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第110話「対決ニンジャ屋敷」

「ぽんた王国」に幼稚園の遠足が来るの。

 村総出で対応しちゃって、いいのかな?

 学校さぼって、いいのかな?

 でもでも、わたし、なんだか蚊帳の外を感じるの!

 なんででしょうね?


「わらわ、お散歩なのじゃ」

「コラー!」

「うむ、なんじゃ、ポン!」

「お散歩ってなに! 今から遠足が来るんですよ!」

「知っておるのじゃ、遠足は『ぽんた王国』に来るのじゃ」

 そうなんです、幼稚園の遠足が来るんですけど……

 パン屋さんじゃなくて「ぽんた王国」に来るんですよ。

 ぽんた王国は「ニンジャ屋敷」があるからですね。

「では、行って来るのじゃ」

「コラーっ!」

「なんじゃ、さっきから怒ってばかりなのじゃ」

「お手伝いに行くんですよ、ぽんた王国にっ!」

「知らぬ」

「なんですとー!」

「わらわ、パン屋のキツネゆえ、ぽんた王国知らぬのじゃ」

「村のお店でしょ、手伝うんですよ、大変な時は!」

「ポンが行けばよいのじゃ」

「コンちゃんも行くんですよ!」

「さらば!」

 ああ、コンちゃん行っちゃいました。

 普段は飛んだりしないのに、すごい勢いで飛んで行っちゃいます。

「この女キツネーっ!」

 あ、戻って来ました。

 と、届かないところでふわふわホバリングしてるの。

「冷蔵庫のいなり寿し食べたら怒るぞ」

「手伝いは?」

「さらば!」

「コラーっ!」

 叫んでも行っちゃいました。

 いなり寿し食べちゃおうかな。

「ポンちゃんポンちゃん」

「あ、ミコちゃん」

「そんなに怒らないで」

「だって、コンちゃんサボってばっかり」

 ミコちゃん、力なく笑いながら、

「コンちゃんってそんなでしょ」

「でもでもー!」

「そろそろ怒るだけムダって思わないと」

「むー!」

 わたしの怒り、ぶつけるところはないんでしょうか?

 まったくあの女キツネはモウ!


「ニンジャー!」

 ポン吉の声。取り巻きの園児達大喜びなの。

 今日はニンジャ屋敷でお仕事です。

 本当は土曜日曜祝日しかやってないニンジャ屋敷。

 でも、遠足の予約が入ると営業しちゃうんです。

 今はまさに幼稚園の遠足が来ているところなの。

「あのー、村長さん」

「何、ポンちゃん?」

 わたし、村長さんと一緒にニンジャ屋敷の前で頑張ってるんです。

 そうそう、学校の生徒も総出で園児さん達を案内してるの。

 ポン吉はニンジャ姿で案内で忙しいから、わたしも誘導係でお手伝いなの。

「あのー、村長さんは校長さんでもあるんですよね?」

「そうね」

「みんなして、学校休んでいいんです?」

 キラーン!

 村長さんの目に殺意がみなぎってます。

 地雷、踏んじゃったかな?

「ポンちゃんだって、『中学生』って設定よね」

「そうです、『中学生くらい』って設定です」

「ポンちゃんだって、毎日働いてるじゃない、学校来ないで」

「都合のいい時はタヌキって設定になるんです、タヌキの恩返し」

「卑怯っ!」

「で、学校総出で休んじゃっていいんです?」

 そうそう、ニンジャ屋敷のまわりには学校のみんながいるの。

 幼稚園の子供達が逃げないように……なんだって。

 でもですね、正直言うと、みんなのお手伝い、すごく助かってるの。

 ポン吉とわたしだけじゃ、大変だもん。

 それに……

 園児はなにするか、行動読めません、キケン!

