第七十話 順調な攻略と急な変化
サトル達は11階層を進んでいた。
運悪く彩に出会ってしまったケルベロスを連れて。
「がう」(主こちらです。)
そう言ってケルベロスは道を先導していく。
出会った別の個体は仲間になったケルベロスが追い払ったり始末している。
俺たちもそれに加わり順調に進んでいた。
しかしもう少しで階段に到着と言う所でそいつは現れた。
「ガウガウガウ」(主、気を付けてください。あいつは強い。)
そう言って彩に警告をする。
そして前方からは一回り大きなケルベロスが現れた。
すると舞さんはその正体を皆に伝える。
「あれはケルベロスリーダーですね。通常の個体よりも強く。ほかの種ではロードに当たります。」
「彩さんどうしますか?」
「声はかけてみます。」
そして、彩はケルベロスリーダーへ語り掛けた。
「そこを通してくれない?」
「ガウガウ」(餌がしゃべるな。耳が汚れる)
リーダーは威嚇の声をあげる。
「そう、通す気はないのね。」
その声を聞いて彩は目を細める。
「ガウガウ」(何度も言わせるな。)
そしてリーダーは体を低くして戦闘態勢に入る。
そこでこちらのケルベロスも会話に加わった。
「ガウガウガウ」(リーダーこの方に逆らうな。素直に言う事を聞くんだ。)
ケルベロスはリーダーの態度を見て急いで止めに入る。
「ガウガウガウ」(腰抜けめ、恥を知れ)
そう言ってリーダーはケルベロスに噛みつき壁にたたきつけた。
そしてそのまま彩にその咢を向け飛び掛かった。
それを見てスノーは間に割り込み盾と剣で二つの首を止めた。
「ガウガウ」(馬鹿め俺の首は3つある)
リーダーは残りの一つでスノーを襲う。
しかしその攻撃は届くことはなかった。
スノーの後ろにいた彩が短剣を抜き、一撃で首を一つ切り落とした。
さらに二つ目の首も落とす。
首が一つになったリーダーはスノーに止めを刺され粒子となり消えた。
そして彩は壁に叩きつけられたケルベロスのもとへ向かう。
「ガ・ウ」(主ご無事で何より。)
ケルベロスは虫の息だ。このままでは消えるのも時間の問題だろう。
そこで彩はある提案を出した。
「あなたはまだ生きたい?」
「ガウガウ」(森を見て見たかった。)
「ガウガウ」(こんな所ではなく)
「そう、その願い、私が叶えてあげる。」
そう言うと彩は魔石を一つ取り出した。
選んでいる暇はないため戦士系の弱い魔石だ。
「{進化}発動」
そして魔石は魔力を吸い瀕死のケルベロスを包んだ。
しかし、今回は瀕死の魔獣と言う事で彩は通常の3倍の魔力を込めた。
繭は安定しそして時間と共に消えていった。
繭が消えた場所には中学生くらいの獣人の女の子が立っておりこちらを見ている。
どうやらあのケルベロスは体はデカいが内面はまだ子供だったようだ。
見た目的には無事進化が終わる。
人の姿の時は首は一つのようだ。
彩はケルベロスに大きめの服を着せながら語り掛けた。
(どう、調子は。)
(主、これはどういうことですか?)
(あなたは今受肉して獣人に成ったのよ。意識してみなさい。頭の中に知識があるでしょ。)
(はい、あります。)
(それで階層も「門」も通れるはずよ。)
(それは本当ですか!?)
