第八話 中級ポーション
サトルは水木のもとにたどり着いた時には戦闘は終わっていた。
「水木さん・・・」
彼女からはいまだにとてつもない殺気がほとばしっていた。
そしてサトルは一度帰ることを決断する。
「水木さん一度帰りましょう」
「・・・・・・・はい」
そして帰りながらも水木さんの殺気は収まらず病院に様子を見に行くこととなった。
水木さんの愛犬は超大型犬と言ってもいいくらいに大きい真っ白なシベリアンハスキーのメスで名前はその色にちなんで「スノー」。
毛はつやつやでとても美しい犬である。
水木さんが受付で面会を求めると医師がやってきて案内してくれた。
周りは水木さんの殺気にあてられ冷や汗をかいている。
そして水木さんがスノーのそばに近づくのスノーは立ち上がり
そして甘噛みをした後に顔をぺろぺろ
さらに犬パンチというトリプルコンボを食らわせた。
そして水木さんはスノーをなでなで。
そのとたんに殺気は収まりいつもの彼女に戻った。
こんな話がある
犬が好きな人は犬を撫でてうれしい。
そして撫でられている犬もうれしい。
それを見た本人もうれしいというまさに幸せの無限ループ。
(いったんはこれで大丈夫かな。)
俺は医師と小声で話す。
「先生スノーは立ってますが大丈夫ですか?」
「驚きですね。なんで立てるんでしょう?」
何やら不穏な言葉を聞いた気がするので聞き返す。
「もしかしてかなりヤバイとか?」
「そうですね。後もって二・三日でしょうか」
「そうですかありがとうございます。」
そしてスノーは5分も立てずにまた深い眠りに入った。
「水木さん、家に帰りたいですか?」
必要な事なので俺は聞いた。
このまま別れればたぶん彼女はダンジョンに一人で向かうだろう。
彼女は答える。
「サトルさん、今すぐダンジョンに行きたいです。」
ならば俺もこたえなければならない。
「なら今から五階層へ向かいましょう。そこは五階層ごとの階層ボスがいるはずです。そいつは高確率で中級以上のポーションをドロップするはずです。」
水木さんの目つきが鋭くなる。
「なら最速で向かいましょう。」
そして俺たちは階層ボスを倒すために五階層に向かう。
道すがら五階層の知識を互いに共有する。
どうやら階層ボスはコボルトソルジャーかコボルトメイジらしい。
メイジならほぼ間違いなく中級以上のポーションをドロップするらしい。
しかし、ソルジャーならばその確率は半分ほど。運の要素が高く一度倒せば一日待たなければ挑戦は出来ない。これは相手が再度現れるのに一日必要だからだ。
今から急いでも二回しか挑戦できない。そのため俺たちは大急ぎで五階層を目指していた。
そして俺たちは上昇したステータスと地図のおかげで五階層への階段は苦労せず探し当てることができた。
そして五階層に降りた俺たちを待っていたのはコボルトソルジャーだった。
軽い舌打ちとともに打ち合わせ通り俺は前衛、水木さんは遊撃を任せる。
彼女には双剣の他に投げナイフを速度を落とさない程度に装備してもらっている。
それをけん制にして俺が切り込むのだ。
相手のサイズは二メートルほど。武器はバスターソードのような鉄の剣を持っていた。
先ほどのような武器破壊は無理そうだ。
それと防具は革鎧のようだ。
これなら俺の剣が当たればダメージを与えられる。
そして戦闘が始まった。
水木さんの投げナイフでけん制してもらい俺が切り込む。
打ち合わせ通りの動き。
そして一本がコボルトソルジャーの腕をかすめた。
コボルトソルジャーはやはりステータスの俊敏が高く俺たちの速度についてきていた。
こちらの攻撃をかわし時に防ぎ、二対一の不利がありながら俺たちに拮抗していた。
そしてその巨体と武器の威力によって俺たちは大きなダメージを与えられぬまま数分の時が流れていた。
そして気づく・・・・
(あれ、こいつ最初よりも遅くなってるような・・・俺が戦闘になれたのかな?)
