第五十九話 新たなスタート
戦闘が終わりボートに乗り込もうとするとき、サトルの母は彩、舞、ホロの三人を呼んで小声で話していた。
「サトルの天職は他人を護ろうとするときに最大の威力を発揮するわ。」
「はい、それは分かります。」
「でも、それは守る者がいないときは発動しない諸刃の剣。だからね、あなた達はサトルのそばにいてあげてね。今回のスキルの進化はあなた達3人をサトルがどれだけ愛してるかのいい見極めにもなったでしょ。」
そう言ってサトルの母はウインクをした。
三人は赤い顔をしてサトルを見る。
愛されているのを実感できてうれしいのが一つ。
命が掛かった作戦に参加しているため自己の保存本能が高まり体が無意識に反応してしまったのが一つだ。
(ちょっと言い過ぎたかな。サトルは帰ったら大変ね。ふふふ)
何処までもスパルタな母であった。
そして彼らば全員沖に出て潜水艦に乗り、日本へ帰っていった。
先に逃がした獣人もイルカの獣人に先導され全員が潜水艦と合流できた。
無事日本に帰り着いた彼らは喜びに泣き、救出に参加してくれたもの全員に感謝を示した。
ちなみにサトルは日本に帰るなり3人に求められたのはいうまでもない。
サトルとの仲がサトルの両親公認となったため気分も軽く。
緊張からの解放直後と言う事でサトルは激しく求められた。
体力回復薬さまさまである。
しかしサトルたちの仕事はここで終わりではない。
まだ救わなければいけない者たち。
特に娼婦をさせられていた獣人の治療はサトルと彩しか今現在は出来ないためなかなか進んでいなかった。
だが、1日二人ずつ残り24人いた彼女たちは2週間の治療で終了することが出来た。
また、これは正式な政府からの依頼であり、特殊技能なため報酬は破格と言っていい金額になっていた。
実際に一人の報酬で家が立つ位だ。
しかし、25人の社会復帰不可能の獣人を病院で一生眠らせることに比べれば色々な意味で小さな出費である。
働けるようになれば税金も入ってくるし病院の費用も掛からないのだから。
逆に政府は風評という面でも大きく助けられたためこの金額を出したともいえる。
そして次に活躍したのはフレイである。
彼女は回復特化の白魔法使い。
重病・重傷の獣人たちを次々に直していった。
その仕事も政府からの正式の依頼として報酬が出され。
治療内容によって点数がつけられ、それによって報酬が払われた。
しかしこちらも数が多かったため多額の報酬となっている。
そして、フレイはその報酬を使い松と二人暮らし出来る家を買いたいそうだ。
松はそれを聞いて最初は困った顔をしたがフレイが小声で耳打ちすると少し顔を赤くしてしぶしぶだが了承した。
さらに困ったことに、それを聞いた龍斗と美雪が張り切っている。
どんな家になるのか楽しみでもあり怖い。
そして獣人たちは今悩んでいた。
多くの者は社会常識はあるが経験がないためどんな事をするにしても緊張してしまっていた。
それを助けたのは澪やオグマを筆頭に動く社会復帰支援部の者だった。
澪とオグマは救出当初はマスコミに多く取り上げられ彼らの境遇は美談として放送された。
もちろに組織を丸々つぶし、大量の死傷者が出たことは闇に葬られた。
そしてマスコミが落ち着いてきたあたりで龍斗に入社する意思を伝えた。
澪は最初どんな仕事をさせられるのか恐れた。
自分は天職を持っているし、捕らわれの時代の記憶から働くことにあまりいい印象がなかったのだ。
しかし、いざ任された仕事は澪とオグマが望んだままの仕事であった。
「龍斗さんいいんですか?」
「いいも悪いもこれは政府から受けた正式の依頼だ。
この会社は来た依頼に対して適切なスタッフに仕事を回し、それで報酬を得る。
今回の仕事にお前たちほどの適任者を俺は知らん。」
そう言われ現在二人は救出された獣人のサポートや相談を受けている。
