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第117話「水族館に遠足」

「いるかしょー!」

「バカね、時間にならないとショーはないのよ!」

「ええー! そんなー! わらわすぐに見たいのじゃ!」

 率直なわたしの感想ではみどりが一番大人発言。

 やっぱりコンちゃんは不安。


 居間ではレッドとみどり、コンちゃんが盛り上がっています。

「ぼくのはあおいろ」

 レッド、イルカのぬいぐるみを自慢気に見せてます。

「ワタシのはピンクよ」

 みどり、ピンクなイルカを抱っこしてるの。

「わらわのは白イルカなのじゃ、●カーなのじゃ」

 コンちゃんもいつの間にかゲットしてたみたい。

 きっと配達人におねだりしたんですよ。

「いるかしょー、たのしみー!」

「ワタシも!」

「わらわもじゃ」

 ああ、なんだか3人して宙を見て恍惚としてるの。

 どんな楽しい想像をしてるのかな。

 ミコちゃんがやって来て、

「ほらほら、明日は遠足だから、早く寝なさい」

「「「はーい!」」」

 3人してはもってるの、

 でも、コンちゃんはミコちゃんに捕まって、

「コンちゃんは皿洗い当番でしょ」

「うえ!」

 なんだかちょっとかわいそうかな。

「わたしも手伝うよ」

「ポン、優しいのう」

「なんたってここでは一番の先輩ですから」

「ポン先輩、よろしくお願いします」

「お任せっ!」

 ああ、「先輩」っていい響きです。

 でもきっと「よいしょ」ですね。

 それをわかってても、ちょっとコンちゃんとお話したかったんです。

 超大切な話なの。

 コンちゃんがジャブジャブお皿を洗って、わたしが濯がれたのを拭きあげながら、

「ねぇ、コンちゃん」

「何じゃ?」

「コンちゃんは、水族館に行った事ある?」

「ないが……どうしてかの?」

「コンちゃんは白イルカだよね」

「そうなのじゃ~モフモフのムクムクなのじゃ、今度ポンにも抱っこさせるのじゃ」

「ありがとう……で!」

「で?」

「コンちゃんはイルカ、知ってるんだよね」

「ポン、わらわをバカにしておらんかの!」

「コンちゃん、すごい真面目な話なんだけど……」

「な、なんじゃ!」

「ちょっと、洗うのストップ、イルカのぬいぐるみを召喚して」

「な、何事かの」

 コンちゃん、変な顔をしながらもぬいぐるみを召喚。

 出現した白イルカのぬいぐるみを撫でながらコンちゃんが、

「焦らずとも抱っこさせてやるがの」

「で、その白イルカさんですが……」

「ふむ?」

「実物のイルカさんの大きさ、知ってます?」

「知っておる、ずっと大きいのじゃ」

「あ、コンちゃんはちゃんと知ってるんだ」

「バカにしておらんかの」

「で、レッドやみどりは知ってるんでしょうか?」

「!!」

 コンちゃん、固まってます。

「あの二人、泣かんかの」

「びっくりするかもしれませんね」

「しかしもう遅いのじゃ、遠足は明日なのじゃ」

 もう、なるようにしかなりません。

 明日の遠足でレッドとみどりが泣きませんように。


 ここは水族館前です。

「はーい、みんな、しっぽを付けましたか~」

 村長さんが言うと、みんなしっぽを付けます。

 これでわたし達の正体もばれませんね。

 コスプレって事になっちゃうんだから。

 今日は一緒している配達人さん、その様子を見ながらしっぽをつけてます。

 配達人さんのしっぽは犬みたい。

「ふーん……」

「配達人さん、どうしたんですか?」

「いや、最初はコスプレって事だったんだけど……」

「ですね」

「こう、みんなでしっぽを付けると迷子対策かなって」

「あー!」

 みんなしっぽを付けてるから、村の子は一目瞭然ですね。

 村長さん、遠足のしおりを示しながら、

「今日は時間まで自由に見学していいです、でも、他の人の迷惑にならないようにね」

 他人の迷惑……ちょっと不安です。

 レッド……はしゃぐよね?

 みどり……夢中になりそう~

 コンちゃん……たまらなく不安!