そしてさらに数分後今度は水木さんの投げナイフがコボルトソルジャーの足に当たる。
(やっぱり動きがぎこちなくなってきている・・・さすがに相手も疲れてきたのかな?)
そして俺はコボルトソルジャーの傷、正確には水木さんが投げナイフで付けた傷を見てある事に気づいた。
(傷が変な色になってきてるね~。紫っぽく?)
そして、さらに数分後ゴブリンソルジャーは体のいたる所に投げナイフを食らい地面に倒れた。
ちなみに大きな傷はない。
ただ体のいたる所が紫に変色している事が確認できる。
そして光の粒子になり消えていった。
・・・俺は水木さんに聞くことにした。
「コレハイッタイ」
「きっとこれのおかげです。」
そう言って水木さんはある液体と説明書を見せてくれた。
そこにはこう書かれていた
{これは猛毒です。食べられません。}
(どうやら水木さんはいつのまにが猛毒を購入し投げナイフを毒投げナイフにしていたようだ・・・)
「水木さん・・・」
「はい、なんですか?」
「次回からは使うときは相談してくださいね」
「・・・はい」
(なんだか返事に時間があったような・・・。)
そしてドロップを確認する。
武器は当然残ったがこれは目的のものではない。そしてそれ以外にポーションらしきものが残っていた。
そして何やら宝石のような物。
それらを手に取る。
しかし鑑定ができないためいったん外に出なければならない大急ぎで外に向かう。
そして鑑定してもらったところ薬は初級ポーションであった。
水木さんの落胆は大きい。
これで明日もう一度五階層で戦わなければならない。
しかもラストチャンス。
そして宝石は魔石だと言われた。
魔石は階層ボスがドロップするアイテムらしい。
それ以外のモンスターでは強力なものならば稀にドロップすると説明を受けた。
使用方法の多くは不明らしく宝石としての価値しかないらしいが。
「でも、一部の探索者と政府は知っているかもしれません。」
鑑定のおじさんはそんなことをいった
「どうしてそう思うのですか?」
「実は四半期ごとに行われる政府主催のオークション。そこで上位探索者が魔石を購入しているらしいんだ。」
「宝石好きではなくてですか?」
「その可能性もあるがその探索者は無駄なことをしないので有名らしく観賞用として魔石を集めているとは考えられないと知り合いから聞いたことがある。」
「それでは、何らかの使用方法があると考えてもいいようですね。」
「そういうことだね。」
そして俺たちは鑑定所をはなれる。
今日はすでに夜も遅い。いったん帰り明日に備えることとなった。
そして翌日、水木さんとダンジョンで待ち合わせをする。
病院はスノーを見せないほうがいいだろうという判断でやめた。
そして時間通りに現れたみずきさんは・・・
背中に阿修羅がいた・・・
どうやら病院に行ってしまったようだ。
「急ぎましょう。」
俺はそうとしか言えない。そして四階層で軽く体を動かし五階層へ。
「そろそろ出現するはずです。」
そして部屋の中心付近でその現象が始まる光の輪ができそこから現れたのは・・・・
コボルトメイジだった。
そして光が収まりコボルトメイジが動き出そうとした瞬間水木さんは全力で接近し双剣による攻撃を加えた。
鬼気迫る表情と速度。
しかしそれは目の前に現れた障壁によって阻まれていた。
コボルトメイジの顔が愉悦にゆがむ。
しかし彼女は一人で戦っているわけではない。
俺は昨日の戦いで得たバスターソードをシールドに叩きつけた。
その瞬間シールドは割れ攻撃が届くようになった。
水木さんはそれを知っていたかのように双剣を走らせる。
その瞬間コボルトメイジの両手、両足、首が飛び最後は胸に二本の双剣が突き刺さる。
コボルトメイジはまともな攻撃ができないまま秒殺された。
そして粒子に変わり消えた後、ドロップ品を残した。
今回は杖とポーションそして魔石だ。
昨日の物と色が違う。
急ぎ鑑定所に向かい鑑定を依頼した・・・。
結果はなんとドロップ率1パーセントほどの上級ポーションであった。
これならば確実に救うことができる。
すぐに病院に行くことにした。
読んでいただきありがとうございます。