていて、そちらに流されるような感覚があったわね。
そして、気が付いたらこの庭の若木の前にいたと言う事よ。」
それを聞いた精霊王がある事に気付いた。
「世界樹の崩壊が始まったのが君が返ってすぐなら、もしかしたら私がここの世界樹の種を芽吹かせてすぐかもしれない。」
精霊王は世界樹を見ながら答えた。
「それにあの世界樹にはおかしな点がある。」
その言葉に全員が世界樹を見つめる。
しかし世界樹の若木など誰も見た事がない。
何処がおかしいのか、ここにいる二人以外は分からなかった。
そして、それが分かる世界樹の精霊が声を上げた。
「あ、そうね。あの世界樹、何であんなに大きくなってるの?」
その言葉を聞いて精霊王も頷きながら答えた。
「そうなんだ。普通なら5センチくらいで成長が止まるはずなんだよ。でもどう見てもあの世界樹は3メートルを超えてるよね。」
そう言って首をかしげながら腕を組んで悩む。
そして悩んでいると風子が二人へと問いかけた。
「あの、世界樹は何を栄養にして成長するのですか?」
それを聞いて世界樹の精霊が思いついた様に答える。
「そうよ、あの料理が関係してるんじゃない。」
その言葉を聞いて精霊王も気づいたようで先ほどの料理があったテーブルを見る。
「そうだよ、世界樹が成長に必要なのは大地を流れる魔力と四大精霊の魔力。それと大気中にある魔力だから可能性はある。」
そして二人はある結論を出したようだ。
「まず、みんながさっきの料理を食べて、みんなから膨大な魔力があふれてこの家の敷地内を満たす。
そして、世界樹の精霊はここの野菜を食べた事でこの地に縁が出来てパスがつながる。
その後で世界樹の芽吹かしたことであちらの弱った世界樹よりもこちらの世界樹の方との繋がりが強くなって彼女を引っ張って来ちゃったんだよ。
世界樹の精霊がいなくなると世界樹は枯れてしまうから突然枯れてしまった事にも説明が付く。」
精霊王は納得した顔で首を縦に何度も降っている。
「それに、あの料理を食べることで四大精霊も力が増したのが関係してると思うわ。でも、もう一押し必要よね。ここまでの事をしようと思ったら生贄とか必要だと思うのよ。」
そうだね生贄になりそうな物は無かったし、こちらのメンバーはみんな無事だしね。
そこまで聞いて今度はアクアが手をあげる。
「そう言えば、先日こちらに攻め込んできた者がおりました。彼らが丁度埋まっているのは世界樹があるあたりだったと思います。」
「「それだ」」
それを聞いて二人は声をそろえて叫んだ。
「人数も60人くらいはいましたのでそれだけいれば十分なのでは?」
「そうだね。それだけいれば生贄には十分だよ。」
「それにしても、これだけの条件がそろうとホントに奇跡ね。」
世界樹の精霊は庭の世界樹を見ながら呟く。
消滅を覚悟していたのに結果を見れば前の生よりも楽しい日々になりそうな事に心が震える。
そして、彼女の目には自然と涙が浮かんだ。
話が落ち着いたところでサトルが二人へと話しかけた。
「ところで二人には名前はないのですか?」
サトルは誰も一度として名前を言わない事に疑問を感じての問である。
「そうだね。私たちは基本的に同じ存在がいない。存在もほとんど知られていないから名前が必要ないからね。」
精霊王は苦笑しながら世界樹の精霊に目を向ける。
「そうね。名前がなくても億年単位で困ったことがないから気にしたことなかったわ。」
そう言って頬に手を当てながら困った顔をする。
「でも、ここで生活するならきっと必要ですよ。」
そう言ってサトルは周りのメンバーを見る。
皆、頷いたり言葉で伝えたりなどしているが同じ意見のようだ。
「それならサトルが名前を付けてよ。自分で自分の名前を付けるのはなんだか恥ずかしいからね。」
精霊王は笑顔でそう答えて世界樹の精霊に視線を向ける。
「私の名前もお願いしますね。」
そう言ってワクワクした目をサトルへと向ける。
サトルは腕を組んでしばし悩む。
