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掌編小説集2 (51話~100話)

おかえり。

作者: 蹴沢缶九郎

朝方、俺の寝室に親父がやってきて言った。


「今、お婆ちゃんが入院してる病院から電話があって、お婆ちゃんが意識不明になったって。お母さんと行ってくるから留守番頼む。」


一気に眠気が吹き飛んだ俺を他所に、両親は出掛けていった。俺には出来る事がなく、何気なく自室のテレビを付ける。朝のワイドショーは芸能人の不倫がどうのと、どうでもいい内容の芸能ニュースを伝えている。全く頭に入ってこないテレビ画面をぼーっと眺めながら、俺はふと婆ちゃんの事を思い返していた。


数年前に脳卒中で倒れた婆ちゃんは、長く病院に入院していた。入院生活が長い婆ちゃんは、二年前、親父が退職金で建てた新築のこの家に住んだ事がない。

もし、婆ちゃんが今のこの家に住んでいたらどうだったろう?とか、


昔、まだ小学生だった俺と幼稚園児の弟を一緒に、婆ちゃんが桜を見に連れてってくれたなあ、とか…。


ともかく、その様な事をなんとなく思い返していた。


時計を見ると、いつの間にか昼近い時間になっていたので、正直あまりお腹は空いてなかったが、少し早めの昼食を食べる事にした。


リビングで独りレトルトカレーを食べていると、バタンと玄関のドアが開く音がした。両親が帰ってきたのかと玄関に行ったが、そこには誰もいなかった。


気のせいだったかとリビングに戻ろうとしたその時、スマホに親父から着信があった。出ると、親父が言った。


「お婆ちゃんが亡くなった…」


親父との通話を終え、俺は思った。


さっき、俺は気のせいと感じたが、それは間違いで、この家の住人はちゃんと帰ってきていたのだ。


そして、俺は言った。


「おかえり。」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 書きたいことがしっかりと簡潔に書かれているので、いいと思います。 [気になる点] 中段、「もし婆ちゃんが…」のあたりの改行に違和感を感じました。
2016/02/01 19:27 退会済み
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