「村おこしの為なの!」

「でも、学校休むのダメなんじゃないです?」

「ポンちゃんにまともな事言われるとは……」

「わたしは村長さんがみんなを手伝わせてる方がびっくりです」

「そう?」

「てっきり吉田先生の仕業かと思いました」

「ああ、あの髭男」

「髭男……吉田先生なら、言い出すかなって思ってました」 

 村長さん腕を組んで悩ましい顔。

 でも、急にわたしの方を向いて、

「髭男はどうしたの? さっきから見えないけど?」

「そう言えば……見ませんね」

 見回しますが、吉田先生はいません。

 村長さん、頭から湯気を立てながら、

「あの髭男、手伝えって言ったのにサボってる!」

 すごい剣幕で村長さん行っちゃいました。

 吉田先生手伝いに来てくれるんでしょうか?

 それとも村長さんにシメられちゃうんでしょうか?

 まぁ、わたしはわたしの出来ることをしましょう。

 コラコラ、園児、勝手によそに行かない!

 まったく目を離すと子供はどこに行くかわかりません。

「お前、なんだよ!」

「ちょっと、しっぽあるわよ!」

「あんた、ここの子?」

 園児達の声を聞いてると……レッドを取り囲んでいます。

「けのいろがあかいからレッド!」

 レッド、自己紹介するとすぐに一人をつかまえて、

「あそんであそんで~!」

 園児達、びっくりしていますが、男の子の一人がレッドのしっぽをさわりながら、

「お前、きつねかよ!」

「そうでーす!」

 正体明かしちゃっていいのかな、でも、レッド、隠せるようなタマじゃないですね。

「きつねなら遊んでやれねーな」

「てれずともー」

「照れてねーよ、ばーか」

 男の子、レッドの頭をグリグリ。

 でもでもいじめてるみたいじゃないですね。

「しょうがないな、遊んでやらないでもないか~」

 そんな男の子の言葉に、他の園児達も盛り上がってます。

 わたし……「遠足のしおり」発見。

 ちょっと気になったから、見てみましょう。

 手を伸ばすと、

「ポンちゃん、なにやってるの?」

「あ、千代ちゃん」

「今から忙しくなるんだから、そんなの読んでるひまはないよ」

「そうなんですか?」

 千代ちゃん、パンパン手を打つと、

「はい、遊ぶのはごはんの後でーす」

「えー!」

「返事は?」

「はーい」

 みんな気のない返事です。

 千代ちゃん、園児達を見回してから、ちらっとわたしに目をくれます。

『なに? 千代ちゃん!』

『ポンちゃん、だまってしっぽを出す!』

『え?』

『だまってしっぽを出す!』

 って、千代ちゃんわたしを捕まえると無理やり園児達にしっぽを見せて、

「はい、このお姉さんのしっぽをつかまえて、後に続いてください!」

「!!」

 い、痛いっ!

