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第116話「酒豪はだれ?」

 店長さん、請求書を出します。

 よく見るのとちょっと違いますね。

 お店に来る請求書は配達人の持って来る「綱取興業」の物ばっかり。

「なんです? この請求書?」

 あれれ、見れば「ぽんた王国」の請求書ですよ?


 ごはんを食べて、お風呂も入って、テレビも見て、そろそろ寝る時間かな。

「ポンちゃんポンちゃん」

 店長さんの声。

 なにかな?

 見れば店長さん、トイレから顔を出しているの。

「どうしたんです?」

「ポンちゃん、お願いがあるんだけど……」

「紙がないんです?」

「じゃなくて……もうすぐコンちゃんが来るから、気を引いてほしいんだ」

「??」

「お願いしたよ」

「はぁ……」

 って、店長さんの言ってた通り、コンちゃんの足音ですよ。

 トイレから店長さんが目で合図。

 わたし、頷いてコンちゃんに声をかけます。

「ねぇねぇコンちゃん」

「おお、ポンではないか、どうしたのかの?」

「えへへ、ちょっとね」

 わたしが声をかける。

 コンちゃん立ち止まり。

 トイレから店長さん忍び足。

 店長さん、コンちゃんの背後からいきなり抱きついたの!

「うぉ!」

 コンちゃんびっくりして声を上げたけど一瞬なの。

 これ、以前も見ました。

 店長さんが力いっぱい抱きしめて気絶させる技ですよ。

 コンちゃん、もう落ちてます、ピクピク痙攣してるの。

「ポンちゃんポンちゃん、お布団敷いてある?」

「ええー! ててて店長さんまさかっ!」

「何か勘違いしてない?」

「だってコンちゃんとお布団ですよ」

「だってコンちゃん寝ちゃったじゃん」

「店長さんが気絶させたんですよね?」

「そうだよ」

「い、今から大人の世界っ!」

「怒るよ」

「じゃあ、この状況をどう説明するんですか?」

「いいから、部屋にお布団は敷いてあるんだよね」

「うん、敷いてあるけど」

「話は部屋でするから」

「え……わたしもいていいんです?」

「今回はポンちゃんしか相談できないの」

「え? え?」

 わたし、てっきり店長さんがコンちゃんを食べちゃうのかと思ったけど……

 わたしに相談だそうですよ。

 な、なにかな?

 このままコンちゃんを亡きものにしてしまう相談でしょうか?

 でもでもコンちゃんに保険金かけてないような気が!

 殺人は保険金かけてからがドラマの定番ですよ。


 お布団ではコンちゃんがスヤスヤ眠ってます。

 わたしと店長さん、そんなコンちゃんを見ながら、

「わたし、てっきり店長さんがコンちゃんを食べちゃうかと思いました」

「怒るよ」

「だって、あんな事しててなにもしないんですか?」

「え? 何かした方がいいの? ポンちゃん怒るよね?」

「店長さん殺してコンちゃんも殺します」

「こわーい」

 わたしも店長さんも笑っちゃいます。

「でもでも、どうしてこんな事を?」

「うん……そう……今回はポンちゃんに協力してもらわないとね」

「わたしですか?」

「うん……実は……」

 店長さん、請求書を出します。

 よく見るのとちょっと違いますね。

 お店に来る請求書は配達人の持って来る「綱取興業」の物ばっかり。

「なんです? この請求書?」

 あれれ、見れば「ぽんた王国」の請求書。

「ぽんたのお酒……の請求書ですね」

「うん、そうなんだ」

「コンちゃん美味しいって言ってましたよ」

「だからコンちゃん殺したんだ」

 わたしと店長さん、クスクス笑っちゃいます。

「で、で、なんでコンちゃん殺したんですか?」

「金額見て」

「……」

 すごい気がします。

 コンちゃんいつの間にこんなに飲んでるんでしょ。

「ててて店長さん……もしかして、おそば屋さんでもツケが……」

「!!」

 店長さん固まっちゃいました。

 ガクガク震えながら、

「と、ともかくコンちゃんを眠らせ続けて、酒代を削らないと!」

「わ、わたしも協力します!」

 って、ちょっと待ってくださいよ……

「店長さん店長さん!」

「何? ポンちゃん?」

「倉庫にお酒、いっぱいあったように思います」

「あ……俺も見た事ある……いっぱいある」

「もう来ちゃってるから、次の請求来ますよ」

「うう……ともかく飲ませないの」

「りょ、了解っ!」

 しっかしコンちゃんさすが神さま。

 飲む量がハンパないです。

 うーん、あの容姿だから、水商売ぴったりかも。

 な、なんでパン屋の娘やってるんでしょ?


