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晩秋

作者: 花守 一華

「死ぬまで生きてりゃなんかいいことあるって」

「死んでからじゃ『いいこと無かったじゃねえか』って文句も言えねえだろ」

 別れ際のじゃれあいを思い出して頬を緩ませる。冷たい風に鼻のかしらがツンと引き締まり、近くからは暖かで青くさい草木の匂いが立ち昇る。鼻を撲つ晩秋。

 コートの襟を寄せこすり、再び力を込めて歩き出す。ひとり。


 遠く高い空は紫とオレンジ、足元は夜だ。光と闇が建物に反射する。

 かじかんで器用に動かなくなった指をポケットの中でもぞもぞと動かすと、冷たくなった手の甲が張るようだ。

 反面、足の指は付け根が熱い。いったいどれほど歩いただろうか。


 スゥ、と深呼吸をすると自分の身体が一部少し入れ替わったかのような真新しい気分になれる。鼻から勢いよく吸った冷たい空気を、体温と一緒に排出する。

 じゃり、じゃり、と踏み出す足はいくらか軽くなった気がする。

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