第八十四話 捜索と避難
龍斗たちは総理達をホテルに残して車に乗り込む。
まずはユエの先導で車を走らせた。
最優先としてドワーフの居場所を特定しなければならない。
そして車は走り続け町から離れていく。
やはり街中にはいないようだ。
車はユエの指示す先へと向かっていく。
海辺の道を通り一行は那覇空港へとやって来た。
「ユエ、もしかしてこの空港か?」
(フルフル)
ユエは首を左右に振り、さらにその先である事を伝える。
それを見て龍斗は総理に連絡を入れ、ドワーフは沖縄本島にはいない事を伝える。
続いてリンダに連絡を入れ船の手配を命じた。
「今、船を那覇港に準備している。まずはそこで船に乗り海に出るぞ。」
そして、一行は港へと向かった。
そこには大小の二隻の船が準備されていた。
小さい船にはユエと銀二、偵察用の鳥達が乗り込み、残りの大きめの船に残りのメンバーが乗り込んだ。
ユエと銀二の船は先行して、まずは場所の特定をするようだ。
銀二たちは船に乗り銀二からの連絡を待つ。
そして先行した銀二たちは。
「ユエ、あの島か?」
(ええ、あそこから気配がするわ。)
「そうか。お前たち頼むぞ。」
銀二たちは沖合から島を特定し鳥による偵察に切り替えた。
鳥たちは島に情報を得るために飛びたって行く。
銀二はそれを見送り龍斗たちに島の特定が完了したことを伝える。
そして銀二は島を船で周回し始めた。
それほど大きな島ではないため三角法で更なる場所の特定を始める。
そして船で島の周りを一蹴したとき場所の特定にも成功した。
手元の地図には何本もの線が引かれ、それは山の頂上にある屋敷を示していた。
さらに場所の特定ができたことも龍斗に伝える。
すると龍斗から今からそちらに向かう事を伝えられた。
「皆、今場所の特定が終了した。これから出港し銀二たちに合流する。」
龍斗たちは銀二たちと合流するために船を走らせる。
そしてその時、無線に総理から連絡が届いた。
「龍斗、先ほど連絡があった場所に間違いはないか?」
「ああ、銀二が慎重に特定してくれた場所だ。間違いはない。」
「そうか。実はその物件には政府として心当たりがある。」
それを聞いて龍斗はこの事件犯人への警戒を強める。
「聞かせて貰おう。」
「そこはアメリカ在住の日系人が所有している。
しかしその人物はあの拉致国との繋がりのあると見て政府がマークしていた。
あの国にはダンジョンはあるがドワーフがいない。
そのため技術を手に入れるために、ドワーフを誘拐したものと私は推測している。」
それを聞いたとたんに龍斗の顔は歪み内心には怒りが沸いてくる。
「分かった、いい情報を貰った。感謝する。今回の報酬は安めにしておく。」
しかし、そんな内面を総理に見せる事無く龍斗は冗談のような事を言って無線を切った。
そしてすぐに次の相手と連絡を取る。
「リンダ、すぐに我が社で保護している全獣人と社員たちをサトルの家に避難させろ。
紅蓮にも連絡をして協力を仰げ。
今あちらの守りは薄い。
もしもの可能性があるから急いで対応してくれ。」
そして、龍斗はこれが陽動の場合を考慮していち早く獣人達の避難を指示した。
「畏まりました。」
龍斗は無線を置きサトル達の所に戻る。
そして、今の情報をサトル達に伝え、今回の事件が他国の人間の仕業である可能性があると警戒を強めた。
その後、アクアも龍斗たちは銀二と合流を果たす。
「銀二。相手の様子はどうだ?」
「それなんだが、何やら様子がおかしい。
もしかしたら、相手は日本人ではないかもしれない。」
銀二はまだこちらが得ている情報を知らない。
そのためその予想の理由を龍斗は聞いた。
「鳥たちを通して相手の動きを確認した。
見張りが何人か屋敷の周りを警戒している。
しかし、それは軍隊の様に統率されていて通常の日本人ではありえない。
最低限、何らかの訓練を受けたものが警備をしている。」
「そうか。実は先ほど総理から、あの屋敷の情報を得ることが出来た。
それによるとあの屋敷には、あの拉致国が関わっている可能性が高い。
それで、もしもに備え、我が社の者たちや獣人をサトルの家に避難させた。」
「そうか。俺もその方が安心できる。」
疑問が晴れた事と妻の華音の心配が減り銀二は表情が僅かにゆるむ。
「それで、突入はすぐ行けそうか?」
「いや、高台に屋敷があるからこの船では目立つ。
夜に船で島に近づき、そこから泳いで島に向かうのが一番だろう。」
だがすぐに表情を引き締めて龍斗の質問に答える。
「分かった、それでは夜まで少し休もう。
昨日は徹夜の捜索で皆休んでいない。
次、何時休めるか分らんから今のうちに休んでおこう。」