 園児の半分がわたしのしっぽをつかんで見上げてます。

「うお、なんだ、すごいしっぽ!」

「さわり心地サイコー」

「ちょ、ちょっと、優しくさわってくださいっ!」

 うう、いつもならチョップなところですが、よそさまの子供にそれはできません。

 残り半分、女の子達はレッドのしっぽなの。

「ふさふさ~」

「気持ちいい~」

「くすぐった~い」

 レッド、うれしそうにモジモジしてるの。

 わたしとレッドで、園児達をおそば屋さんへ。

 お店の中に入れば、みんなすぐに席に着いてくれました。

「いただきま~す」

 みんなざるそば、好きみたいですね。

 よかったよかった。

 さーて、わたしも配膳しまくりです。

「ポン姉、助かります」

 あ、ポン太はさっきニンジャ屋敷にいませんでしたよ、こっちでお昼の準備してたの。

「ポン太、どんどん作って、子供でもざるそばだからすぐになくなっちゃうよ」

「うん」

 ポン太、すごいスピードでおそば茹でまくり。

 わたし、ポン吉に目で合図。

 ポン吉も察したのか、すぐに園児達の真ん中へ……そして、

「おかわりは?」

「はーい!」

 一声はさっきレッドをグリグリした男の子です。

 ポン太が茹で上がったおそばを氷水の中に落とすの。

 わたし、すぐにざるですくってポンポン水切り。

 すぐさま現場待機のポン吉に「投げ」ます。

 受けたポン吉、やさしく男の子のセイロの上におそばを置くの。

「はい、一丁あがりっ!」

 ポカンとする園児達。

 でも、すぐに満面の笑みになって、

「ぼくもぼくもっ!」

「わたしもわたしもっ!」

 おかわりラッシュですよ、ポン太茹でまくり、わたし投げまくり、大回転なんだから。

 おそば屋さん、ちょっとした戦場みたい。

「ぽぽぽポン太っ!」

「なにっ! ポン姉っ!」

「質問がっ!」

「手短にっ!」

「長老は?」

 ポン太、苦々しい顔で、

「老人ホームに逃げちゃったんです」

「ええっ! 逃げた!」

「遠足って聞いたらすぐに逃げちゃったんです」

「長老、だんだんコンちゃんに似てきたような……」

 ともかく長老いない分頑張らないといけません。

 園児達、モリモリおそばを食べてます。

 そのちっちゃな体のどこにどれだけ入るんですかっ!


「はーい、お昼を食べたら今度は神社ですよ~」

 幼稚園の先生がみんなに声かけします。

 わたし、片付けしながら、

「へぇ、これから神社なんだ、ヌシに会うんだ」

 クジラみたいに大きなナマズ、みんなきっとびっくりするんだから。

 園児達、ぞろぞろと先生に付いて行くの。

「!」

 またまた遠足しおりを発見!

 誰かが忘れちゃったみたい。

 ちょっと中が気になりますね。

 わたし、さっそく手に取って中を……

「ポン姉」

「な、なんですか、ポン太」

「見てないで早く持ってってください」

「う、うん……」

「忘れた子、泣いちゃうかもしれませんよ」

「そ、そだね、じゃぁ、ダッシュで!」

 わたし、ポン太の真剣な目に圧倒されて駆け出すの。

 ふふ、子供の足じゃまだ遠くに行ってません。

 って、行っても神社なんですけどね。

 すぐに追いついて、

「忘れてる人、いませんか~」

 わたしの声に、みんなが振り向きます。

 それからカバンの中を確かめてブンブン首を横に振ってるの。

「あれ? じゃあ、これは誰さんの?」

「あ……」

 声を上げたのは先生です。

「どうもありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして」

 幼稚園の先生、ニコニコしながら受け取ると、

「あの……ポンちゃんってあなたですか?」

「はい、そうですよ」

「そうですか……」

 じっとわたしを見ています。

「どうしました?」

「いえいえ……」

 先生、今度はわたしの後ろに回り込んでしっぽを見てるの。

「本当にタヌキなんですね」

「コスプレなんですよ」

「はぁ……えっと、コンちゃんって人もいるんですよね」

「パン屋さんにいますよ」

「パン屋さんにいるんですか……そうなんですか」

 幼稚園の先生、言うだけ言って、行っちゃいました。

 なんだか様子がちょっと変……に思えたんだけど、どうなんでしょうね?

 さて、遠足のしおりも渡したし、帰るとしますか……でもでも、もう帰っても仕事ないですね。

 それなら遠足に付いて行くとしましょう。

 レッドもなんだかまざってますしね。

「!!」

 階段を上がったところにある神社。

 行ってみたら、老人ホームのみなさんもいるんです。

 長老に、そしてコンちゃんやシロちゃんもいます。

 村長さんもいるから聞いてみましょう。

「みんな、どうしたんです?」

「ああ、ポンちゃん、もう来たのね」

「ええ……忘れ物を届けついでに……もうおそば屋さんで仕事ないし」

「どっちにしてもポンちゃん呼びに行こうと思っていたのよ」

「えっと……そうだ、なんでここにおじいちゃん達がいるんです?」

「……」

「幼稚園の遠足、子供見たさです?」

「まぁ、それもちょっとはあるんだけど……」

 話しているとしっぽに激痛。

 見ればレッドがにぎってます。

「ポン姉ポン姉っ!」

「レッド、痛いからやさしく……じゃなくてしっぽはダメ」

「ポン姉ポン姉、これこれ!」

 レッドが手にしているのは「バッチ」なの。

 ニンジャ屋敷のバッチなんだけど……

 ニンジャ屋敷は来た回数で新しいバッチが貰えるの。

 1回目は「入門」で、回数が増えると「級」とか「段」になっていくの。

 レッドの持っているのは「九段」19回目と思います。すご!

