第八十八話 ドワーフ救出
龍斗達はサトルと別れた後、屋敷へ走っていた。
周りの風景が高速道路のように背後へと流れていく。
龍斗は屋敷が近づいて来たのを確認すると屋敷から死角になる場所を探し一旦停止した。
そして龍斗は銀二へと声をかける。
「銀二、ここからの誘導は任せたぞ。」
「任せろ。」
そこで龍斗は少し下がり銀二が先頭となり屋敷の壁へと近づいて行った。
「龍斗さん、この壁の向こうに地下への階段がある。」
「わかった。今道を作ろう。」
そう言って龍斗は剣を抜きスキル{万物切断}を発動し音もなく壁を切り取った。
壁はゆっくりと手前へズレていき地面に落ち穴が開く。
それが倒れて音がしないように輝が壁を受け止め穴の横へと立てかけた。
「ここからは俺と銀二で向かう。他のメンバーはここで待機し退路を確保してくれ。」
龍斗は周りに声をかけて穴へと入っていく。
通路には等間隔で明かりが付いているため、龍斗と銀二は気づかれないように、慎重に階段を下りていく。
そして、2人は地下へと到着した。
「銀二、どの部屋だ。」
「この通路を進んで一番奥の部屋だ。」
それを聞いて龍斗は向かおうとする。
「・・・待ってくれ。部屋の前に見張りがいる。」
「なに!仕方ない。始末してドワーフを救出するしかないか。」
そう言って龍斗は剣を抜いた。
そして、龍斗は一気に走り出す。
すると扉の前に男が一人立っており龍斗はその男を躊躇することなく一撃で切り捨てた。
しかしその時、屋敷中に警報が鳴り響いた。
龍斗はとっさに男の服を力任せに開く。
すると、男の胸には機械が装着されておりそちらも「ピーピー」と音が鳴っている。
どうやら心臓が止まると同時に警報が鳴るように仕掛けがされていたようだ。
「くそ、やられた。銀二、俺は時間を稼ぐ。ドワーフを連れて脱出してくれ。」
「わかった。そちらは任せる」
互いに声をかけあい銀二はドワーフのもとへ、龍斗は来た道を戻って階段を上る。そして龍斗は美雪達に見つかったことを伝え戦闘準備をさせる。
現在は屋敷中から慌ただしい声が聞こえ、こちらに近づいて来る足音や声があちらこちらから聞こえる。
龍斗達はその声に耳を澄ました
「見張りがやられた、ドワーフの所へ急げ、侵入者だ」
「屋敷を包囲しろ、侵入者を生かして返すな。」
「戦闘員に秘薬を持たせろ。」
そして龍斗たちは敵に発見され取り囲まれる。
「貴様ら日本人だなこんな所で何をしていた。」
先頭に立つ男が龍斗達へ問いかけた。
「言わないと分からないか。」
龍斗たちは戦闘準備を整え男を見据えた。
「そうか、ドワーフの件がバレたか。
かなり慎重に動いたのでバレるのはもうしばらく先だと思っていたがな。」
「物騒な友人が教えてくれてな。」
龍斗は精霊の事は伏せ答えをはぐらかす。
「何処からの情報かは気になるが、貴様らには死んでもらう。」
そう言って攻撃の合図を出すために右手を上げる。
「一応言っておくが手を出さないのなら今回は見逃してやってもいいぞ。」
龍斗は忠告の後に不適に笑う。
「ははは、何を冗談を言っているんだ。この人数を見てもそのはったりが言えるとは。
よほどの大物かイカレだな。」
そう言って男は背後に集まってきた仲間を指して自らの優位性を主張する。
「おお、わかるか。俺たちは大物だ。」
龍斗は相手を油断させるためワザとおどけた態度を取った。
その時、龍斗の後ろの穴から銀二とドワーフが現れる。
「無事戻ってこれたようだな。それでは港へ向かうか。」
「港との連絡が付かないがそれもお前たちか?」
「ああ、俺の仲間たちが制圧しているはずだ。」
その時、港から眩い光と衝撃がこちらへ伝わってきた。
そして、龍斗たちは港の方向から大きな魔力を感じ取る。
「これはなんだ?報告しろ」
男はその現象に警戒し周りへ確認の声をかける。
「隊長。もしや、暴走を起こしたのでは。」
隊長と呼ばれた男に周りにいた一人が怯えた顔で意見した。
「暴走だと。くそ、あれほど過剰摂取には気を付けろと言ったというのに。
貴様、先ほどの見逃すと言ったのはホントだろうな。」
突然、掌を返したように龍斗へと男は確認する。
「今回はな。」
その言葉を聞いた男は即座に撤退命令を出した。
「全軍撤退。急いで山の裏手の船に乗り込め。脱出するぞ。」
それを聞いた敵は一斉に行動を開始し撤退し始めた。
龍斗たちはそれを見ていたが、それほど時間を置かずに目の前から敵はいなくなった。
「俺達の戦闘は回避されたがサトル達が心配だ急いで戻るぞ。」
しかし、ドワーフは足が遅いため港に着くまでに時間がかかってしまう。