(確証はないけどね。外に出たらすぐに銀二と言う人を探しなさい。)
(分かりました主。)
(それと・・・、逃げたらこちらからお仕置きに向かうからね。)
(わ、分かりました主。絶対に逃げません。)
そう言ってまた足が震えている。
そして俺たちはケルベロスと別れ下の階へ降りて行った。
その途中サトルは彩へ話しかけた。
「彩さんケルベロスは大丈夫ですか?」
サトルは後ろを少しだけ振り返る。
「多分大丈夫でしょう。しっかり脅しておきましたし。あの子は死ぬ直前に森が見たいといっていました。あれは本心だと思います。門を出れば望むものが見れますよ。」
そう言って彩は優しく微笑む。
「そうですか。きっと喜びますね。」
それを聞いてサトルも微笑んだ。
「ええ、きっと。それに戻ったら名前を上げないと。」
そして一行は次の階層へ到着した。
到着するとサトルが資料を見ながら説明した
「この階からは2階層グールだね。その下の14階層がスケルトンになってる。」
「うう、臭い。」
ホロは鼻をつまんで唸る。
「まあ、我慢してくれ。」
「うん・・・。」
ちなみにスノーとクロも少し辛そうだ。
そして舞がグールとスケルトンについて補足する。
「グールは動く死体ですね。スピードはないので可能な限り私が始末しますから。突撃は控えてください。接近されたら弱点は頭なのでそこを砕いてください。
そしてスケルトンは動く骨ですね。基本は戦士系のモンスターです。防御力は大したことはありませんがダメージを恐れず攻撃してくるので注意してください。弱点は胸か頭部に赤く光る核があるのでそれを破壊すれば簡単に倒せます。」
そして一行は道を進んでいった。
先ほどの宣言通り舞はグールを一撃で仕留めていく。
舞の武器と、この神殿型のダンジョンと言う条件が重なりグールをまったく寄せ付けない。
地図を見ながら最短距離を進み12・13階層は呆気なく進むことが出来た。
「はあ、匂いが和らぎました。」
「あれはきつかったな。」
「食欲減衰。」
スノー、クロ、ホロの順で思いを述べる。
「帰りもあるけど我慢してくれ」
サトルがそう言うと3人は嫌な顔でこちらを見た。
そして14階層を進んでいく
すると前方から
(ガシャガシャ)
と音をたてながらスケルトンが歩いてきた。
その姿はまさに戦士。
金属の盾と剣を装備し、胸当て、ガントレット、ブーツを装備している。
全て金属製の装備のため倒して回収すれば戦力強化につながるかもしれない。
鑑定師には泣いてもらおう。
スケルトンは目が赤く光っていることからおそらく核は頭にあるようだ。
相手は一体で近づいて来る。
「ここは私から行きます。」
そう言ってスノーが前に出て盾と剣を構えた。
そしてスノーとスケルトンは戦闘を開始した。
スケルトンは素早い足運びでスノーに近づき剣を振り下ろす。
スノーはその攻撃を盾で逸らし剣を振るう。
スケルトンはその攻撃を盾で受け止めた。
しかし攻撃を受けきれずに体制を崩す。
それを見てスノーはすかさず剣をもう一度振るった。
しかしスケルトンはわずかに避けて急所だけを守り、スノーに剣を突きつけた。
スノーはとっさにその攻撃を避ける。
そして距離を置いて相手の状態を確認した。
スケルトンは盾を持つ腕を切り落とされ胸当ても切り裂かれているが平気で剣を構えた。
スノーは決着をつけるために剣を構える。
そしてスケルトンに走り寄り剣を弾き飛ばして頭の核を破壊した。
スノーは戦闘を終えこちらに戻ってくる。
「戦士としてはそれなりと言ったところですね。しかし舞さんの言った通り捨て身の一撃には注意が必要です。」
「ご苦労様。いい参考になったよ。」
サトル達はスノーの戦闘を参考にしてスケルトンと戦った。
サトルは武器の相性がいいため一撃で倒した。
彩とクロはその素早さを生かして急所を一突きにする。
舞は弓矢で核を射抜き、ホロはアンデット系の弱点である炎の魔法で核ごと焼いた。
そして15階層への階段を下りていく。
そして中を覗きんだサトルは一度みんなを下がらせ、資料を再度確認する。
「みんな、ちょっと聞いてほしい。」
そしてサトルは全員に声をかけた。
「ここの階層ボスはスケルトンソルジャーかナイトのはずなんだ。でも中に別のモンスターがいる。」
「ちょっと確認しますね。」
そう言って舞も確認をした。
ボス部屋は一面を水に覆われ、中央に下半身が尾ひれの馬が待ち構えていた。