「レッド、これ、どうしたんです」

「おにいちゃの」

 って、レッド、さっき頭をグリグリしていた男の子の手を引いてます。

 男の子、自慢気に、

「もうニンジャ屋敷、しっかり覚えちゃったぜ」

「ふわわ……ここの常連さんだったんですね」

「俺以外にも段のヤツ、たくさんいるぜ」

 はて……わたし、ニンジャ屋敷を手伝う事多いけど……

 そうか、今日は幼稚園の制服だから気付かなかったのかも。

 でもでも……わたし、男の子に質問です。

「ねぇねぇ」

「なんだよ!」

「そんなに何度も来て、飽きない?」

「ちょっと飽きたかな?」

「この遠足は誰が決めたの?」

「先生」

 むー、園児達に選択権はないようですね。

「それじゃ、つまらなかったでしょ?」

 でも、男の子、すごい笑顔になって、

「そんな事ないぜ、オレ、今日は……」

 そこまで言って、幼稚園の先生がやってきました。

 さっきの先生とは別の先生ですね。

 男の子の頭にゲンコを投下すると、

「まったくちょろちょろしてモウ!」

 先生、男の子を抱きあげて、

「ふふ……私、レッドちゃん目当てでこの遠足決めたんです」

「あー、レッド好きーさんでしたか」

「レッドちゃんはかわいいのに……リアル園児は生意気ばっかりで」

 微妙な幼稚園の先生ですね。

「でも、子供達、ブーたれませんでしたか?」

「ええ、ブーたれてました」

「強行したんです?」

「まさか~」

 わたし、遠足のしおりがあるから手を……

 って、先生、しおりをさっと手にして行っちゃいました。

「じゃあ、楽しみにしてますね~」

「はーい」

 って、なにが楽しみなんでしょうね?


