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第六十六話 スタンピード

今サトルたち現場のメンバーは緊急の呼び出しを受け会議室へ集まっていた。


「皆、急な呼び出しだが全員集まってくれたことにまず感謝する。」


龍斗は真面目な表情で会議室のスクリーン前に立ち、周りへ感謝を伝える。

その表情からよほどの事態が起きたのだろうと集まったメンバーは気を引き締めた。

そして、先頭に立っていた社員が龍斗へ問いかけた。


「どうしたのですか急に。全員集合は珍しいですね。」

「今回の事はそれだけ急を要すると言う事だ。

時間がないため急いで説明に入る。

まず皆の中では常識としてダンジョン内のモンスターは外には出てこないとなっていると思う。

しかし、それはある意味間違いだ。

ある一定の条件がそろった時、モンスターはダンジョンから出てくる。」


その事実を知らない大半のメンバーが驚き会議室はザワつく。


「それはホントですか?」


龍斗はその質問に頷き説明を続けた。


「そうじゃ。モンスターはダンジョンから出ると受肉し生物としての特性を得る。

例えばダンジョン内ではモンスターは別に食事をしなくても死なない。

しかし受肉したモンスターは食事を必要とするために積極的に周囲の人々を襲う。」


それを聞いた時その場面を想像した者が唾を飲み込む。


「さらに一部のモンスターは人間の女性と性行為をすることで数が増えるため女性は襲い巣に持ち帰るようになる。」


さらに、この言葉で女性陣の一部が顔を青ざめさせる。


「それで、その肝心の条件とは何ですか?」

「条件とはダンジョンを長期間放置することだ。

ダンジョンはモンスターを一定の間隔で生み出す。

ダンジョン内のモンスターの密度が限界点を超えた時、それは起こる。

俺たちはそれをスタンピードと呼んでいる。」

「でもそんな話まったく聞きませんが。」

「それは政府が対策を取ってスタンピードが起きないように調整しているからだ。

自衛隊は定期的にダンジョンに潜り訓練している。

それは同時にモンスターの間引きを行わせているのだ。

しかし今回の豪雨災害でそれが難しい箇所が何カ所か出来てしまい、今回の事につながったようだ。

政府は急いで対策をしたが一か所間に合わず前兆を迎えた「門」が出来てしまった。

自衛隊は災害派遣とその他の「門」で手いっぱいだ。

これを見逃せば被害は大きく「門」についての世論の声も厳しくなるだろう。

そこで我々に依頼が来た。

今回の相手はモンスターだ。

遠慮することはない我々の力を見せつけてやろう。」


そして彼らはスタンピードの被害を抑えるために出発していった。


そこは森に囲まれた場所。

近くに滝があり空気はとても綺麗だ。

だがそこにある「門」からは今まさにモンスターが溢れ出そうとしていた。

事務所にはすでに人はおらず、避難が終了している。

付近には申し訳程度のバリケードが組まれているがスタンピードが起きれば呆気なく崩れ去るだろう。

そして、前兆として少しずつモンスターがまた一匹、受肉を終え門からあふれ出した。


「ギギギ」


それは低級のモンスター、ゴブリン。

だが奴らは巣を作り人間の女性を攫っては殺し、犯し、食べる。

まさに悪魔のモンスターだ。

繁殖力も強く性欲も旺盛なため攫われた女性は長い時を置かず廃人のようにされてしまうだろう。


そんなモンスターがこちらの世界へと受肉した。


しかしそのゴブリンは風切り音と共に飛来した弓矢に頭部を破壊され絶命する。

矢を射ったのは当然、舞である。

彼女は「門」が見える高台から監視を行い。

今の様に単体であふれたモンスターを駆除していた。


「はあ~、また一匹出てきたよ。どんどんペースが速くなってる。」

舞は構えた愛用の弓を下ろして小声で呟く。


そして処理したモンスターは近くに待機しているメンバーが回収していった。

今回は総出での出撃となっているのでそれなりの人数がいる。

だがどれほどの規模のスタンピードになるかは起こるまでは分からないため油断はできなかった。

今回は人間以外にも組織から助けた獣人で戦える者が多数参加してくれている。

しかし、モンスターに強敵が混ざっていれば犠牲者が出るかもしれない。

それほど今回の依頼は危険であった。


「舞さん、そろそろ変わろう。」


そう言って声をかけてきたのは銀二である。

現在この会社で遠距離攻撃が出来る者は少ない。

その中で疲労を溜めない様に注意しながらローテーションを行っている。


「ありがとうございます。銀二さんはスタンピードの経験はありますか?」


彩は受付をしていたので知識はあるがスタンピードは未経験のため年上の銀二に聞いてみた。


「もちろんある。儂がまだ若いころは、まだ「門」については分かっていない事が多くての。今みたいに制度もなかった。そんな時近くの「門」に今回と同じ現象が起きた。儂らはその異常事態を政府に知らせ素早い対応のおかげで村には被害はなくどうにかなった。じゃが今回は儂らだけだ。規模が大きければ撤退も考えなければならん。特に舞さんは女性だ。気お付けるように。」


