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異界で喰われて進化する?  作者: 那園曽 子規
12/29

12話

時は少し巻き戻る



元気に飛んでいく愛鳥(ヴァース)を眺めながら少しため息をつく。

完全同調はできなかった分彼女の野生に頼るしかないのかもしれない。指示は聞いてくれるのだからそれでもいいのだろう。

ふと周囲を見渡す。参加者7人が並んで自分の獣魔を操っている。その前には大型の映像魔道具。魔道具には接続魔道具から得た獣魔の視界がそのまま大型映像で見られるようになっている。

この場にいる自分以外の参加者は全員完全同調を果たしている。視覚、意思、すべてを操り人獣一体となっている。自分ではその技術がない。羨ましくはあるが気にするほどでもないと今は思う。

自分たちはほかの組とは違い確実な絆でつながっている自信があるから。


「よし!麻痺音波(スタンヴォイス)


隣の声で意識を戻す。いけない集中しなくっちゃ。ヴァースがせっかく狙っていた鹿を先に討たれちゃった。


「ヴァース、ほかの人の倒した獲物だから横取りはだめよ。別のを探しましょう」


納得してくれたようだ。ごめんね。しっかりしなきゃ。

視界情報を共有してもう一度獲物を探す。もがいている動物を見つけた。タイニーピューマ?


会場が大きくざわめく。なんだろう?サラス姉がすごく焦っている。ヴァースも気になったのかタイニーピューマのほうへ降りていく。蜘蛛の巣に引っかかっているの?このサイズの獣魔を絡めとるなんて。

また大きく悲鳴が上がるこちらからは見えなかったがピューマの視界からは確認できた。

ヴァースに振り下ろされた巨大な蜘蛛、ギガロアラクニアの脚が間一髪避けることができたようだ。


身がすくむ。怪物といって差し支えのない姿に頭が真っ白になる。

それでもヴァースは動き出した。自らの炎魔法で威嚇しタイニーピューマのほうにも炎を吐く


「熱い!何するのよ!」


「サラス姉、お願い少し我慢して!今ヴァースが糸を焼き切ってくれてるから!」


ギガロアラクニアは災害級魔獣。ヴァースの炎じゃ糸を切るくらいしかできない。

それでもなんとか注意を引いてくれているようだ

動けるようになったタイニーピューマを消火しながらも牽制だけしてくれている。


「ヴァース、あれは撃てないの?ボアを倒した氷」


(ダメだ、その隙が無いんだよ。あれは気合入れなきゃ撃てないんだから。)


何?今の声?ヴァースなの?


何度呼んでも返事はない。必死でアラクニアに対峙してくれている。


「ラティ。何か手があるのか?」ラッセルオウルを使っているウシャスが聞いてくる。


「ヴァースにはまだ氷弾の魔法があるの。でも撃つのに少しタメが必要みたいで今の状況じゃ・・」


「なら作ってやるよ」

サラス姉が言う

ウシャスも頷き同意してくれる。

「ただし、スタンヴォイスもそんなに長くは効かないかもしれない。持って10秒ってところか。それで行けるか?」


「だいじょうぶ。できるはず」

頷き返す。

「ヴァース、上空に飛んで!ラッセルオウルが10秒ほど引き留めてくれるから、その間に氷を撃ち込んで!、できるわよね?」


おそらく決意は伝わった感覚がある。ごめんね、お願いしかできなくて。

手を組み祈るしかできない。あたしの魔力ならいくら使ってもいいから無事に帰ってきて。


上空からヴァースが落下体勢に入った氷弾が前回より大きい気がする。異常な魔力を感じる。


「サラス姉、ウシャス。逃げて!早く!」


一瞬驚いたようだが一目散に逃げてくれた。しかし二匹はすぐ爆風に巻き込まれ視界が土埃でおおわれてしまう。

視界がクリアになった後には巨大なクレーターと土に汚れた3匹の姿があった。



************


「あきれたわねぇ」

危険はもうないと実感し厳戒態勢を解く。

万が一のためにいつでも村全体に結界が張れるよう魔力を練っていた。

出番はなかった。喜ぶべきことだが戦慄が走る


「あの娘?いやヴァイオレットのほうか。」


誰にともなくつぶやく。


「お怪我はございませんか?」


住民の誘導を任せていた秘書が戻ってくる。


「もちろんよ、何もあるわけないわ。見事に片づけてくれたんだもの。」


「あれがセフィロト様がヴァイオレットにこだわる理由なのですか?」


この数年来珍しく畏怖をにじませた声で聴いてくる。彼女がセフィロトと呼ぶときに説教以外で感情を込めるだなんて。少しうれしくなって微笑んでしまう


「いいえ、おそらくあれは希少種、いえ【異常種】かもしれない。少し調べないとわからないわね。でもあの子は拾い物かもしれないわ。」


「承りました。」


その返事で会話が終わる。表裏二つの意味で探し物が見つかったのは神の思し召しかしら








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