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第九十三話 家庭菜園 ③

次の日の朝、サトルが起きると横にいる舞と目が合った。

サトルが寝ぼけていると舞はサトルの鼻をつまむ。


「おはよ。もう少しでご飯の時間よ。」

そう言ってベットから出ると身嗜みを整えて部屋を出て行った。


そして、少しすると扉がノックされて風子が朝食が出来た事を伝えにけてくれた。


それを聞いてサトルも支度をすると食堂に向かう。


「おはようございます。」

部屋に入ると今日は全員揃っているようだ。

珍しくウィンディーネも下りてきている。

「たまには一緒に食事もいいと思ってね。」

ウィンディーネは少し恥ずかしそうにサトルに告げた。

「そうですね。皆で食べるご飯は美味しいですよ。」

そう言ってサトルは微笑して答える。

そして、次にサラマンダーへと話しかけた。

「珍しいね。今日はどうしたのですか?」

「野菜の育ち具合が気になってね。しばらくは毎日顔を出させてもらうよ。」

彼女はそう言って庭の方に顔を向けた。

「まあ、部屋もあるので気楽にどうぞ。それと、南さんと一緒に行ったサンとユエの事は何か知っていますか?」

あの二匹は今もノームとサラマンダーのそれぞれの眷属である。

家を出たが少し心配もあり、何か知っていないかサトルは聞いてみた。

「あの子達なら、南を守って今も修行中だよ。なんだか男性が一人付いて来てるみたいだけど四人で上手くやってるみたい。」

「そうですか。ありがとうございます。きっと誰かとパーティーを組んだんですね。」

そう話しているとサトルの両親である輝と栞がサトルへと声をかける。


「サトル、南さんなら今は秋山さんとパーティーを組んでいるぞ。」

「彼は戦闘慣れしてるから安心よ。」


それを聞いてサトルは誰か分からず少し困っていると舞が教えてくれた。


「あの緊急依頼を発行してくれた支部長です。私の元上司の。」

「ああ、あの人ですか。思い出しました。確か社員旅行にも来てましたね。」

「はい。ただあの人も独身なのでもしかしたら龍斗さんの差し金かも。」

彼女は龍斗の今までの行いを思い出しながら少し苦笑いを浮かべる。

実は龍斗のこういう策略は会社内でかなり有名だったりする。

しかし、今まで出会いがなかった者同士を上手に紹介してくれているため社内での評判はいい。

それをみんな知っているため、今の話を聞いたメンバーは揃って笑ったり苦笑したりしている。


「それなら二人が上手くいくように応援だけはしておこうかな。」

話をしている間にアクアと風子が食事の用意をしてくれた。

皆でいただきますをして食事を始める。

すると今度は風子がサトルへと話しかけてきた。


「サトルさん、やっぱりあの野菜の成長はとても早いので、今日にもナスは支柱での固定がいりそうです。」

そう言って窓からナスの植えられている方へ視線を向ける。

サトルも同じように視線を窓の外へと向けた。

そこには既に背丈が60センチを超えたナスが葉を広げて太陽の光を浴びていた。


「早ければ明日にも実を付けそうですね。」

風子は収穫が楽しみなのか笑顔で答える。

なんだかウキウキしているみたいでいつもよりも元気に見える。

初めて会った時はとても辛そうな少女の霊だったが今はとても明るくて逆に周りへ元気を分けてくれる。

「そんなに早いんだね。それなら今日の作業も手伝うよ。」

「それほど大した事はしませんがお願いします。」


そして食事を取り終えて二人はさっそくナスの所へと向かう。

そして他の野菜たちを確認すると同じように明日には収穫出来そうな物達ばかりであった。


「これなら全部、明日には収穫できそうだね。」

「そうですね。でも思っていたよりも多く収穫できそうです。どうしましょうか?」

風子は少し困り顔でサトルへと問いかける。

「そうだね。食材だから寅さんに感想を聞いてみようか?」

「それは良いですね。明日にでも招待してみましょう。」

風子は前回の料理の味を思い出したのか満面の笑顔で喜んだ。


その後サトルは支柱にナスの苗を固定して家へと入り龍斗へと連絡を入れた。


「どうしたのだサトル?」

サトルは精霊たちの勧めで家庭菜園を始めた事を龍斗に説明した。

「そうか。それなら明日俺たちも一緒にお邪魔することにするがいいか?」

「どうぞ来てください。実は初めて作ったのですが思いのほか収穫量が多くて配ろうと思っていたのです。」

「そうか、それでは寅さんにはこちらから連絡を入れておく。彼の事だから大丈夫だろう。」

「それではお願いします。」


そして電話を切って居間へと向かう。

そこでは他のメンバーが食後の団らんをしていたので明日の事を伝えておいた。


「それなら明日のために一部屋、準備がいるかもしれませんね」

アクアは何やら予言めいたことを告げて部屋を出て行った。


「誰か泊まる人がいるのかな?」

サトルはアクアが出て行った扉を見ながら疑問を口にする。

しかし、誰もそれに答える事は出来なかった。

そして、昼になりご飯を食べ終えた頃、一本の電話がかかってきた。


それは知らない電話番号だったが一応出てみることにした。

「おお、よかったこちらは寅と言う者ですがそちらにサトルさんはいますか?」

それは明日来客予定の寅さんからの電話であった。

「ああ、寅さん俺ですよ。どうしましたか?」

サトルは突然の電話に驚いたが要件を問いかけた。

「いやな、龍斗さんから明日の事を聞いてな。それでよければ今からそちらに向かいたいのだが構わないか?」

「それは構いませんよ。でも野菜の収穫は明日からですからまだ野菜はありませんよ。」