銀二は最悪のケースも考え舞に警戒を促した。その間も銀二の視線は「門」から離れない。


「はい。分かりました。」


そして警戒は数日続いた。

門からあふれるモンスターの間隔はさらに短くなりとうとうその時はやってきた。


まず門が激しく光った。

そして空間の歪みが広がり中から続々とモンスターが現れ始めた。

舞はその種類を確認していく。


ゴブリン・コボルト・オーク・リザードマン・オーガ、中には階層ボス級にメイジやソルジャーが混じっているモンスターたちが続々と溢れ出した。


それを手元の無線機で龍斗達へと伝えた。

そして「門」の光が収まり始めた。

それでも100や200ではきかない数がいる。


そして龍斗たちはモンスターの出現が落ち着くと同時に一気に攻撃を始めた。

龍斗は隠れていた大木から姿を現し魔法が使える者に大声で指示を飛ばす。


「魔法使い炎を放て。」


魔法により前方の敵を焼却するため魔法使いによる攻撃が行われた。

彼ら前衛の頭上を炎の塊がいくつもモンスターへ向かって飛んでいく。

炎は着弾と同時に広がりそれを受けた弱いモンスターが数多く狩られた。


「美雪、バリケードを頼む」

龍斗は続いて剣を抜き美雪へ指示を出す。

その声で美雪が周りのバリケードを氷で強化しモンスターの逃げ道を塞ぐ。

その後、龍斗らによる接近戦が可能な者でモンスターを狩っていった。

龍斗は的確に強い敵を葬っていく。

そして、それと同時に周りに指示を出していった。


「強い相手は俺や上位者に任せろ。無理のない戦いをするんだ。苦戦している者は助け合え。」


別の場所ではサトルの両親がオーガなどを中心に狩っていく。


「久しぶりのスタンピードだな。」

「そうね腕が鳴るわ。」

2人は浸透で大きな敵でもお構いなく急所を破壊している。

互いに連携し効率よく相手を葬っていく。

稀に苦戦している者がいれば少し手助けをしているので二人の周りに死亡した仲間はいない。

そしてサトルたちも負けじとオーガやソルジャー、メイジなどを中心に狩っていくことで獣人たちの負担を軽減していった。


「強そうなのはあちらに任せて俺たちは各個でメイジ等をたたくぞ」


そして結果を見れば大勝に終わり戦いを終えたメンバーはそのまま野営へと入っていった。

女性のほとんどは念のために近くの村へ戻り野営をしている。


しかし、今回のスタンピードはここで終わりではなかった。

「門」にはまだ解き放たれるのを待つモンスターが数多く残っていたのだ。


その夜サトルのパーティーは見張り役の舞を労うために高台に野営をしていた。

そして多くの者が眠りにつき時刻が4時を刺そうとした瞬間、それは起きた。


前兆もなく門の前に静かに空間の歪みが発生しモンスターが出てくる。

出てきたのはゴブリンばかりだが数が多く統率されていた。


ゴブリンは女性の匂いを探し寝静まったテントの周りを静かに徘徊した。

見張りはいたが彼らも激しい戦闘を終え、気が緩んでいて気づかない。

獣人の鼻もこれだけの血と死体の山のそばでは役に立たなかった。


そしてゴブリンは4つのテントから女性の匂いを見つけた。

一つ目は三人組の一人である

加藤 哲 (カトウ テツ)の恋人、猫獣人 ローラの匂い。

二つ目は三人組の一人である

小林 海 (コバヤシ カイ)の恋人、猫獣人 リオの匂い