水は深くても腰までのようで戦闘は不利だが不可能ではない。
そして舞はみんなのもとへ戻り説明を始めた。
「あれは水生の魔獣、ケルピーですね。
水の鬣を持ち水のブレスを吐きます。
倒せない敵ではないですがフィールドが厄介ですね。
彩さんとクロさんのスピードが生かせない上に全員の動きにも制限が掛かってしまいます。」
そう言って悩んでいると後ろから声をかけられた。
「どうしたのあなた達、こんな所で止まって。」
「あ、母さん。ここの階層ボスが資料と違うのとフィールドの変化で対応に困ってて話し合ってるんだ。」
「何がいるの?」
「ケルピーという馬の魔獣です。」
それを聞いてサトルの両親は一瞬目を細める。
「そう。でもまずは戦ってみなさい。勝てない相手ではないわ。それと私たちも最下層までついて行くことにしたから。」
「どうしたの急に?」
「一応、最下層の確認とだけ言っておくわ。」
そして仕方なくサトルたちは話し合いの後、ボスへ挑みにいく。
その後ろではサトルの両親とエリザが小声で話している。
「もしかしてあれか。」
「多分だけど可能性は高いわ。
フィールドの変化。
水属性の魔獣ケルピー。
彼女が現れたのかもしれない。」
「そうね。これだけ条件がそろっていればその可能性も十分あるわね。」
そして彼らはサトルたちを見る。
サトル達は部屋に入りケルピーに挑む。
現在いつものメンバーに加えイクスとリーンが前衛に加わり後方ではローリーが回復役として控えていた。
まずサトルは全員の防御力をスキルにより強化した。
そして防護力の高いサトルとスノーを先頭に戦闘は開始された。
まずホロは先制攻撃として不可視の風の刃で攻撃を加えた。
しかしケルピーはそれを察知して水を操り水柱を立てて防ぐ。
そして一瞬視界が塞がった隙にスノーとサトルが接近を始めた。
しかしケルピーは水の振動からそれを察知しいったん下がり、口を開けて水のブレスを吐き出した。
それをサトルとスノーは盾で受けて耐える。
だがその水量と勢いに少なくないダメージをくらってしまう。
すかざず後方のローリーが二人を回復させた。
「くそ、素早いうえにあのブレスは厄介だな。」
「そうですねここはこちらもブレスで対抗しましょう。」
「そうか。ホロこっちに来てくれ。」
サトルとスノーはケルピーを警戒しながらホロを前線に呼んだ。
「ホロ、奴のブレスがきつくて近寄れない、ホロのブレスで相殺してくれ。」
「分かりました。でもここだと水のせいで地面に足が届きません。抱っこしてくださいね。」
「まかせろ。」
そしてホロはコーギーの姿に戻りサトルの腕の中に納まった。
戦闘時にシュールな見た目である。
「それでは行きます。」
そして再びスノーとサトルは突撃していった。
ホロはサトルの腕の中でいつでもブレスを打てる準備をしている。
そして近寄るとケルピーは先ほどと同じように下がりブレスを吐いた。
それを予想していたサトルは素早くスノーの前に立ちホロにブレスを吐かせた。
ブレスは拮抗し打ち消しあう。
その隙にスノーは犬の姿になって全力でケルピーに突撃した。
彩も2度目なのでタイミングを合わせてケルピーの側面に回り込む。
そして腰から毒投げナイフを取り出しケルピーに命中させた。
スノーは反対から飛び掛かり、すれ違いざまにケルピーの首を爪で切り裂く。
それによりブレスが弱まりスノーが通り過ぎた直後、ホロのブレスがケルピーを襲った。
そしてこのチャンスを逃すまいとクロは相手に接近しアッパーをくらわせる。
舞はそこで無防備となった首へと矢を射り命中させた。
止めに接近していたリーンが首の傷をさらに切り裂いて広げ、イクスはスキル{貫通}を発動してケルピーの心臓を貫いた。
これによりケルピーは倒れ魔石と鬣を残して消えた。
そしてそれと同時に部屋を満たしていた水が引いていく。
サトル達はドロップアイテムを回収し集まった。
「皆ごくろうさま。これで下の階に進める。母さんたちも付いて来る事になったから。イクスたちも一緒に行こう。」
サトルはイクス達を見てこれからの行動を告げる。
「了解だ。サトルさん。俺たちの成長を見せますよ。」
そして、全員揃ったところで階段を下りて行った。
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