そして、見張りを決めようとした時ユエが前に出た。
「龍斗、ユエが見張りをしてくれるそうだ。
こいつならドワーフが移動し始めたらわかる。」
ありがたく休ませてもらおう。」
「そうか、それではユエ任せたぞ。」
そう言って龍斗はユエの頭を撫でた。
そして、他のメンバーは船の船室へ入り夕方まで睡眠をとった。
その頃本社では
黒田が全員を集めて避難の準備をしていた。
「今社長から避難の指示が出た。避難場所は予定通りサトルの家になる。みんな落ち着いて行動してくれ。」
今回は日本存亡に関わることだった為、全員社内待機をしていた。
食料は当然準備され、もしもの時のテントやキャンプ用品も揃えられている。
そして時刻は昼過ぎ。
準備も整いサトルの家へ避難を開始しようとした時に外を見ていた澪が黒田へ話しかけた。
「黒田さんちょっといいですか?」
「どうしたんだい?」
澪に呼ばれ黒田は窓のそばまで近付く。
「いえ、あそこで座っている人間に見覚えがあります。」
澪は相手に気付かれないよう、視線だけを軽く向けて黒田へ教える。
「何処で出会ったか覚えてるかい?」
それを見て内面では警戒しながらも表面上は笑顔で澪に問いかける。
「私が組織に囚われていた時に、何度か見た記憶があります。
恐らく、あの国の人間だと思います。」
それを聞いて黒田は表情を変え、渋い顔をする。
「それはまずいね。」
そう言って黒田は戦闘可能なスタッフを集め始めた。
「実は今、澪君が外で見覚えのある人物を目撃した。その相手はあの拉致国の人間である可能性が高い。
今から避難をを開始するが皆、注意してくれ。」
さらに黒田は念のためにリンダに連絡して、ある手配を依頼した。
そして、彼らはバスに乗り込み避難を開始した。
サトルの家はここから約五キロ。
最初の三キロは街中を通るため人も多く襲撃はなかった。
しかし、そこを超えた時、異変が起きた。
バスに黒塗りの車が三台、近づいてきたのだ。
その車は目的地まであと一キロと言う所でこちらへと牙をむいた。
先頭を行くバスに体当たりし、バスを止めてしまう。
それを見て、戦闘が出来る物は外に出て三台の車へ向かった。
「おい、何をするんだ。」
その車に最初に声をかけたのは元自衛隊員の霧島である。
すると、黒塗りの車からは武装した人間が数名下りてきた。
そして霧島に躊躇なく手に持つ銃を向けて発砲した。
しかし警戒していた霧島は瞬時にバスの陰に隠れそれを回避し大声を出した。
「敵襲、戦闘準備。戦えるものは戦闘に加われ。そうでない者はバスで待機だ。」
そして、戦闘は開始された。
相手は銃で武装していることから高レベルの者はいないと推測される。
まず、霧島はスキルで作り出した銃を抜き、敵に照準を定めて発砲した。
その弾は見事に相手の肩を打ち抜き敵を後退させる。
しかし、敵は携帯していたポーションを飲み、すぐに前線へ復帰して来た。
霧島は覚悟を決める。
そう、相手を殺す覚悟を。
今バスには自分の妻も載っているのだ。
彼は島から帰って数日後、妻を病院に連れていき検査を受けていた。
その結果は良好で子供も作れるだろうと言われている。
一度は断念した夢が夢でなくなった為、彼は戸惑うことなく銃口を敵の頭へと向ける。
乾いた音と共に敵の一人の頭は破壊され地面へと倒れる。
敵もまさかこの平和な日本の一般人が、躊躇なく殺しに来るとは思っていなかったようだ。
敵は車の陰に隠れこちらを窺っている。
そして、敵の一人がバスに対して発砲をした。
しかし、このバスは龍斗が準備させたもの。
防弾仕様は当たり前だ。
当然タイヤもパンクしない物を使っている。
そして銃が有効でないと判断すると、敵はバスに対して手榴弾を投げつけた。
それを見た霧島は即座に手榴弾を打ち抜き、バスに届く前に爆発させた。
さらにその爆炎に紛れ彼は敵に接近する。
その間に霧島は銃をハンドガンに変化させた。
残りの相手は五人。
車を回り込み霧島は最初の相手を、手に持つ銃剣で突き刺した。
そして銃で心臓を至近距離で打ち抜く。
その時、銃声は鳴らなかった。
彼はいつもは打ったことを知らせるため、音が出るように銃を作り出していた。
しかし、今はその音が邪魔になるため音がしないように戦っている。
1人死んだことに気づかず敵はまだ動かない。
そして霧島は背中を向ける敵の心臓を更に剣で突き刺した。
その時、残りの敵がこちらに気づき霧島へ発砲する。
霧島はそれを目の前の死体で防ぎながら銃を再度変化させた。
それは連射性の高いマシンガン。
通常ならば魔力消費が高いため使わない種類だ。
そして、密集している敵に躊躇する事なく引き金を引きハチの巣にした。
