第114.5話「温泉ツアー」
『ねぇねぇ、コンちゃん』
『なんじゃポン』
『温泉の神さまを教えた方がいいですかね?』
『うむ……うむ……』
『温泉の神さま、見せたらびっくりしませんかね?』
わたしとコンちゃんが配達から帰っていると……
軽トラックがやって来て、わたし達の前に停まりました。
先日やって来た二人の職人さんが降りてわたし達に言いがかり。
「ポンちゃんよう、困るなぁ」
「おうおう、本当に困るぜ」
「な、なんですか、いきなり!」
「監督、現場に戻っちゃったじゃね~かよ」
「折れてたってのに、速攻戻って来たじゃないかよ~」
最初はわたしに因縁つけてた二人ですが、すぐにコンちゃんに目を向けて、
「まさかコンちゃんじゃねーだろうな?」
「術で治したんじゃねーだろうな?」
「おぬしら、わらわを疑っておるのかの」
「だって山を壊したりダムを壊したりするじゃんかよー」
「わらわは攻撃系とお色気系なのじゃ」
って、二人、なんとなく納得したみたい。
でも、すぐにわたしに向かって、
「じゃあ、どーして監督治っちゃうんだよー!」
って、わたしをゆすらないでくださいモウ。
『ねぇねぇ、コンちゃん』
『なんじゃポン』
『温泉の神さまを教えた方がいいですかね?』
『うむ……うむ……』
『温泉の神さま、見せたらびっくりしませんかね?』
コンちゃん考える顔をしていましたが、
『こやつらは知らんようじゃの』
『ですね、わたし達に文句を言うくらいだから』
『現場監督はその辺をしゃべっておらん訳じゃ』
『でしょうね』
『温泉の神の事は秘密にした方がよいのかのう?』
『でもでも~』
『?』
『温泉の神さまは普段は姿を見せないんですよ、姿を見せずに熱くなったりするんです』
『最初はそうだったのう、イタズラと思われておったのじゃ』
わたし、めんどうくさくなりました。
二人の職人さんに、
「温泉には神さまがいるんですよ~」
二人の職人さんだけじゃなく、コンちゃんもびっくり顔。
「温泉の神さまが現場監督さんの腕を治しちゃったんです」
二人の職人さん、わたしをゆすりまくりです。
「バカにすんじゃねーよ」
「おいゴラァ!」
「お二人は温泉に入った事あるんです?」
って、二人は首を横に振ってます。
現場監督さんもそうだったけど、工事現場の人は宿舎のお風呂に入っちゃうんでしょう。
「お二人は、大きなお風呂、好きじゃないです?」
「あー、好きかも」
二人はもってますよ。
「じゃあ、神さま見に行きましょう」
わたし、二人の腕をつかまえて引っ張って行きます。
コンちゃんちょっと嫌そうな顔をして、
『これ、ポン!』
『なんです?』
『温泉の神の事をバラしてよいものかの?』
『あの神さま、めんどうくさいから、どーなってもいいもーん!』
『おぬしも……待て、ちょっと待つのじゃ!』
『?』
『現れるかのう』
『!』
『普段は現れんのじゃ』
『レッドがいるから姿を見せる……ですね』
考えすぎでした。
二人の職人さん、温泉を見た途端。
「ひゃっほーっ!」
ああ、掛り湯もしないで入っちゃうと「出ます」よ。
ザブンと音がしたと思ったら、一気に浴室の温度が上がります。
お湯が揺れて、盛り上がって、龍の姿になりました。
「たわけ者ーっ!」
待ってました、温泉の神さま登場なの。
ふふっ、カンカンに怒ってます。
職人さんは固まって、温泉の神さまを見ているの。
「これ、湯に入る前に掛り湯もせぬとは何事か!」
まぁ、わたしもそれは賛成かな。
職人さん子供じゃないんだから、マナー守りましょ。
「そんなたわけ者には天誅じゃ!」
ああ、浴室がどんどん暑くなるのがわかります。
湯気でむんむんなんですもん。
でもでも職人さん達、ビビって動けないみたい。
「覚悟するのじゃ!」
ああ、温泉の神さま、今まさに放水・放湯です。
職人さんに向かって口を開いているの。
「ちょっと神さまーっ!」
「なんじゃ、タヌキ娘」
とりあえず発砲は阻止しました。
でも、怒りは収まってません。
「神さま、ここで殺人とかダメですよ」
「我慢ならんのじゃ」
「職人さん達、ちょっとはしゃいだだけでしょ」
「許さん」
カンカンなんですね。
むー、機嫌を直してもらうには、アレしかないです。
『コンちゃんっ!』
『なんじゃ!』
『レッドを召喚して!』
『おお、なるほど!』
コンちゃんが指を鳴らせば、いきなりレッド登場です。
わたしの胸元に落ちてくるレッド。
丸くなって寝ています。
お休みの時間だったかな?
「神さま!」
「なんじゃ、タヌキ娘っ!」
「レッドがいますよ~」
「!」
「ほらほら、寝てますよ~」
「!!」
「あやしてみますか~」
「いいのか、いいのかー!」
ああ、もう温泉の神さま、目尻下がりっぱなし。
とぐろを巻いた神さまにバトンタッチです。
「おお、レッド、かわいいのう、眠れ良い子よ~」
温泉の神さま、レッドをあやして怒りはどっかに行っちゃいました。
さて、その隙にわたしとコンちゃんで職人さんを引っ張り出します。
大事な所は洗面器で隠してください。
脱衣所まで戻ったところで、
「神さま、見ましたか」
二人の職人さん、コクコク頷きます。
「はじめて神さま見たぜ」
「俺もびっくりだ」
途端にコンちゃんの髪がうねります。
「おぬしら、わらわも神なのじゃ!」
またですよ……コンちゃんいつもお店でグダグダしてるだけだもん。
「おぬしら、わらわも神なのじゃー!」
「え? コンちゃん神さまだったの!!」
「なんじゃとー!」
「だって……なぁ」
職人さん達、お互いに見合って頷くと、
「やる気のない飲み屋のねーちゃん」
「やる気のないコンビニのねーちゃん」
二人言います。
わたし、正解って思うの。
コンちゃんはカンカンなんだけどね。
はい、これにてポン村9クールめ、終了です!
みなさんどうでしたか~
新しくやってきた花屋のおにいさんの活躍とか…
花屋の娘さんの暗躍とか…
まだまだお話続きます。
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よろしくねっ!