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第五話 初体験の連続 (2)

今回は話の内容的に長くなってしまいました。すみません。あと残虐なシーンが少しありますが、描写はあんまり入れてないので、できる限り見てほしいです。

※改稿しました。



 「さぁ、ゴブリンども、かかってこいだわさ!」




 バーバラさんの声に反応して、一体のゴブリンが木の棍棒を振りかぶりながら、こちらに近づいてくる。


「まずはもう扱えるヤツもいると思うが、今から見せるのは魔法さね!『ファイアボール』」


 そうバーバラさんが詠唱した後に、人の頭くらいの大きさの炎の玉が現れ、宙を進む。


「グギャ!?」


 その瞬間、ゴブリンの腹辺りにファイアボールが当たり、奥の茂みに吹っ飛んでいってついには動かなくなった。


「魔法は個人差はあるが扱えるものは多いさね。だけど同じ魔法でも扱う人によって威力や効果に大きく違いが出るだわさ。じゃあスパナとバール、2人で考えて答えを聞かせな!」


 スパナとバールは俺たちとは違う方のルームメイトで、普段からなにか怪しいことをやっているけど、とにかく気の良い双子だ。


 ただし、いつもどっちが先に産まれたかということで喧嘩して、バーバラさんに怒られてるのをよく見たりするんだよなぁ。


 ──閑話休題。


 しかし、この日は珍しく喧嘩もせずにコソコソと話し合いをして、二人同時に答えを言った。


「「そ、それは魔力の質と量、魔法を使った経験が大きく違うからです!(ぉ、ぉぃ! )」」


 意図せずお互いに同じ言葉を言うとは、凄いな。と、そんなことは置いといてバーバラさんの話を聞かないと。


「正解さね。自慢じゃないが、そこらのヒヨッコ魔法使いやアンタたちと比べると魔力の質と量もワタシの方が上さね、それから経験についてはもう歴然の差があるだわさ。だからアンタたちも魔法を使えるようになったとしても調子に乗らないことさね」


 え?そうなの?魔法を覚えたらめっちゃ強くなれると思ったのに。


 俺と同じように思っていたやつがたくさんいたのか、みんなのテンションが下がり気味になってしまった。


 バーバラさんも、流石にちょっとストレートに言い過ぎたと思ったのか、取り繕うように早口である提案をする。


「そ、そうさね。次はまだちょっと早いかもしれんが、武術を見せてやるだわさ!」


 おお!なんだそれ初耳だ!はやく見たい!と、俺を筆頭に何人かがさっきのことを忘れて期待で目を輝かしている。


「それじゃあ行くさね。武術は自分の魔力そのものを扱うことで、その魔力の属性の追加効果と、身体能力上昇ができるさね、それとワタシにはないが、武術の達人と呼ばれる化け物たちは、自分専用の武術を持っていると言われているさね。そんな武術の中で一番有名で、一番奥深い技はこれさね!『付与エンチャント(サンダー)』」


 その武術の詠唱が終わった瞬間、俺たちの視線からバーバラさんは消えた……

 かと思った瞬間、二体目の遠目から威嚇していたゴブリンがまっ黒焦げになっていた。


 すると目新しい物好きなサラが、目の前で起こった現象の魅力に耐えられず、自分のしたかった質問を一気にぶちまけてしまったようだ。


「今のは何なんですか?ゴブリンがまっ黒焦げになりましたけど、それってやっぱり雷の魔力をバーバラさんがその小刀に付与したからなんですか?それとそれと、バーバラさんが一瞬凄く速くなったのも、雷の魔力のお陰なんですよね?ですよね?」


 流石のバーバラさんも、サラの怒涛の質問に少し呆れたような顔をしていたが、そこは大人の余裕を持って答える。


「そうさね、今のはこの小刀と自分の体に雷の魔力を付与したんだよ。だけど、この技術は魔法の才能だけでなくて武の力、つまり魔法ではなく、例えば剣なんかの武器で戦う練習もしないとまず出来ないんだよ、まぁ、ワタシはここまで教える気は……」


「バーバラさん!是非私に武術を教えてください!何でもしますから!」


 バーバラさんが言葉の最後を言い終わる前に、サラが土下座でもしそうな勢いで教えてくださいと頼んだ。


 雑草のように手強いな、サラのやつ。


「わ、分かったさね。ただし、魔法と武器を扱う戦闘にそれなりの才能がないと教えてやれないだわさ」


 ちょっと押され気味にバーバラさんはそう返事をした。


「ありがとうございます!」


 一方、サラの方は嬉し過ぎて泣きそうになっている。頑張れよ、サラ。


「さて、そろそろとっておきのを見せてやるかね。これから見せる技は、一級の一部と特級くらいしか扱えない技だから、ワタシもそう何発も打てないだわさ。しっかり目に焼き付けときな!」


 そう言って、ゴクリと生唾を呑む俺たちを横目にバーバラさんは魔法?のようなものの長い詠唱を始めた。


「我が願いに答えよ、疾風怒濤の神よ。嗚呼、その力を我に──」


 その間に最後のゴブリンはいつの間にか十体程のゴブリンを呼び寄せている。しかし、バーバラさんはそれを気にせずに長い詠唱を続けていた。


 危ないよ、バーバラさん!