 問題の3人は

「いるかしょー!」

「バカね、時間にならないとショーはないのよ!」

「ええー! そんなー! わらわすぐに見たいのじゃ!」

 率直なわたしの感想ではみどりが一番大人発言。

 やっぱりコンちゃんは不安。

『村長さん村長さん!』

『な、何、ポンちゃん、小声で』

『わたし、レッドやみどり、コンちゃんが不安ですっ!』

『コンちゃんが不安なの?』

『ある意味大きな子供なんです』

『あー!』

 村長さん、あきれ顔で3人を見ていますが、

「でも、多分大丈夫よ」

「村長さんすごい楽天家~」

「ポンちゃんもわかるわよ……この3人が一番手がかからないかもしれないわ」

「えー、どうしてそうなるんですー!」

「ふふ……カンだけど、きっと当たるわよ」

 わたしと村長さんで問題の3人の後に続きます。

 迷惑かけないようにって言ってたのに、早速ダッシュなの。

 でも、そんな足が止まっちゃいますよ。

 大パノラマ水槽の前で固まってるの。

 わたしもついつい見入っちゃいました。

 大きな水槽にたくさんのお魚が泳いでいるのは圧倒なんだから!

「村長さん、わたし、水族館は知ってるつもりだったけど……」

「何?」

「こうも大きいと感動ですね」

「でしょ……で、コンちゃん達はどう」

「コンちゃん達……」

 見れば3人、水槽にかじりついて動きません。

 でも、3人のしっぽはブンブン振れまくりなの。

 むむ……もう一人います。

 ポン吉です、ポン吉。

 水槽にかじりついて目をランランとしてるの。

「おお! 大物がたくさん! 釣ってみたい! うまそー!」

 つくづく釣りキチ・釣りバカですね。

「これで多分、イルカショーまでは大丈夫じゃないかしら」

「でもでも村長さん」

「何?」

「ほかのお客さんの目が……」

 そう、他のお客さんが3人のしっぽをガン見なの。

 ああ、子供が一人、コンちゃんのしっぽに!

「むう、誰じゃ、わらわのしっぽに触れるのは!」

 ピンチ!

 かと思い気や、コンちゃん子供を見ると抱っこして、

「ほれ、おぬしもしっかり見るのじゃ、お魚たくさんなのじゃ」

 よその子供や親がコンちゃん達のしっぽを触りまくり。

 コンちゃんは水槽に気が向いてるけど……

 レッドとみどりは子供達に囲まれてそっちに気が向いちゃったみたい。

 ああ、レッドとみどりはほかの子供と一緒に「アシカショー」に行っちゃいます。

「アシカショー」……お魚じゃなくてアシカ。

 動物相手はちょっと心配かな。

 わたしも後を追いましょう。


 心配するほどではなかったですね。

 レッドとみどり、子供達と一緒になってショーを見てます。

 って、いきなりピンチ。

 係のお姉さんが、

「誰かやってみますか~」

 って、レッドとみどりをガン見で言います。

 レッドとみどりもノーブレーキで挙手!

 お姉さんもレッドとみどり、そしてポン太を指名。

「はーい、山の村からの遠足組みのみなさんでーす」

 パチパチパチ。

 みんな拍手で3人のしっぽをガン見なの。

 わたし、テレパシーで、

『ポン太っ!』

『ああ、ポン姉、なにっ!』

『レッドとみどりを頼みますよっ!』

『い、いいけど……みんなしっぽを見てるし』

『コスプレくらいにしか思ってませんよ』

 って、お姉さんはレッド達にマイクを向けて、

「お名前は?」

「けのいろがあかいからレッドー!」

「ワタシはみどり」

 ポン太が自己紹介する前に、

「ねぇねぇ、二人はキツネさんにタヌキさん?」

 レッド、楽しそうに自分のしっぽをみんなに見せながら、

「はいはーい、きつねさんでーす」

「ワタシはタヌキなんだから」

 ああ、わたしもポン太も膝が折れちゃいます。がっくり。

 お姉さんがショーを進めるのに、他の係員さんがやって来てわたしとポン太を拉致!