材料がなくてガッカリさせたくないと思ったサトルは念のために現状を伝えた。

「それは俺も知っている。それで頼みがあってな。何品かその野菜で料理を作らせてもらいたいのだ。」

その言葉を寅が電話で伝えるとシルフが突然立ち上がり声を上げた。

「すぐに来ていただきましょう。」


それを聞いてサトルはシルフを見ながら苦笑した。

彼女にとって、このぐらいの距離は関係なく耳に届くようだ。


「シルフ様は大賛成のようなのでお願いできますか?」

「分かった。今から向かう。いろいろ荷物があるが大丈夫か?」

「驚くことにアクアがすでに部屋を一つ準備をしています。大丈夫ですよ。」

「そうか、感謝する。それでは後で会おう。」

そう言って電話は切れた。


そしてサトルは予定の変更を伝え、アクアには寅が今日来ることを伝えに行った。


「今日、寅さんが家に来るそうだよ。この部屋を使ってもらう事にしたけどいい?」

「はい。それで構いません。それと、今後の事も考えないといけませんね。」

再びアクアは予言めいたことを言って、準備が終わった部屋から出て何処かへと向かっていった。


サトルは再びのアクアの予言に頭の上に?を浮かべて考えるが思い当たることが無かったので仕方なく自室に戻ることにした。


しばらくすると玄関の呼び鈴が鳴り寅の来訪を知らせる。

サトルは玄関でアクアや風子と共に寅を迎えた。


「すまないな。急に来てしまって。」

寅はまずは急な来訪に頭を下げた。

「いえ、構いませんよ。まずは荷物を部屋に置いて居間で話しませんか。」

サトルは風子に部屋への案内をお願いして居間へと向かう。

そして、少しして風子と一緒に寅は居間へと顔を出した。


席に座るとすぐにアクアがお茶を出してくれる。

それで一息つくと寅はサトルへと話しかけた。


「実は今、料理の修行をしているのだが食べてくれる相手がいなくてなかなか進まないのだ。」

寅はそう言うと困った顔をして風子を見た。

「それでこの家で明日、修行の一環として料理を作らせてもらえないかと思って電話したんだ。」

「そうでしたか。それならシルフ様も賛成されてましたからお願いします。」

サトルは先ほどのシルフの顔を思い出し快く了承した。

「助かるよ。ここでならいくら作っても食べてくれる相手がいるから作り甲斐がある。」

寅は風子を見て微笑む。

いくら作っても瞬く間に食べていく風子の姿を思い出しているのだ。

そして悟は寅の荷物について説明を求めた。


「それで、荷物とは何だったのですか?」


「実は魔力の多く籠った食材はとても美味い。しかし普通の調味料だと味が負けて美味しく作れないのだ。」


そう言うと寅はいくつもの調味料を取り出し机を埋めていく。

見ただけでも醤油や塩だけでも10種類ずつはありそうだ。


「たしかにこれなら大荷物になりますね。」

サトルはその予想外の調味料の多さに驚きの表情を向ける。


「まあ、ホントはもっとあるんだが今はこれ位だな。」

「いつもこんなに持ち歩いているのですか?」

「?ああ、そうだな。いつ要るようになるか分からないからな。この間のドワーフの時のようにな。それに、土にいる時の野菜も見ておきたいから今日から来させてもらったんだ。」

そう言って寅は嬉しそうに笑った。

彼はホントに料理が好きなのだろう。


そしてこの日、寅はアクアと共に厨房に入り明日の準備を始めた。

アクアがついて行ったのは寅に料理を習うためのようだ。

彼女の料理はハッキリ言って美味い。

しかし、魔力を含んだ食材は調理の難易度が上がるためベテランの寅に習うようだ。


そして夜になり食卓にはいつもと違う雰囲気の料理が並ぶ。


今日はアクアと寅が協力して作ってくれたらしく、和風な料理が多くある。

大根の煮つけや肉じゃがほうれん草の和え物にアユの塩焼きなどだ。


そして食卓の中央には他とは存在感の違う皿がある。

そのお皿には大根と人参の浅漬けが盛られていた。


「これはそこの人参と大根が十分食べれる大きさになっていたから風子に頼んで少し貰った物を漬けた物だ。」


それを聞いて真っ先に箸を伸ばしたのはシルフだ。

まさに電光石火のごとく目を血走らせて漬物を箸で掴み口へと運ぶ。

ちなみに四人の精霊の内、箸が一番うまいのはシルフである。

彼女は口へ漬物を入れた途端、以前の俺たちと同じように〇王へとなり口から光を放つ。


(ブレスじゃなくてよかった。)


そんな心配をよそにシルフは感動をまさに噛みしめてご飯を頬張っていた。

サトル達も警戒しながら漬物を食べてその美味さに感動を感じる。

そしてみんなで料理を食べ進めていく時にサトルは疑問に思って寅へと問いかけた。


「こんなに美味しいのにまだ本調子ではないのですか?」

その質問に一瞬シルフの耳が動く。

「そうだな、野菜とかだとなかなか差が出ないが微妙な所で納得できていない。

感覚的には説明書を見ながら作業をしている感じだな。」

そう言って寅は自分の手を見つめる。

「感覚が戻れば目をつむっていてもこれ位の味は出せるようになる。」

そう言って苦笑して答えた。


そして食事を終えてサトル達は部屋へと戻る。

今日来たのは彩さんで二人は一緒に布団に入り話をしていた。


「明日のご飯が楽しみですね。」

そう言って彩は微笑む。

「そうだね。」

そこでサトルは初めて彩へ今回の家庭菜園の目的を伝えた。

それを聞いて彩は驚くがすぐに笑顔になる。

「ありがとうございます。きっとこの子達も喜びます。」

彩はサトルの胸に額を付けて優しい声でお礼を言った。

そして二人は愛し合って眠りについた。

読んでいただきありがとうございます。

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