そして精霊王に向いて名前を告げる
「あなたの名前は飛鳥でどうですか?」
それを聞いて精霊王は腕を組んで考えるそぶりをした後に頷いた。
「それでいいわ。ありがとう。」
そして、次は世界樹の精霊を見て名前を告げる。
「あなたの名前は弥生ではどうでしょうか?」
「私もそれでいいわ。」
彼女は迷う事無く即答した。
「それでは飛鳥さん、弥生さん、これからよろしくお願いします。」
そう言って他のメンバーも一緒に頭を下げた。
そして、飛鳥は思い出したように四大精霊達に顔を向けた。
「言うの忘れてたわ。この世界樹がここにある間は日本位の範囲なら自由に出歩けるわよ。」
飛鳥はニコニコしながら重大事項を彼女たちに告げた。
「何でそんな大事な事、ポンと言うんですか。かなり大事な事ですよ。」
ウィンディーネは飛鳥の肩を掴み前後に揺らしながら叫ぶ。
「言い忘れてたんだよ。それに私達からすれば数百年くらいアッと言う間だからあなた達も今の内に楽しむといいよ。」
飛鳥はカクカクされながら答えているがとても楽しそうに笑っている。
「せっかく体も作ったのなら子供でも作ってみてもいいしね。」
それを聞いて龍斗やサトル達は驚愕して4人を見る。
「その体って子供まで産めるのですか?」
サトルは驚いた顔のまま彼女たちに問いかけた。
「・・・秘密にしてようかと思ってたけど実は可能なの。」
ウィンディーネが恥ずかしそうにサトルへと告げる。
「でも私達って恋愛経験ないからよくわからないわね。」
シルフはあまり気にしてなさそうだ。
流石、花より団子の精霊様である。
「私はあのフィギュアの作者とならいい。」
それを聞いて飛鳥の額から汗が流れる。
(その人はきっと目の前にいますよ。)
「僕は今は興味がないかな。」
「みんなそれぞれなんだね。でもサラマンダーは優しいから、きっと相手を探したらすぐに見つかるよ。」
サトルがそう話しかけるとサラマンダーはサトルをじっと見つめた後、視線を外す。
「それで、町の案内が必要な人はいるのかな?」
「私は風子にお願いするつもりよ。この子に食べ歩きをさせていたから色々なお店を知ってるの。」
シルフには眷属の風子がいるから大丈夫なようだ。
「私は趣味がインドアだから今のところは大丈夫。でも時々山とか歩くと思うわ。」
そう言ってある一方を見つめる。
「迷ったりしませんか?」
「大丈夫よ。ここの位置は感じる事が出来るから、道に迷っても帰ることは可能よ。」
そう言って苦笑いを浮かべる。
「僕は気が向いた人について行くよ。」
そう言ってサトルをチラッと見る。
「私はサトルに街を案内してもらいたいわ。」
それを聞いた何人かが視線を向ける。
ウィンディーネは少し顔を赤くしながらサトルに告げた。
「その時は案内しますよ。」
サトルはあまり気にせず安請け合いしてしまい、密かに女性陣から白い目で見られる。
更にその陰では男性陣が二人ほど笑いをこらえていた。
そして、後ろで女性陣が集まってヒソヒソしている事に気づかないサトルは飛鳥にも問いかける。
「飛鳥さんはどうするのですか?」
「私は世界樹を護る役目があるから今は動けないわ。今の世界樹はとても弱いの。だからもしもの時に備えてここにいないといけないのよ。」
そう言って彼女は笑顔で弥生を見る。
「ここには暇つぶしが沢山あるから大丈夫よ。それに、庭に畑でも作ってればいい暇つぶしになるわ。」
「時間があれば俺や風子も手伝いますよ。」
そして全員の行動方針を聞いたところで残った時間をどうするか考えていると寅が意見を述べる。
「実は野菜が足りない。」
その一言はここにいる全ての存在の視線を集めた。
「実は、今日収穫した野菜は全部食べてしまって何も残っていないのだ。」
そして全員一斉に収穫するのに使用した籠を見る。
そこには野菜がない。
続いて一斉に外の畑を見る。
そこにも野菜がない。
すると全員がこの世の終わりのような顔に一斉になった。
そのシンクロ具合に野菜がない事を告げた寅はドン引きする。
