オーソドックス
文化祭当日、入念な準備をしていただけあって祭りは滞りなく進んでいた。劇をやるクラスやカフェをやるクラス、1年間の成果を展示する文化部。それぞれが文化祭という一つのイベントのために行動していた。
今年の文化祭はやりやすいよね。
見回りの時に聞こえたそんな一言がうれしかった。それだけに哲太がいないのが残念だった。
メインステージの催しも終わり、文化祭は表の顔は幕を閉じる。そして片づけが終わるとフィナーレが始まった。
化粧や着替えがすんでいない人、文化祭をやりとげた解放感でテンションがおかしくななっている人。
そんな中、一般の人には見せれないような内輪漫才や、グランプリをとった軽音バンドの演奏で、体育館の熱気は最高潮だった。
「えー今年も盛り上がってるなか、今年の文化祭はこれで終わりです。では、最後に実行委員会リーダーから一言!」
司会の声に押され、美里がステージにあがると、会場から拍手が送られた。
ステージの真ん中まで行き、会場を見渡すと、みんな笑顔だった。
「みんな、お疲れさま!えー今日は大きな事故もトラブルもなく、無事に終わったことに感謝します。みんなありがとう」
頭を下げると拍手とともに「ありがとー」という声がそこからからあがった。
「ほんとは、リーダーの哲太じゃなかった、元木君がここに立つはずだったけど、病気で倒れちゃって。この拍手を受けるのは私じゃなく元木君だと思う」
「俺はここにいる!」
突然の割り込み。見ると体育館の入り口に哲太が立っていた。服はラフなジャージ姿。顔面は蒼白だ。
ふらふらした足取りでステージに向かってくる。美里はいたたまれずステージを降り哲太にかけよった。それを全校生徒が注目している。
「大丈夫?」
声をかけると哲太はひざからくずれ落ちそうになった。慌てて肩をかす。
「ありがとな」
息をきらしながらつぶやくと、哲太は美里の肩をかりてキッと前を向いた。
「俺は、桜木美里が好きだー!」
突然の告白。渾身の力を振り絞ったからか、告白と同時にうなだれる哲太。一息つき、泣きそうな顔を美里に向ける。
(お前はどうなんだ)
期待と不安を抱いた目がそう語っていた。
その様子を全校生徒が固唾をのんで見守っている。
美里はなにも言えず、ただうなづくと、哲太の顔に笑顔が広がった。
その後はさんざんやじを飛ばされたものの、限界をとうに越えていた哲太は先生に抱えられ強制退場。文化祭の幕は閉じた。
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