 バックヤードまで連れて来られると、

「ねぇ、あんた達、本当にタヌキなのっ!」

「え、えーっと……」

 わたしとポン太、返事に困っちゃいます。

 今は一応コスプレって設定なんですよね~

「ちちち違いますよ~」

 って、その時奥から声。

「ポンちゃん」

「シロちゃん?」

「もうバレバレでありますよ」

 現れたシロちゃん……配達人と一緒ですね。

「俺がばらしちゃったから」

「後でどーなるかわかってるんでしょうね」

 わたしの拳、ぷるぷる震えるの。

 配達人、そんなの気にしてない風で、

「今日、ポンちゃん達に来てもらったのは、ちょっと用事があったんだよ」

「えー!」

「だからタダで入れたんだろ~」

 配達人とシロちゃんに続いて行くと……大きなプールにイルカが泳いでいます。

 係のお兄さんがやって来ると、

「こんにちは……タヌキさんって聞いてるんだけど」

「え、えっとーもうバレちゃってるんですよね」

「しっぽあるし」

 って、係のお兄さんだけじゃなくて、職員さんそろってしっぽをモフモフ。

「怒りますよ!」

「あ、本物なんだ!」

「もうバレちゃってるんですよね」

「本当にタヌキなんだ……」

 職員さん達、じっと見ているけど……なんか反応薄い。

「あんまりびっくりしないんですね?」

「ま、まぁ、アニメや映画や昔話であるから」

 むー、アニメは異種族交流に一役買いそうですね。

 で、お兄さんが、

「イルカと話が出来ない?」

「は?」

「イルカと話、出来ないかなって思って」

 一緒にプールサイドまで行きます。

 わたし、ポン太、シロちゃんでイルカを見ながら、

『ねぇ、ポン太、イルカとお話、出来る?』

『忍術の勉強はしたけど……イルカを使う術はちょっと……』

『ねぇねぇシロちゃん、イルカを職質した事ある?』

『海は管轄外であります』

 結局みんな話なんて出来ないんです。

 3人がそろって首を横に振ると、

「そうなんだ、動物だから意思疎通できるかと思ったのに」

「今は人間なんです」

 って、配達人が、

「ポンちゃんもポン太もダメか……ポンちゃんはしゃべれると思ったんだけど」

「それ、どーゆー意味ですか?」

「いや……ミコちゃんから聞いたけど、木と話が話が出来るって」

「あー、ご神木さんですね~」

「イルカはダメ?」

 プールサイドに顔を出しているイルカ。

 むー、なに考えてるかさっぱりわかりませんね~

 配達人、わたしの背中をグイグイ押して、

「ほら、いつもの調子でコミュニケーション!」

「?」

「コラー……とか」

 もう怒った。

 配達人叩いちゃうんだから。

 ポカポカ!

「俺にコミュニケーション不要なんだけど」

「なんだかわたしがいつも叩いてるみたいじゃないですかっ!」

「叩いてるよね」

「うるさーい!」

 わたしが怒っているとレッドとみどり・千代ちゃんがやって来ました。

「ポン姉~」

「ちょっとアンタ、どこに行ってるのよっ!」

 途端に職員さん達の動きがあわただしくなりました。

 レッドとみどりを抱っこして喜んでます。

「かわいいー!」

「きゃー!」

「さっきから狙ってたのよねー!」

 レッドもみどりももみくちゃなの。

 って、お兄さんが真顔で、

「この二人はダメかな?」

 って、お兄さん、もみくちゃレッドを抱っこしてイルカの前に……

 レッド、リアルイルカを見て泣かないかな?