 コンちゃんを眠らせて……いるんですが……

「むー!」

「ぬー!」

 わたしと店長さん、腕組みして考える顔。

 お酒、減ってます。

 どうも呑兵衛はコンちゃんじゃないみたい。

「次はシロちゃんだな」

 店長さんの命令でシロちゃんを眠らせ続けました。

 でも、お酒の減る量は減りません。

「では、たまおちゃん」

 店長さんの命令でたまおちゃんもやっつけちゃうんです。

 そこに来て、ようやく「ミコちゃん」と判明したの。

「ま、まさかミコちゃんが呑んでいたとは!」

「わ、わたしもびっくりです!」

 店長さん、請求書を持ってミコちゃんに詰め寄ります。

 ミコちゃん、呆然として、

「わ、私、そんなに呑んでいたかしら!」

「ポンちゃんと俺でここしばらく様子を見てたの」

「そ、そうなんですか……」

「コンちゃん達を眠らせてたから、本当にミコちゃんだけなんだよ」

「うう……そうなんですか……」

「わたしもびっくりした、ミコちゃんすごい呑んでるんだもん」

「ぽ、ポンちゃん言わないで」

 でも、わたしも店長さんも、首を傾げちゃうの。

 ミコちゃんすごい反省してるし、本当に呑んでいる感じじゃないんです。

『店長さん、なんだか微妙な気がするんですけど』

『ポンちゃんもそう思ったんだ……ちょっとミコちゃんの事を知ってる人は……』

『コンちゃんですね』

 わたし、すぐに眠らされているコンちゃんを起こして連れてきます。

「むむむ……わらわが呑んでおるとでも思っておったのかの!」

「怒るのはいいから、ミコちゃんが呑兵衛なのはどうしてですか!」

「わらわに聞くのかの?」

「だってミコちゃんと昔からの付き合いですよね、知り合いですよね」

「敵じゃったがの」

 コンちゃん、視線が天井を泳いでから裸電球が点灯。

「もっと深い付き合いがおるのじゃ」

 コンちゃんが指を弾くと、お酒クサイ長老が召喚されました。

 どうやら晩酌の最中だったみたい。

「おお! 何事!」

「長老さん、長老さんはミコちゃんと長いんですよね?」

「ミコ……卑弥呼さまとは主従の関係」

「関係、長いんですよね」

「はい」

「ミコちゃん、すごい呑兵衛なんですけど……どうして?」

 長老、ミコちゃんに目をやります。

 ミコちゃんは別に、いつも通りですね。

 コクコクと小さく頷く長老。

 コンちゃんも頷きながら、

「わらわの術で長老の頭の中をテレビに出すとしよう」

 ああ、前、わたしやられました。

 七福戦隊(4c)の時ですよ。

 頭の中をテレビに移せる便利(?)な術です。


 あれは卑弥呼さまと私が出会ってすぐの事でした。

 卑弥呼さまは山の頂上に封じられて、いつも退屈そうにしていたのです。

 卑弥呼さまを人柱にした連中は、そんな卑弥呼さまを「神」として埋めました。

 ですから、神さまには貢物をしないといけないわけです。

 卑弥呼さまのところには、日々貢物が届けられました。

 最初は卑弥呼さまも大人しかったのですが……

「よくも私を殺したわねっ!」

 そして卑弥呼さまの人類への復讐が始まったのです。


「ちょ、長老さん……長老さんは私の敵?」

「ひひひ卑弥呼さま、まさかそんな!」

「余計な事は言わなくていいのよ」

 ミコちゃんの頭に「怒りマーク」がピクピクしてるの。

 って、長老の頭に手を置いてテレビに画面を出しているコンちゃんが声を上げました。

「ポン、店長、ミコを押さえるのじゃ!」

「!!」

「ミコの秘密を知りたくないかの!」

 もちろん知りたい!

