22話
リヒタール王国からエルフ領にはいった最初の町トゥデラ。
その町の西門外に陣を敷き座っている者が見える限り15人 少し離れた場所に10人くらいが詰めている。
魔獣ヴェノンヴァイパー出現の報を受けて探索チームとして森に潜った8パーティ。それらの操獣士と交代で見張りにつくパーティであった
通常、操獣士の操る魔物は一体ではあるがハウンドは比較的扱いやすい魔物であり熟練者は3体、最高で5体同時に操ることが可能である。故に探索、狩猟など使い勝手がよく、操獣士技能保持者のほぼ6割がハウンドを使用している。
今回のギルドからの緊急クエストにより操獣士を抱えるほぼすべてのパーティが招集されている。
内、高ランク冒険者はより深部へと。ランクの低い方は外縁部とある程度の探索範囲は分けてはいた。
しかし幸か不幸かにもクラスターベアに遭遇してしまったのはAランクチーム。図らずも探索者の中で最高ランクチームであったのは幸運としか言いようがない。それでなければベアーとの戦闘を持ちこたえることができず、ひいてはその後の目標発見ができなかったであろう。
リーダーであった剣士、トーマスは今、詰所で思う
目下、15頭のハウンド、5羽のラッセルオウルが追跡中である。ただし今の場合は討伐を目的としておらず、討伐可能な人間の来るまでの監視という意味合いであった。
Aランク冒険者と言えども実力に開きはある。同じランク≠同じ強さではない。勘違いされやすいが下位ランクこそランク間の強さというものの誤差が少ないのである。そして魔物ランクもまた同じことが言える
便宜上、冒険者ランク=魔物ランクの強さとされてはいるが中には異常種、希少種があり人の方もまたTPOにより強さは変わるもの。目安でしかないのである。
Aランク上位のクラスターベアがAランク下位であるベノンヴァイパーに手も足も出ずやられるなどありえないことだあった。しかも倒されたクラスターベアを調べてみると顔の皮膚、そして内臓も解けていたらしい。もはや知られている毒ではない。あれは間違いなく異常種。決して人里に近寄らせるわけにいかない。
その時、詰所に数人の男たちが入ってきた。
「どうしたよトーマス?辛気臭い面だな」
入ってきた男の言葉を聞きトーマスと呼ばれた男は苦笑いを浮かべる。
グレイアッシュの髪にゴールドの瞳。気弱なものは見るだけで委縮するような風格を持った男。
Aランクパーティ「草原の王者」を率いる男レオン・オーロであった。
「お前さんたちか」
トーマスの言葉に驚きはなかった。大陸にはSランクパーティは5組。しかしとある事情により二組は行方知れず。一組は一人を残し壊滅という状態である。残る二組もおそらくその間接的な元凶を担っているこの国を守りには来ないであろう。自然導き出される上位ランクとして最大戦力を誇るのは間違いなくこの不遜な男達であった。
「お前が手も足も出なかったてのは本当か?」
「本当だ、あれは固くてしなやかすぎる。俺じゃあ相性が悪いな」
トーマスの返事にレオンは片眉を上げる。そこには奇妙なニュアンスが含まれていた。
まるで試合に負けて相手を讃えるかのような
「おいおい、どうしたんだよ?何か言いたいことでもあるのか?」
目の前の男を見る。よく知っている。自分は特攻のパワータイプ。彼はスピード寄りの静観バランスタイプ。それぞれ違えどなぜかウマが合い駆け出しのころから競い合ってきた。
だからこそこの男が通じなかった相手と聞きここまでやってきたのだ。
「ああ、そうだな。聞いてくれ・・・・」
トーマスはレオン、そして彼のパーティに話し出した。
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なんかうっとうしいんだよなぁ
最初は一匹ついてくるのかと思ったのになんですか?この視線。
昼も夜もジーっと見られている。プライバシーなんてあったもんじゃない。
まあそれを言えば素っ裸で森に寝そべっているんだけどな。
あれから一週間くらい、徐々に森の外に近づいてきた。
一気に行ってもいいんだけど大パニックになりそうだからと思ってここで足踏み。
人型でないと流石に無理だよなぁ。でもこの間の人たちより強い人でないとやっつけてもらえないし。
てか待って?この身体って毒持ちだけど喰ってもらえるんだろうか?
見たところ艶々の鱗はいい素材になりそうなんだけどお肉は捨てられそうな気がする
どうなんだろう?最悪素材として粉末になって漢方薬かなんかで、いやいやそんなに長く持つのかって話だし、うーん謎だ。
流石に見られてる時に変な魔法の練習もできないし。暇なんだよね
とりあえず毎日の屈伸とストレッチ筋トレのためにジャンプ、ダッシュとかやってるんだが
最初はみんな気合い入れて探してくれたしビビってくれたのに今じゃ何も変化がない。
なんか奇行をしている人を見る目な気がするんだけどなぁ。
いいじゃんそれくらい。木に巻き付いてへし折ったときなんか流石に自分でもびっくりの筋力だったけど。
それも一回見ただけで慣れられたんだが。
あれ?今気づいたけど魔法なくても十分変な蛇だ。
危険な魔物っていうよりはイタイ子として見られていたりして。