そして移動中に先ほどよりも大きな光と振動が龍斗達のもとへと届いた。
その後、龍斗達の感じていた魔力は消え失せる。
「なかなかの振動だな。サトル達は大丈夫だろうか?」
「まあ、決着は付いたみたいだから大丈夫だろう。」
そして、港にたどり着き、遠目に全員無事であることを確認すると龍斗達は歩いて船へと近づいた。
そして全員を乗船させて出港する。
出港してすぐに龍斗はサトルに確認を始めた。
「サトル、強敵が発生したようだが何があった。」
「敵が紅蓮さんから報告のあった秘薬を大量に飲み、龍人ではなく5メートル位のドラゴンのようなモンスターに変化しました。」
「そうか、それで、一度目の閃光と振動は?」
「それはおそらくブレスですね。何とか防ぎ切りましたがギリギリでした。」
そう言ってサトルは苦笑する。
「それで、二度目の閃光と振動が討伐か?」
「そうです。喉の魔力袋というものを切ってしまい、跡形もなく消し飛んでしまいました。」
「しかし、よくドラゴンを倒せたな。」
「そこは寅さんが助けてくれました。」
サトルはそう言って寅に視線を向ける。
それに気づいた寅は軽く手を振って答えた。
「そうか、寅さんの予感が当たった形か。」
そう言って龍斗も手を上げて返す。
「はい、彼がスキルで鱗を剥がしてくれなければもっと苦戦したでしょうね。」
「それなら、後で礼をしておかないとな。」
「それと、敵がいた建物を調べてこれを発見しました。」
サトルはアイテムボックスから龍の秘薬を出し龍斗へ渡す。
「これは?」
龍斗は薬瓶を手に取りサトルへと問いかける。
「敵が龍人になる時に飲む秘薬のようです。
ホロに鑑定してもたったところ、アイテム名は龍の秘薬。
使用材料の一つが龍の血だそうです。」
それを聞いて龍斗は驚きの表情へ変わる。
龍斗は今回の行動では、このアイテムに遭遇する機会がなかったので諦めていたからだ。
龍斗ははそれを受け取ると近くのスタッフに渡し、研究機関での調査を指示した。
「ということは、現れたドラゴンは?」
「はい。あの秘薬を大量に飲んだ人間がドラゴンに変化しました。」
「そうか、俺が相手にした奴等の口ぶりからして、そうなる事は分かっていたようだ。しかし、秘薬を手に入れられたことは大きい。よくやったなサトル。」
そう言って龍斗はサトルの肩を叩く。
そして、二人が話しているとそこに一人の男が近づいてきた。
「今回の件は感謝する。」
そう言ってドワーフは頭を下げた。
「いや、今回は我々人間が悪かったんだ。それにこちらはあなた方を守らなければならないのに申し訳ない。」
そう言って龍斗も頭を下げた
そして、互いに頭を上げてこれからについて話し出した。
「これからあなたをドワーフ達のいる「門」までお送りします。その後は政府の指示に従ってください。」
「手間をかけるがお願いする。
それと、時間があるなら里によって行かないか。
少し気になることがある。」
ドワーフはそういうと周りの者が持つ武器を見た。
「俺たちの武器に何か?」
龍斗は視線に気づき問いかける。
「俺はまだ未熟者だから確証がないが、いくつかの武器から嫌な気配がする。
できれば里の上級スミス達に見てもらったほうがいい。」
「そうか、これもかなり切ったからな。」
それを聞いてサトルは首をかしげる。
それを見て龍斗は説明を始める。
「武器は使っていると穢れが溜まる事がある。恐らくその事を言っているんだろう。
強い武器ほど壊れないからな。普通の武器だとそこまで行く前に壊れる。」
それを聞いてサトルは自分の大剣を見る。
しかし、見た目は何も変わらない。
刃は魔力により修復され新品のような輝きを放っている。
「穢れがたまるとどうなるのですか?」
「そうだな、呪いの武器になることが多い。そして、そうなると元には戻らん。
だからそれまでに、いい武器ほどドワーフのメンテナンスを受けるんだ。」
「それは初めて知りました。」
「サトルはダンジョンに潜り始めて日が浅い、仕方がない事だ。
そこは俺がしっかり注意するべきだったが、最近何かと忙しかったからな。」
「そうですね。短期間でいろいろありました。」
サトルは過去を振り返るように遠い目をした。
「まあ、これが終わったら少しは休めるだろう。もう少し頑張ってくれ。」
それを聞いてサトルは苦笑いをして頷く。
「そうですね。」
そして、一行はドワーフの里へと向かう。
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