 わたしと店長さんでミコちゃんを抑え込み。

「ちょっ! ポンちゃん店長さんっ!」

「わたし、ミコちゃんの過去、知りた~い」

「俺も家主として店子の過去は把握しておかないとね」

「二人とも、裏切り者ーっ!」

「わたし、違うもん、興味本位」

「俺は家主の基本って思う」

「わーん!」

 さて、ミコちゃんは封じました。

 長老の話、コンティニューこんてぃにゅー!

「卑弥呼さまは人類への復讐のために立ち上がったのです」

 テレビには……こわいミコちゃんの姿が!

「店長さん、これ、テレビで見た事ありますっ!」

「って、今、テレビに映ってるよね」

「そうじゃなくて、この間アニメでやってました!」

「?」

「も●の●ひめですよ、顔にペイントしてこわーい!」

「ああ、そうだね、似てるね」

 術を使ってるコンちゃんも頷きながら、

「わらわと戦った時もこんな顔をしておった」

 長老もなつかしそうな顔で、

「卑弥呼さまの戦闘モードです」

 わたしと店長さんに抑えられたミコちゃんは滝のような涙で、

「うう……だってだってー!」

「ミコちゃん、こわーい、●の●けひめ、わたし、びっくり」

「ポンちゃん言わないで」

 店長さん、シリアスな顔で、

「ミコちゃん怒らせると……とんでもないなぁ」

「この頃は若かったんですっ!」

 今だって見た目は充分若いですけどね。

 長老、真面目な顔で、

「我々タヌキ一族も、そんな卑弥呼さまの術で人間の姿を得て……」

「ふむふむ」

「人間と戦うべく、訓練されたわけです」

「ああ、長老強いの、そのせいですね」

「ポン太やポン吉を『ニンジャ』として育てたのもその為です」

「物騒な……」

 みんながミコちゃんを見ると、ミコちゃんはただ泣いて、

「だから、若かったんですー!」

 いつものしっかり者の姿もないの。

 長老はわたし達に視線を戻して、

「我々タヌキも人間に狩られてばかりではたまりませんでした」

「はぁ……」

「ですから、卑弥呼さまには協力したかった……んですが……」

「なんです、協力したくなさそうな……」

「あの戦闘力で暴れられては、我々もとばっちりなわけです」

「そ、それもそうですね」

「我々は卑弥呼さまに大人しくなってもらう為にお酒を……」

「そ、それで……」

「最初はすぐに酔っていた卑弥呼さまでしたが……」

 ああ、なんだかもう聞かなくてもいいかも。

 でも、長老、続けるの。

「いつしか、いくら呑んでも酔えない体になり……」

「ねぇ、長老、それってすごく体に悪くない?」

「卑弥呼さまは一度死んでいるわけですし」

「あー……」

「私も卑弥呼さまに付き合って鍛えられましたが、卑弥呼さまにはかないません」

 って、わたし、思いました。

「今は別に人類に復讐とか思ってないんですよね」

 ミコちゃん、もう涙も枯れてぐったりしています。

「もう、そんなのどうでもいいわ」

「じゃあ……お酒、やめたら? どうせ酔えないわけだし」

「!!」

「お酒が好きならやめられないかもしれないけど……」

「そう言われると……」

「なんでお酒、呑んでるの?」

「なんとなく、口元がさみしいのと、昔はこればっかりで」


 そんなわけで、ミコちゃんは「お酒断ち」に成功しました。

 なんとなく呑んでたんですね、こわいですね。

「では、残った酒はわらわが呑むとするかの」

 コンちゃんがしゃしゃり出てきます。

「ダメー」

「何故じゃ、わらわが呑んで何故悪いのじゃ」

「うーん……」

 ミコちゃんはザルなのがダメでした。

 では、コンちゃんは……わたしの直感で、

「酒癖が悪そうだから!」

「うぐ……」

 長老がコンちゃんを見ながらポツリ。

「そば屋で一杯やると愚痴が長いです」

「これ、長老、おぬしはわらわの敵かの、味方かの」

「ツケを払って欲しいです」

「うぐ……」

 わたし、笑いながら、

「ほらほら~酒癖わる~い!」

 コンちゃん、キッとわたしをにらんでから、

「ポンに言われとうないっ!」

 な、なに言ってるんですか!

 わたし、お酒なんか飲まないもんっ!


「ぼくのはあおいろ」

「ワタシのはピンクよ」

「わらわのは白イルカなのじゃ、●カーなのじゃ」

「いるかしょー、たのしみー!」

 みんな、遠足楽しみみたいですよ。


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