そして獣人たちは一度経験するだけですぐに適応していった。
元々が澪と同じ知識を持っているのでどのような所で困るのかは大体同じで対処も簡単だった。
そして一月経過した頃にはすでに手助けは無用となっていた。
そこまでいけば次は就職活動であるが、ここはさらに簡単に進んだ。
彼らはある程度レベルがあり探索が可能だったからだ。
そして龍斗と紅蓮が大々的にバックアップを行い、希望者は龍斗が雇い入れた。
これにより{救いの腕}の人手不足は改善された。
「澪よ、これで獣人の社会復帰支援部は縮小される。」
それを聞いて澪は落胆する。
自分が一生をかけてでもサポートしていくつもりが呆気なく終わってしまったからだ。
しかし、それは澪が社会常識をしっかり知りそれが獣人にしっかり受け継がれていたからだ。
それを龍斗は伝える。
「そう落ち込むことはない。これは澪が進化の時にしっかり常識を知識として伝えていたからだ。そのおかげで彼らは社会への迅速な対応を行う事がが出来た。これはある意味では君の功績でおある。」
「そうですか。ありがとうございます。」
そしてオグマも話しかけた。
「それで、俺たちの次の仕事は何ですか?」
「次は生活相談部を立ち上げることにした。そこで仕事をしてくれ。」
「生活相談部?」
「そうだ、いかに社会生活になれたとしても相談する相手は必要だ。そのため君らにはその仕事を任せたい。これは政府側も窓口を作るらしいがおそらく君らへの相談件数が多くなるだろう。これには政府から支援も出るので気にせず今まで通り働いてほしい。」
「俺たちはダンジョンに入らなくていいのですか?」
「そこは君たちの自由だ。今までは社会復帰支援部が忙しく、そちらの仕事を優先してもらっていたが。これからは時間が出来れば受付に行ってみるといい。何か仕事があれば受けられるし自主的に入ってもらっても構わんよ。ただダンジョン内は携帯がつながらないからな。可能な限り所在は伝えて入ってほしい。」
「分かりました。」
そして2人の部署名は変わったがやることはあまり変わらず。
希望の仕事を続けることが出来た。
だか彼らはこれからも狙われる可能性がある以上強さは必要だ。
そのために2人はサトルの両親に時間が空いた時に鍛錬をお願いした。
サトルの両親はここで戦闘指南の仕事をしていた。
受け付けで仕事を受注したメンバーがサトルの両親に料金を払いダンジョンに行き。
そして指導を受ける。
そして、個人の戦闘レベルを上げていくのだ。
銀二は意思疎通を使い保護された動物たちから獣人に成りたい物を選抜しレベル上げを行っている。
これは龍斗が補助を出し大きな事業になっている。
戦闘向きでなくても白魔法使いの魔石を使えば進化後は医師の代わりになったりできる。
また、パーティーに入ればメンバーを補助しつつレベルを上げ再進化もできる。
進化先は悪用さえしなければ、まさに彼らを幸せにできた。
この事を思いつき澪に話せば拒まれることなく協力してくれただろう。
あの組織は最初の時点で選択肢を間違えたのだ。
そして霧島はダンジョンに潜りつつパーティー戦を獣人たちに教えていた。
彼らの戦闘経験は獣人に成る前までだった。
そのためそれを専門で指導する人間が必要だったが霧島が自衛隊時代の経験を生かして教官をかって出てくれたのだ。
霧島は近接・中距離・遠距離と攻撃のバリエーションも多く教官としてうってつけだった。
実は奥さんも会社に入り獣人たちに料理などを教えている。
澪はまだ少女の時に誘拐されてしまったため、そのあたりの知識が乏しかったからだ。
授業は好評で自分で美味しいものが作って食べれるようになると皆喜んでいる。
今は気になる相手に料理を送るのが彼らの間で常識となりつつあった。
今では全員が自分で選択し、平和な日常を手に入れつつあった。
読んでいただきありがとうございます。