「だから、もし時間があるなら畑を耕し・・・」
{ドタドタドタドタ}
全員が一斉に畑へと向かい鍬を振り始めた。
特にシルフと風子の勢いが天元突破しそうな勢いである。
さらに、その横には新たな畑が3面ほど作られ、ノームの力により新たな野菜の種が作り出される。
作り出す前にシルフが寅へとアドバイスを聞きに走り、寅の手を胸に抱いてノームの所まで来る一面もあった。
しかし、この時、畑を耕した者達は気づいていなかった。
どんなに頑張っても収穫は明後日である事に。
それに気づいた時、彼らは膝を折って地面に手を突いた。
そこで寅が元気づけるために声をかけた。
「材料はないがそれまで俺が腕を振るうから気を落とすな。」
それを聞いたサトル達は立ち上がり寅へとお礼を言う。
しかし、ここで花より団子の精霊が動く。
シルフは寅に抱き着いて大喜びした後頬にキスをした。
寅は固まって動くことが出来ない。
寅は天職で料理人を手に入れた後は、料理一筋なため気が付いた時には結婚適齢期を過ぎていた。
そのため今も独身だがそのせいか女性への免疫が全くなかった。
その姿を見て龍斗と飛鳥の目が光る。
2人は今、獲物を見つけた肉食獣のような目で寅を見ている。
しかし、この二人の事なので悪いことにはならないだろう(きっと)。
そして二人は我が友を得たりという風な顔をして少し離れた所でヒソヒソと話している。
まるで悪代官と越後屋のようだ。
そして、寅は予告通り素晴らしい夕飯を作ってくれた。
サトルは食後にシルフに目を向ける。
すると彼女は寅を方を時々見ては視線をそらしている。
おそらく、落ち着いてから自分の行動を顧みて寅の事を意識しているのだろう。
寅も視線には気付いているがどうすればいいのかが分からないため困っているようだ。
そして、しばらくすると寅は龍斗に。
シルフは飛鳥に連れられて部屋を出て行った。
それを見て今日は疲れたのでお風呂に入り自分の部屋へと向かう。
そして、サトルは今日は色々あったので誰も来ないのかと思い眠りについた。
少しして部屋の扉が開く音でサトルは目を覚ます。
どうやら眠ってからあまり時間は経っていないようだ。
そしてベットに忍び込む者が複数人いる事から今日はみんなで寝る事にしたのだろう。
しかし、サトルは不意に人数を数える。
(ベットに一人、ベットに二人、ベットに三人、ベットに四人、ベットに五人?おかしいな一人多い。)
足りないのは心配だが、多いのは困る。
サトルは手元のリモコンで電気をつけて確認する。
するとそこには色とりどりのネグリジェを着た4人の女性がサトルのベットに忍び込んでいた。
当然四人目はエリザである。
エリザはとうとう、この三人公認になってしまったようだ。
最後の足掻きとしてサトルはエリザに問いかける。
「あの、あなた様は誰ですか?」
「私はこの度全員の賛同を得てあなたの四人目の恋人となりましたエリザです。」
彼女は本当に綺麗な笑顔でサトルへと答える。
「俺の意思は?」
サトルは本当の最後の足掻きを見せる。
「嫌ですか?」
エリザはそう言うと先程迄とは打って変わり今にも泣きだしそうな顔になる。
仕方なくサトルは微笑んで首を横に振った。
サトルも彼女の事が嫌いではない。
どちらかと言えば彼女を知れば知るほど他の三人と同じ位に好きになっている。
なので、もう逃げられないと思った今。
サトルはエリザを受け入れることにしたのだ。
サトルはいつも受け身な自分を支えてくれる彼女たちに感謝して電気を消した。
今日は五人でで寝ることにして後は明日考えることにしたのだ。
その時エリザがポツリと呟く。
「ベット買い換えないと定員オーバーになるのも時間の問題ね。近日中に買い替えないと」
それを聞いたサトルは眠りかけた頭の中で思う。
(これ以上は勘弁してくれ。)
結局その叫びを聞く者はなく、全員同じベットで眠りについたのだった。
読んでいただきありがとうございます。