三つめは三人組の一人

石田 淳 (イシダ ジュン)の恋人、猫獣人 クウの匂い

そして四つ目は

松 紅夜 (マツ コウヤ)の恋人、犬獣人 フレイの匂いであった。


先の3人は恋人の傍にいたいため。

フレイは遅くまで治療をしていたためにここに残ったのだ。


ゴブリンの群れの中から魔法を使えるものが前に出てくる。

そのゴブリンは周りに眠りの魔法をかけて眠らせた。


そして女性だけを連れ出し攫って行った。


そしてそれほど時間を置かずにその場へ龍斗とサトルの両親が姿を表した。

彼らは松と3人組のテントの前に行きわずかにテントが汚れているのを見つける。


サトルの両親が彼らを起こそうとするがなかなか起きない。

すると龍斗が近づき殴りつけた。


「痛、何だ、何があった。」


彼らは殴られた頭を押さえ慌てて周りを見回す。


「お前らこの辺で何かおかしな事は無かったか?」


それを見て龍斗は彼らに問いかけた。


「そんなこと言われても今まで寝て・・・あれローラは?」

「俺もリオがいないぞ」

「俺もクウがいない。寝るまでは一緒だったのに。」

「フレイ・・・フレイはどこだ。」


いつの間にか自分の大切な人がいなくなった彼らは混乱し始めた。

こんな時間に彼女たちは自分に何も言わず何処かへ行くとは考えにくかったからだ。


「消えたのは女性だけか?」

「周りは異常がないようです。」


龍斗は彼らの深い眠りと、消えたのが女性だけと言う状況に危機感を覚える。


「先ほどの状態、眠りの魔法を使われていたな。もしかしたら何者かが4人を攫って行ったのかもしれん。」

「龍斗さん来てくれ。」


その時サトルの父は龍斗を呼んだ。


「なんだ?」

「このテントの中の足跡、ゴブリンじゃないか?」


サトルの父はテントをめくって足跡を見せる。


「どういうことだ俺たちで全部倒したんじゃないのか。」

「理由は分からん。しかし4人はゴブリンにさらわれた可能性が一番高い。」


それを聞いて4人の顔は青ざめた。

ゴブリンに攫われた者の末路は数日前に聞いたばかりだ。

彼らは急いで探そうとする。


「馬鹿もん、どこを探すつもりだ。やみくもに探しても時間を無駄にするぞ。」


龍斗は焦る4人を呼び止める。


「それではどうしろと言うんだ。」


しかし焦っている中から哲が龍斗にくってかかる。


「恐らくゴブリン共は今から巣穴を探して移動しているはず。それにこの統率された行動。おそらくゴブリンロードが率いているのだろ。それならばまだ時間がある。女を最初に汚すのはロードだ。巣穴を見つけるまで彼女たちは安全だ。」


そう言っているとサトルの父が龍斗へ小声で話しかける。

「龍斗さん、こいつらに天職を目覚めさせてみないか。」


その提案に龍斗は考え込む。

獣人を総動員してもいいが何が起きるか分からないため危険が大きい。

そして龍斗が悩んでいるとサトルの母がさらに提案する。


「荒療治だけど今のこの子たちには可能性があるわ。」

「天職はその者が極限状態である事、それと強い願望が必要だがこいつらにはそれがある。」

「そうじゃなそれにかけてみるか。」


そして龍斗は彼らに提案を投げかけた。

読んでいただきありがとうございます。

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