6話
気が付くと空を飛んでいた
ありのまま起こったことを話すぜ
芋虫として生きてきて鳥にごっくん飲み込まれたあと気づいたら鳥だった。
え？どゆこと？
あまりにも認識が追い付かず固まってしまい危うく墜落するとこだった。
ばっさばっさ
うん、飛ぶのに苦労はない。なんというのか意識は自分として継続しているけれど
鳥としての体の動かし方。そして自分を食べるまでの記憶がしっかりとある。
おお、こういう時こそステータスだ
種族名：タイニーロック・ヴァイオレット（♀）
個体名：ヴァース
ＬＶ：２５
ＨＰ：１５６/１５６
ＭＰ：２５９/２５９
特殊スキル：炎魔法ＬＶ３、水魔法ＬＶ３、空激、千里眼、糸吐き（ＮＥＷ）、大食（ＮＥＷ）、威嚇（ＮＥＷ）
秘匿スキル：傲慢
相変わらずどないせーちゅーねんって感じだな
種族は何なの？聞いたことないよね？
【タイニーロック】
翼長2.5ｍ～3ｍ ロックバードの小型亜種
性格は温厚で知能が高い。通常は風属性魔力を持ち大型種ロックバードへと成長する。
稀に炎属性、水属性を持つ個体が生まれ判別は目の周りの隈取で行う。隈取が赤ならフレイム、青ならアクアと呼ばれる。また極稀に両属性と高い魔力を持つ紫の隈取の種も生まれることがある。ただし魔力量に反比例するように大きさは縮む傾向がありヴァイオレット種の翼長は2ｍほどと大型ロックバードの半分ほどである。
えーっと小さいのね。鳶とかそんな感じ？
水場が見つかったので降り立って水面に移る自分の顔を見る。
確かに紫の隈取がある魔力ありかぁ試してみっか
ファイヤー
口を開けて炎を吹き出す
おお、怪獣っぽい。個人的にモ〇ラ（幼虫）から進化を間違えてラ〇ンになった感じだが
悪くないね。じゃあ次は水魔法
ウォーター
目の前に水の塊が出現する。目線を近くの岩に移すとそちらに向かって飛んでいき命中
まあ口から水が出たら吐き戻してるみたいでかっこ悪いしな
空激っていうのはどうやらドッグファイトの技能らしい。これは実験はできないな
千里眼はよく見える。それだけ。昔見たテレビで猛禽類の目がいいのにたとえた話で人間の目はワンセグ解像度、猛禽類は８Kテレビって言ってたことがあったけどそんな感じはっきりくっきりよく見える。
虫の目は全体的に視野を持つものだったけどやっぱ鳥だからね
それはそうと、何で芋虫の時のスキルがあるんだ？まさにバグ？
試してみよう
糸吐き！
口を開けるとイメージ通りに糸が吐けました。しかも網状糸も思い通り
威嚇は怖いから試すの止めよう。
何で使えるのかわからんがまあ便利かもしれないからこれはこれでいいか
そんなことをしていたら水場にもう一羽降りてきた。
ちょっと大きくて赤の隈取だからあれが火属性のタイニーロックだな。
とりあえず挨拶してみるか
よっ！
片手を上げて挨拶する、つもりだったんだが片方づつ動かすことができないようで両方の羽を掲げる格好になってしまった。恥ずかしい。
赤隈は気にしていないのか近づいてくる。どんどん近づいてくる
傍にきて向こうも両羽を上げて挨拶してくる
どうやら鳥のあいさつなのかな？
もう一度こちらも羽を上げてみた。よろしくな
ん？なんかピトって寄り添ってくるんだけど？ちょっと離して！
羽で押し返すがグイグイのしかかってくる。
人間ならまるで押し倒してるみたいに来るんだが・・・・
もしかして・・・・
もう一度ステータスを確認
種族名：タイニーロック・ヴァイオレット（♀）
メス？・・・
もしかしてこいつ発情期？
もしかして今のって求愛ダンスしてしまったとか・・・・？
いやぁぁぁぁぁぁ！ やめてやめて！
身体は女子でも心は男なんだよ！
精神的に耐えられない
必死で抵抗する。時には飛び蹴り、時には炎
オスはどうやら友好的なメスだと思っていたのが急に抵抗しだしたので不審には思ったようだが
本能には逆らえず追いかける手を緩めることはない。
まあ確かに人間的に言えばベッドに入ってから急に暴れだすようなもの。男としてはわかるんだけど
受け入れるわけにはいかない。飛んで逃げても向こうも同種、しかも大きいので追いつかれる。
空激のスキルは便利。
本当にドッグファイト用のスキルらしく何とか紙一重でかわすことに成功している。
ジリ貧だな。何か決定打がほしい
フレイム種だから水に弱いかな？
ウォーター
水球を生成する、がその分飛ぶことに隙が生まてしまう
ガシッ！
背中に爪を立てられる
墜落しかけたが体勢を立て直し再び逃げに。
アブナイ、アブナイ
奴に空中給油スキルが合ったら男として終わっていた。
炎のほうがまだ使いやすそうだけど前方だからまず後ろにつかなきゃいけないんだよなぁ
あとは糸だけどこんな状況じゃ・・・
やってみるか
わざとふらつくそぶりを見せる
嫌がる女のケツを追いかけまわすストーカー鳥は落とすためにもう攻撃してくるはず。
一瞬のタイミングが命だ。
近づいてきて爪を立てられる一瞬、翼を前面に拡げ急減速。同時に前面に網糸を吐く。
俺の体は爪をぎりぎりでかわすように落下。奴は網に絡まるように突っ込んでいく
慌ててこちらへの注意がそれたのを幸いに反撃網糸を絡めていく。
これで火を点けたらどうなるだろう？焼き鳥？
なんて思ったら火が付いた網が発射できました。しかも直撃。
あ・・・・
火で暴れながら落下していくストーカー
もともとの糸にも引火して火だるまになっている。
うーんせっかくだけど塩も醤油もない焼き鳥はいらないやごめんねー
ばっさばっさ
純潔と男の尊厳は守られた。とりあえずはそそくさとその場を離れていくのであった。