 おお、レッド固まってます。

 でも、すぐに笑顔。

「わーい、いるかさん!」

「レッド、こわくないんですか?」

「うーん、おおきくてびっくり」

「ぬいぐるみと同じ大きさって思ってたでしょ」

「ですでーす」

 レッド、もうイルカに抱きついて、

「でもでも、ぬしよりちいさいゆえ~」

「レッド、イルカとおしゃべりできる?」

 わたし、レッドとみどりに目をやります。

 二人はイルカをじっと見て、触ったりしてますね。

「なにをおしゃべりするですかな?」

 お兄さん苦笑いしながら、

「たまにヘソ曲げるのなんでかな~」

 レッド、コクコク頷いてからイルカさんとお話。

 でも、わたし達にはよく聞こえません。

 レッド、こっちに振り向いてから、

「ろうどうしゃのけんりともうしております」

 お兄さんの頭に怒りマークが浮かびます。

「ごはん抜くよ?」

 レッド、それを聞いて改めてイルカさんとおしゃべり。

 すぐに振り向いて、

「すとをけっこうしますよ?」

「イルカの肉とクジラの肉は一緒だっけ?」

 うわ、イルカの顔色悪くなりました。

 別にレッドを介してしゃべらないでもいいみたい。

「どうぶつぎゃくたいだ~」

「肉になれば一緒だよな~」

 お兄さん本気じゃなさそうだけど……イルカの態度に拳が震えっぱな。

 レッド、お兄さんをゆすりながら、

「せっとくするゆえ、いっしょにあそんでいい?」

「いいけど……」

「わーい!」

 ちょっとちょっと、あんまりプールに近付くと……

 近付くレッドとみどり、心配になって歩み寄るわたしと千代ちゃん。

 そんな4人の前でイルカがジャンプ。

 ザブンと大きな波がわたし達を襲うの。

「うわーん、ずぶ濡れ」

 わたしが言うと、千代ちゃんシャツをしぼりながら、

「暑いからすぐ乾くと思うけど……」

 見ればレッドとみどり、脱いでます。

 下には水着、着てるんです。

 ああ、もうプールに飛び込んじゃいました。

 イルカに乗せてもらったりして遊んでます。

 千代ちゃんも脱ぎながら……

「千代ちゃんも水着、着てますね」

「ショーで濡れるの知ってたから、校長先生に言われてたし」

「そうなんだ」

 レッド達を見る千代ちゃん、ちょっとピクピクしてます。

「レッドちゃんとみどりちゃん、なんだか曲芸じみてるよ」

 ジャンプするイルカに乗ったままのレッド&みどり。

「そうです? 漫画やアニメでありがちなシーンですよ」

 千代ちゃんが、

「あのー、あれって職員さんもできるんですか?」

 職員のお兄さんお姉さんブンブン首を横に振りながら、

「俺、あんなのアニメで見てやってみたかったんだよな~」

「子供だからかな? 軽いからかな? 私もやってみたいんだけど……」

 職員さんそろって、

「いいな~」

 レッドのあんなの、どこかで見た事ありますよ。

 思い出しました、温泉の神さまといつもあんな感じです。

 わたし、職員のお兄さんに、

「ねぇねぇ、職員さん」

「は、はい?」

「あれってすごいんですか?」

「え、ええ……乗ったままっていうのはすごい」

 職員さん、わたしをじっと見ていたかと思ったら、いきなり手を握って、

「あの二人、ショーに出してみませんか!」


 帰りのバスがゆっくり動き出します。

 わたしの隣ではみどりがスヤスヤ寝息をたてているの。

 通路を挟んで千代ちゃん、その膝枕にレッドが寝ていますね。

 そんなレッドの頭を撫でながら千代ちゃんが、

「レッドちゃん、ショーですごかったね」

「わたしもびっくりした」

 ついつい笑いがこみ上げてきます。

「職員さん、本気な顔で『働かない?』って言ってましたね」

「レッドちゃんもみどりちゃんも、訓練なしだもんね」

「ですね~、やっぱり動物同士、気持ちが通じるのかも」

「ポンちゃんは違うの?」

「今は人間なんです~」

 村長さん、みんなからコスプレしっぽを回収して数えながら、

「全員そろったわね、じゃぁ、帰るわよ~」

 配達人さん、集まったしっぽを見ながら、

「点呼になって便利かな~」

「ああ、しっぽの数で人数わかるんですね」

「このしっぽ、すごい便利かも」

 配達人はご満悦。

 でも……わたし、座席を見回します。

「なーんか……足りない気がします」

「しっぽの数はばっちりだけど」

「そうなんだ……」

 わたしの獣耳ケモノイヤーに微かに声が……

「コンちゃんの『まてー』って聞こえます」

 見ればコンちゃん乗ってません。

 よくよく見ればポン吉もいませんよ。

 バスが止まるの。

 ドアの向こうには走ってゼイゼイ言ってるコンちゃんとポン吉。

「置いて行くとはひどいのじゃーっ!」

「オレを捨てる気かよっ!」


「ポンちゃんよう、困るなぁ」

「おうおう、本当に困るぜ」

「な、なんですか、いきなり!」

「監督、現場に戻っちゃったじゃね~かよ」

「折れてたってのに、速攻戻って来たじゃないかよ~」


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