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第一話 誕生

少しの間は第三者目線で行きます。

※改稿をしました。冒頭のくだりを修正をしました。6/10



 この世界の中で、一般的な人族のほとんどが暮らしているという大きな大陸。


 その名をササエ大陸という。


 そして、その大陸に存在するマリエル村という場所に建てられた孤児院から聞こえてくるのは大きな産声だった。


「ニュートラルの名を持つこの世界に生を受けたこの子に祝福を。神の赤子としての護りを──」


 掠れているが、どこか優しい声の持ち主が、神聖な句を読み上げる。


「そしてこの赤子が、『神の子』らによって滅ぼされた『七つの大罪』をこの世からさらに遠ざけることを願わん……!」


 この世界に産まれた子供は、親の声を聞くよりも前に「避罪ひざいの聖句」というものを聞かされることとなっているのだ。


 そしてこの習慣が定められたのは遥か昔。


 時代としては、様々な神と善の象徴である神の子が、悪の象徴とされる七つの大罪の名を使う大悪魔を駆逐した頃からだろう。




 ────そしてそれは、何たる皮肉なのだろうか。それとも、それすらも神が用意した前兆として扱うのだろうか?





 話は戻る。



 第一に、先程産まれた赤子の誕生を祝う者は、極端に少なかった。


 何故なら、まず手始めにその赤子が身に宿した大き過ぎる魔力が母親の身体を破壊し始め、子供を出産したと同時に母親の命が尽きたことが原因だろう。


 そしてその母親は、息を引き取る前に孤児院の院長に息子の名前だけを遺して逝ったそうだ。


「あぁ、やっと生まれてきてくれた。名前は……ルクスよ。で、も…可愛がってあげら、れないわね…………」


 ルクスという名前は一ヶ月前に1人で村を襲った魔物の群れと激戦を繰り広げ、相打ちで亡くなったという兵士の父親がつけたがっていた名前だった。


 しかしこのことはまだマシだと言えなくもない。


 何故なら、この世界では子供の自意識が目覚める前に両親がいなくなっているということ自体が、そこまで稀ではなかったからだ。


 肝心の問題は次の日に起きた。


 生まれた日には母親と同じ、くすんだ金髪だったのが、1日後には身体から流れ出る黒い魔力のせいで、髪の毛先までが真っ黒に染まっていたのだ。


 元々目の色も黒色だったのもあって、孤児院の近所の人々から「悪魔の子供」なのではという噂が流れ始めていた。


 世話好きな孤児院の院長もこのことには手を焼いていたそうだ。


 たしかに黒髪というのはかつて神の子らに滅ぼされた七つの大罪と呼ばれる人物達を象徴するものだから、多少の畏怖があるのは仕方がない。


 しかし、天然で黒髪の人がまったくいないというわけでもなかったので、まぁ大丈夫だろうということだった。


 問題の核はそこではなかった。


 重要なのは、元々くすんだ金髪だったのがどす黒い魔力によって黒髪に染められたという点だろう。


 この魔力は少しでも魔法をかじったことがあるものならすぐに黒魔法の魔力なのが分かる。


 何故ならまず魔力とは例外を除いて4つの色に分けることができ、それぞれ赤、青、緑、黄、そしてその色に合った属性の魔法を使用することができるのだ。


 この世界の人々は少なくとも一つの属性には適性があるのが当然だった。


 そしてルクスが持つという黒い魔力は、その枠の中では例外中の例外であり、人族の保有者が圧倒的に少ないというのは周知の事実だった。




 ────それなのになぜ、こんな赤ん坊が黒い魔力を宿しているのだろうか?




 その原因を探るため、孤児院の院長はある人物に相談しようと、一通の手紙を自分の風魔法で創造した伝書鳩に持たせた。


「さぁ、あの光魔法と対をなす黒魔法の魔力を持った赤ん坊、アンタはこの異常さをどう見るさね?」



 孤児院の院長は、そう呟いてニヤッと微笑んだのだった。




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