15話
ラティはセフィロト直属の部下(見習い)として首都に一緒についていくこととなった。
出発前の送別会はメインが本戦出場の二人とヘッドハンティングされたラティ。父親が感極まって抱き着いたラティに嫌がられてすねてこちらに抱き着いてきたが、まあそれだけ愛娘が可愛いのだろう。おっちゃん(といっても見た目は若い大学生くらいのイケメン)に抱き着かれるのは遠慮したいが気持ちがわからないでもないのでヨシヨシしてあげた。もっともすぐに引きはがされてセフィロト(グリード)に強奪されましたが。
こちらとしても紛いなりにも女性のほうがいい。
しかしなぜかそのタイミングでメールを入れてきた。そんなことしなくても直接言えるのに。
顔を見ると頭を抱えるようにしてきて
「みんなが寝静まってから読みなさい。今はだめ」
その表情を見て何も言えなくなってしまった。
その後夜も更けて会はお開き。泥酔した父親と大長はそれぞれ保護者に引っ張られていき
こちらは鳥小屋へと戻ってお休みなさい。
と思った時にラティが来た。
「今日はいっしょにねましょ。」
藁の巣の中に丸まっている横に寄り添うように潜り込んでくる。記憶にあるよ。大きさは違うけれど雛の時はずっと一緒にいてくれたもんね。
今は羽毛布団で包み込んであげられる。ヴァースとしてはとてもうれしいんだろうな。
眠るまで彼女は話していた。セフィロトにあこがれていたこと、彼女を目指してタイニーロックの操獣士を目指したこと、そして雛のころからいっぱいかわいがってくれたこと。二人の思い出ともいえる話。
ごめんよ。自分はヴァースじゃないその気持ちを伝えるべき相手は自分が奪っている。
だからこそ代わりに感謝を。羽でくるむように抱きしめヴァースならそうしたいだろうと思い愛しむ様にくるむ。
いつしかラティは寝息を立てていた。
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From Greed
Sub
ごめんなさい。面と向かって言えないのでメールをします。
まずは連絡事項。
全員に通達はしました。もっとも返事が返ってきたのはラストのみ。
まとまりのあるメンバーじゃないしね。そこはあきらめてくださいね。
ラストのほうは
来るのは構わない用事はないけど
って返事でしたから多分歓迎してくれることでしょう
ツンデレだからね。
場所はこの村からは西に二十日ほど行ったところのリヒタール王国。
そこのお姫様だから会うなら何とか自力でしなさいね
そして本題。
昼間にラティには貴方を連れていけないと伝えました。
気づいているでしょう?おそらくその体ではもう持たないということを。
無理をし過ぎた自覚もあると思うんだけどどうでしょうか?
あの大蜘蛛を倒した氷弾。いくつスキルと魔法を重ね掛けしてたの?
あのサイズであの威力なんて無茶をし過ぎです。本来ヴァイオレット種は平均寿命が2年
魔法を全く使わないで過ごせても4年ほどといわれるのに無茶な魔法を使い過ぎです。
貴方の不死スキル。身体に作用するものじゃないのね。あたしが何もなくモフモフしてるだけだと思ってた?こう見えても医学知識は残っているし魔法で体内精査なんて簡単なんだからね。
勿論、死なない加護と分かっているからこそ私たちの間にはさよならなんてないけれど
他の人たちにはそうはいかないものね。
そういえばかつて飼っていた子も弱っていったとき突如飛び立ち帰ってきませんでした。
死ぬのを見せたくないのかな。
決断は任せます。ラティにはあたしの経験を伝え、寿命を伝えただけ。最後まで共にいるか、そのままラストのところに行くかは思うとおりにしてください。
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全く、みんな今生の別れみたいに言いやがって。死ななきゃいいだけじゃないか。
とはいえ理由は分かった。これだけくっついてきたのは事情を知ったからなんだな。
貫通氷弾は確かに無茶だと思う。現代兵装の成形炸薬弾をイメージして糸と氷で外殻形成。
内部に毒液、火、風 形だけを整えて起爆爆発をすべて魔力によって行うというムチャブリ
あれ成形から爆発までぶっちゃけ死にそうに魔力使うんだよ。
多分ほとんどの魔力は傲慢のほうから供給しているけれど顕現させる肉体が追い付いていない
そりゃこの数日一気に老け込むわけだ
確かに長距離飛ぶのはきつくなってきたし急に体が重く感じてきてたけど
魔力使用過多とはね。まあ、実験半分みんな護る半分。後悔の余地はないから問題ないか
ラティ、元気で生きててくれ。この姿ぬくもりは今だけだけど。あいつの傍にいてくれるならきちんとヴァースの気持ちを伝えに戻ってくるからね。
鳥も涙流せるんだな。一つ大発見だよ。