これで一台の車が片付いた。
他の二台はと言うと。
二台目からも人間が6人降りてきた。
しかし右から降りた敵の3人は淳の影に拘束され、左から降りた残りの3人は海が蒔いた種の植物がスキルにより急成長し拘束した。
そして、哲もスキルを使い敵に接近し、一刀のもとに始末していく。
彼らはすでに守る者のために躊躇しなくなっていた。
それが、敵と確定している相手ならばなおさらである。
これで二台の車は片付いた。
しかし、三台目には他の車とは違い一人だけレベル30の者が乗っていた。
しかし、その彼は悲惨な事となる。
黒田は松がバスから降りる前にある事を吹き込んだ。
「松、もしこのままフレイが攫われた時、どうなるか分かるか。」
黒田は一瞬フレイへ視線を向け松の視線を誘導する。
「今あの国には獣人の供給はない。
彼らはおそらく彼女たちを使い生ませるという行動に出るだろう。
そこに彼女たちの幸せはなくシステムの一部としての人生が待っているだけだ。」
そう言って松を送り出した。
その時の松はすでに鬼化のスキルが発動寸前まで怒りが高まっていた。
車からは一人の男が下りて来る。
そして、彼は日本語で松に話しかけた。
「よう、俺たちの奴隷を返してもらいに来たぜ。」
男は顔に軽い笑みを浮かべながら松へ話しかけた。
「何の事だ。ここにいるのは全員、日本国民だ。」
松はそれを聞くと怒りで肩が震え始める。
「は、何言ってやがる。こいつらは俺らの所有物だ。
それにお前らも何人か獣人を作ってるんだろ。そいつらも貰って行ってやるよ。」
そう言って男は剣を抜松へと構える。
「連れて行ってどうするんだ。」
待つも話ながら剣を抜いた。
そして男は油断からか。
それともともと口が軽いのか目的を喋りだした。
「今俺らには獣人を手に入れる手段がないからな。どうやら上は時間はかかるが繁殖させるみたいだぜ。
まあ、こいつら見た目は良いからな。
存分に楽しませてもらうぜ。
まあ生きてりゃいいから、今後の事を考えて足は切断して、もう逃げられないようにはするだろうけどな。」
「そうか。」
それを聞いて松の怒りは振り切れた。
体は赤く染まり頭には角が生え鬼へと変わる。
それを見た敵の男の顔は引きつった。
松は剣を構える。
松は地面が陥没する程の踏み込みを行い、その男へ接近するとその足を切り落とした。
それと同時に松の腕は折れる。
しかしその傷は瞬く間に回復してもとに戻る。
「ぎゃあああーーなんだ貴様。こんなに強い奴がいるとは聞いてないぞ。」
彼らはスタンピード前の情報しかもっていない。
そして、その時に覚醒した者の情報を持たずに、この攻撃を仕掛けていた。
この敵は今、ここにいるメンバーの中で一番怒らせてはいけない男の怒りに触れたのだ。
それを見た敵の車の運転手は逃亡を開始する。
アクセルを踏み込み全速で走り去ろうとした。
しかし、それを松は許さない。
剣を横なぎに一閃し、車ごと運転手を切り捨てた。
そして足元の男へ無言で近づいていく。
「やめろ、助けてくれ。」
男は戦意を失い松に命乞いをした。
しかし、そこで言ってはいけない事を口にする。
「あんな獣の事なんかもどうでもいい、命を助けてくれたら何でもする。」
松はフレイと結婚を誓ったばかりだ。
敵はその彼女を獣と呼んでしまった。
松は怒りのままに手に持つ剣を振り上げ、そして真直ぐ頭へと振り下ろした。
その威力により男を真っ二つになり、路面に大きな亀裂を作る。
そして剣は砕け散った。
そこで、敵を倒し終わった為にフレイが松に近づいていく。
しかし、そこで一つの銃声が鳴った。
潜んでいた敵がフレイに銃弾を放ったのだ。
それは見事にフレイに命中し、フレイはその場に倒れた。
「ははは、薄汚い獣め。思い知ったか。
これは仲間を殺された報復だ。」
そう言って男は路地裏から顔を出した。
しかし、彼はフレイを見て驚愕する。
撃ち殺したはずのフレイが無傷で起き上がったからだ。
代わりに松は胸から血を流している。
しかしその傷はその後、瞬時に回復した。
しかし、フレイを撃った男の意識はそこで終わった。
松はその男に全力で突進し拳で頭を破壊した。
男は頭を失いその場に倒れる。
そして、フレイは松に近づき笑いかけた。
「ありがと、紅夜さん。私はいつもあなたの愛を感じられて幸せよ。」
そう言ってフレイはその豊満な胸で松を包み込んだ。
松は次第に落ち着き、人の姿に戻る。
そして、一行はバスに乗り込みサトルの家へと向かった。
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