 って、なんだかわかってきましたよ。

 神社の広場に「リング」があるの。

 幼稚園のみんなも、老人ホームのみなさんも、学校のみんなも集まってるし。

 ニコニコしているレッドすきーな幼稚園の先生を捕まえます。

「ちょっといいですか?」

「ポンちゃん……」

「レッドすきーさん……パン屋さんの常連さんですよね?」

「え、ええ……」

「遠足のしおりを見せてください」

「……」

 どーもさっきからしおりが見れない見れないって思ってました。

 偶然と思っていたけど、絶対ここにはなにか書いてあります。

「見せるんですよ!」

「ポンちゃんこわーい」

「い・い・か・ら!」

 レッドすきーな先生、しおりを出してくれます。

 見てみれば……ほーら、やっぱり。

 最後には「女子プロレス」なんです。

「な、なんでプロレス?」

「だ、だって子供達、ニンジャ屋敷だけだったら嫌そうだったし」

「さっきの子、常連さんでしたもんね」

「でも、お祭りの時の女子プロレスは伝説」

「伝説……なんだ……」

 って、リングにコンちゃんが上がってます。

「コラーっ!」

 コンちゃんわたしを指差しながら叫びます。

「この神を神とも思わぬたわけタヌキがっ!」

 サボリ神のコンちゃんに言われたくないな~

「この戦いの舞台で、どっちが偉いかはっきりさせるのじゃ!」

「わたしが先輩だもん」

「わらわは神なのじゃ」

「じゃ、お店出て行って神社でも住めばいいのに」

 って、たまおちゃんわたしの隣にやって来て大声。

「私はいつでもウェルカムです」

 桃色オーラが面倒くさい~

 コンちゃん、ちょっとびびりながら、

「どうでもよいのじゃ、まずはポン、おぬしを倒すっ!」

「わたしはどうでもいいかな~、ケンカしちゃいけないんだよ」

 わたし、別に戦うの、いいんです。

 でもでも、わたしにだけ全然話が来てないのが気にいりませんよ。

「ケンカはいけないんです」

 チラって周りを見てみます。

 みんなブーブー言ってるの。

 あ、今度はミコちゃんがリングに上がりました。

「今回の賞品は『いなり寿し』で~す!」

「やったー!」

 コンちゃんは大喜び。

 わたし、リング際まで行ってミコちゃんを手招き。

「あのー」

「どうしたの、ポンちゃん、朝はあんなに怒っていたのに」

「だって、わたし抜きで話が進んでいるのが気にいらないもん」

「そうなんだ……」

「それに、わたし、いなり寿しもらっても……」

 ちらっとリングを見れば、コンちゃん飛び跳ねて喜んでいるの。

「やったー! いなり寿しわらわのものじゃー!」

 コンちゃんはいなり寿しさえあれば……だもんね。

「ポン、戦わなくてよいぞ、いなり寿しいただきなのじゃ」

「はいはい、ケンカはいけないもんね」

「そうなのじゃ、ポン、出るな、わらわ不戦勝なのじゃ」

 そうなんだよな~

 なんだか今回、女子プロレスする気になれないんです。

 だってわたしだけ話が来なかったんだもん。

 ミコちゃんが手招きしてます。

 なにかな?

「ポンちゃん戦うじゃない」

「?」

「勝てそうにないの?」

 ミコちゃん、心配そうに言います。

「コンちゃん、術使うもんね」

「……」

「ポンちゃんでも勝てないか……コンちゃん神さまだもんね」

「なに? ミコちゃん、戦わせたいの?」

「だって子供達、女子プロレス楽しみにしてたのよ」

「……」

「おじいちゃん達も楽しみにしてたみたいだし」

 そーですよ、村総出でリング囲ってるんです、どんだけ楽しみにしてるんですか。

「村長さんや、遠足企画したポン太くんも困るから、戦ってよ~」

「でもでも、今回はそんな気になれないんです~!」

 わたしだってほっぺ膨らませてふてくされるんです。

「賞品もいなり寿しだし、プリンだったら戦ってもよかったかな~」

「ねぇ、ポンちゃん」

「なに、ミコちゃん」

「ポンちゃんが勝って、いなり寿しをゲットしたら面白くない」

「?」

「コンちゃん大泣きするわよ」

「!!」

 俄然、戦う気になりました。

「わたし、やる、ミコちゃんコスチュームチェンジおねがい」

「やったー、さすがポンちゃん、ポン先輩っ!」

「ミコちゃん、持ち上げなくていいから、早く」

 ミコちゃんが指を鳴らせば、わたしは体操服姿にコスチュームチェンジ。

 さっそうとリングに上がるの。

「ふふ、コンちゃん覚悟っ!」

「むむ、ポン、神のわらわに勝てると思っておるのかの?」

 むう、コンちゃん、さっきまでのバカ喜びどこかに行っちゃってます。

 わたしをじっと見ているの。

 冷静だと神のコンちゃんに勝てません。

 ここは挑発するに限ります。

「コンちゃんなんか、戦う前から負けてるんですっ!」

「なにをっ!」

「冷蔵庫のいなり寿し、食べちゃったもんね~」

「なーにーぃっ!!!!!!!!!!!!!!」

 コンちゃんの髪、うねりまくってるの。

 怒りで我を失ってますよ。

 ついでに滝のような涙なの。

「食べないって言ってたのにー!」

「食べちゃった」

「うそつきー!」

「食べちゃった」

「バカタヌキ!」

「食べちゃった」

「ゆるさーんっ!」

 さーて、ゴングです。

 突っ込んでくるコンちゃんに、わたしもダッシュなの。

 どっちが勝ったかですって?

 それは想像にお任せで~す。


「いらっしゃいませ~」

「あの、あの……食事がしたいんですが……」

「お好きなパンを選んでください、お飲み物は注文してください」

「そ、そうなんですか……アイスコーヒーをおねがいします」

「はい、テーブルはここでいいですね?」


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