 「──示したまえ。そして邪なる者たちをその力で清めたまえ!『風神招来』」


 その詠唱が終わると、バーバラさんの上に突如神々しい門が現れ、開いた。


 それと同時にバーバラさんの膨大な魔力が俺たちでも分かるほど、その門に根こそぎ吸い込まれていく。


そして、その膨大な魔力と入れ替わるように────


「グォォォォァァァァ!」


確か5歳か6歳のときに孤児院の紙芝居で見たことがある。「龍」とか言ったかな?


 そしてその龍はその場にいたゴブリンを一気に丸呑みにして、門の中に帰っていった。


 それと同時に門も閉まり、綺麗さっぱり消失した。


「お、おい、なんなんだよ今の……」


 そう小声で驚きの言葉を口にするのは、双子達と同じルームメイトのデフという子だ。


 因みにこいつはこの年齢にして、もうバーバラさんの背も体重(多分)も越しているほど身体が大きい。


 そして、デフやみんなの反応は似たり寄ったりだったが、俺は少し違った。


 いや、違ってはいないだろう。怖いという感情は確かにある。だけどそれより何故だか好奇心が勝ってしまっていたんだ。


 それと同時に思う。もっと知りたい。知識が欲しいと。



(ユニーク魔法 召喚魔法・風神

自分の魔力の1/2を消費し、この世に存在しない存在を召喚する。今のモデルは龍である)


 は?どういう……え?


 夢か?でもなんか前にもこんな事があったような気がするんだけどなぁ。試しに頬を引っ張ってみたらそれはそれは痛い。


 どうやら現実みたいだ。それなら他のものも見てみようと思い、なんとなくバーバラさんを見つめてみて、「なんか見せて」と5回くらい念じてみたところ。


バーバラ

レベル 56

総合階級 1級

個別階級 火魔法 2級 水魔法 3級

風魔法 1級 雷魔法 2級

ユニーク魔法 召喚魔法・風神

称号  疾風の乙女 孤児院の代表 子供好き

さね・だわさ女 師匠 謎多き女


 結果はこちら。よく分かんないけどこれ見ていいやつなのかな?それにしても基準とか分からないからどこをどう見ていいのかも分からない。


 ──とか呆然と考えていると、バーバラさんに声をかけられた。


「そんな素っ頓狂な顔してどうしたんだい?ルクス?」


 バーバラさんに不思議そうな顔で尋ねられたので、訳の分からないことをとりあえず聞いてみることにした。


「すみません、バーバラさんが使ったその『召喚魔法・風神』っていうユニーク魔法って、何なんですか?」


 その瞬間、バーバラさんがすごい勢いで俺を引っ張り、みんなが呆然としているのを無視して、俺に超早口な小声で質問をしてきた。


「なんでルクスがワタシの秘技『召喚魔法・風神』という本当の名前を知っているさね!いつもはニセ詠唱で隠してるってのに。それとワタシはアンタたちにユニーク魔法なんて説明したこともないさね!なんか言ったらどうだい!?あぁ?」


 小声なのに尋問みたいな口調で俺に聞いてくるバーバラさん。


 いや質問されても答えられることなんて少ないんですけど。


「あ、あの、すみません。実はバーバラさんのステータスを見ちゃいま…」


 「今ステータスを見たって言ったさね!?おかしいだわさ!だってそれは召喚魔法で転移してきた「英雄」しか使えないはずだわさ。だいたいルクスはなんでそんなアッチもコッチも……」


 俺がステータスを勝手に見ることが出来ることを話した瞬間、バーバラさんはよく分からないことを口走った後、急に優しい表情で俺に話をし始めた。


「いいかいルクス、お前はワタシ以外にこのことを話すな!これはお前が一人で抱え込めるような問題じゃないさね。少なくとも使うとしたら孤児院の中だけにしておくれ。それからみんなと自分のステータスを見て、落ち込むのはよしな。人がなんと言おうがワタシはお前が強くなれるって信じてるだわさ」


 なんでバーバラさんがそんなことを言うのかは分からなかったけど、最後の言葉に俺は心を打たれて元気よく返事をした。


「……はい。よろしくお願いします!!」


 その後はバーバラさんと俺で手分けをして呆然としたみんなを現実に引き戻す作業を行った。

 そうして、みんなが現実に戻って来たところでバーバラさんが今後の訓練の話をした。


「今日の訓練はここまでにして孤児院に帰るさね!明日からは実際に魔力を扱った基礎の訓練を行うだわさ。各自が気合いを入れておくように!」


「はい……」


 みんなの元気のない返事も今回に限っては仕方ないとバーバラさんも思っているのか、それとも自分も驚愕の連続で疲れているのか分からないが、注意することは無かった。





 この時、まだ俺はバーバラさんが言った言葉の本当の意味を分かっていなかったのだ。



 ────明日からの訓練が始まる前までは。








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